今の状況は人類が試されているので、今一度、肝に銘じておこうかと再読した。

『山中:人間は、特定の状況に置かれると、感覚が麻痺して、通常では考えられないようなひどい行動におよぶ場合があるからです。そのことを示したのが、アイヒマン実験です。浅井:有名な心理学実験ですね。アイヒマン(アドルフ・アイヒマン)はナチス将校で、第二次大戦中、強制収容所におけるユダヤ人大量虐殺の責任者でした。戦後、死刑に処されました。彼は裁判で自分は命令に従ったにすぎないと発言しました。残虐というよりは、内気で、仕事熱心な人物に見えたとも言われています。山中:そんな人物がどうして残虐になり得るのか。それを検証したのが、イェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラムが行ったアイヒマン実験です。この実験の被験者は教師役と生徒役に分かれ、教師役が生徒役に問題を出します。もし生徒役が問題を間違えると、教師役は実験者から生徒役に電気ショックを与えるように指示されます。しかも間違えるたびに電圧を上げなければなりません。教師役が電気ショックを与えつづけると生徒役は苦しむ様子を見せます。ところが実際には生徒役はサクラで、電気など通じていない。生徒役の苦しむ姿は嘘ですが、叫び声を上げたり、身をよじったり、最後には失神までする迫真の演技なので、教師役は騙されて、生徒役が本当に苦しんでいると信じていました。それでも、教師役を務めた被験者の半分以上が、生徒役が失神するまで電気ショックを与えた。教師役の被験者がひとりで電気ショックのボタンを押すのなら、そこまで強いショックを与えられなかったでしょう。ところが、白衣を着て、いかにも権威のありそうな監督役の実験者から「続行してください」とか「あなたに責任はない」と堂々と言われ、教師役はボタンを押すのをためらいながらも、どんどんエスカレートして、実験を継続したんです。浅井:ショッキングな実験結果ですね。権威のある人のもとで、人間は際限なく残酷になってしまう。山中:研究にも似ている側面があるのではないか。ひとりで研究しているだけなら、生命に対する恐れを感じて、慎重に研究する。そういう感覚はどの研究者にもあると思います。ところがチームになって、責任が分散されると、慎重な姿勢は弱まって、大胆になってしまう。たとえルールがあっても、そのルールを拡大解釈してしまう。気がついたらとんでもないことをしていたというのは、実際、科学の歴史だけでなく、人類の歴史上、何度も起きたし、これからも起こりえます。科学を正しく使えば、すばらしい結果をもたらします。しかし今、科学の力が強すぎるように思います。現在ではチームを組んで研究するのが一般的です。そのため責任が分散され、倫理観が弱まって、危険な領域へ侵入する誘惑に歯止めが利きにくくなっているのではないかと心配しています。』

以前にもこの記事に関して引用したかも知れないが『権威』と『科学の力が強すぎる』と『チームになって、責任が分散される』が組み合わさると暴挙も暴挙で無くなってしまい残酷さが一層マシます。今の状況は人類が試されているので、今一度、肝に銘じておこうかと再読した。

2019.10.05
山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」
生命科学の危険性とは何か?
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67554

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