「これは身体にいい」「あれは健康に悪い」(ワイン編)

「これは身体にいい」
「あれは健康に悪い」

最近、こういった話が巷にあふれています。
実際、どの程度本当なのでしょうか?

結論から言えば、玉石混在。
嘘とまでは言わないが、そこまで効果や影響が出るほどは食べない、量を無視した話や根拠のない話が多いと言ってよいでしょう。

例えば、「健康によい」とされる赤ワインに含まれるレスベラトロールは、新血管関連疾患の予防効果が期待され、寿命延長作用により長寿に効くとされています。文献を見ると、レスベラトロール2.5 gを28日間毎日摂取すると有意に効果が認められたとあります。250 mg程度でも効果があるという報告もあります。

しかし、実際に赤ワインに含まれるレスベラトロールは1リットルあたり、0.2〜5.8 mgです。つまり、毎日100本程度飲まないと有意な効果は得られません。1日でワインを100本も飲めば、レスベラトロールによる長寿の効果が得られる前に、急性アルコール中毒で死んでしまうでしょう。

「身体に悪い」「癌になる」といった話も同様です。

同じワインの例でいうと、「ワインに酸化防止剤として使用されている亜硫酸ナトリウムは身体に悪い」といった言説をよく見かけます。
では、実際にワインに含まれている亜硫酸ナトリウムの量はどのくらいでしょうか?

調べてみると、EUでの亜硫酸ナトリウムの規制量は、ワイン1リットルあたり、赤ワインなら160 mg、白ワインなら300 mg、貴腐ワインなら400 mgです。実際に日本で流通しているワインには、数10〜200 mg/L程度の亜硫酸ナトリウムが含まれているようです(*下記)。

そして、亜硫酸ナトリウムの急性毒性を調べてみると、経口LD50 = 3560 mg/kg(ラット)、820〜920 mg/kg(マウス)です。つまり、人の体重をおよそ50 kgとして換算すると、40,000 mg (= 40 g)以上摂取しないと有意に「急性毒性はあらわれない」ということになります。この亜硫酸ナトリウムの量はワイン100本分以上に相当します。亜硫酸ナトリウムによる健康被害を気にするくらいなら、ワインに含まれるアルコールによる健康被害を気にしましょう。

*国税庁 平成22年度全国市販酒類調査の結果より
http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/seibun/2010/01.htm
国産の果実酒の亜硫酸塩・区分ごとの平均値(ミリグラム/キログラム)
赤ワイン:59 白ワイン:102 ロゼワイン:193 その他:66

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