オリジナリティ

牧場で牛を見かけたら「お前は美味しいよ」と言うことにしている。だってかわいそうじゃないですか。ステーキとして食べられたあと「美味しい」って言われたら死後評価されてる芸術家みたいじゃないですか。でもね、僕、いじわるなんで、その牛にゴッホと名付けることにしたんです。「ゴッホ、乳を出してごらんなさい、乳を出して絵を書くのよ」。白いキャンバスをゴッホの下に置き、乳搾りをしました。するとキャンバスの上に思いっきり牛乳が飛び散り、白の上に白が重なった。芸術だと思った。翌日オークションに出品することにした。しかし、オーナーはこう言う。「白に白を重ねるなんてこんなものすでにやり尽くされているんだよ、本物を持ってこい」。本物ってなんですか?じゃあ、あなたたちは酸素のクローンを吸ってないと言いきれますか?あなたたちが肺にいれているのは本物の酸素ですか?オリジナルを見せてあげますよ。白いキャンバスをバッと出した。「これがオリジナルの酸素です」。オークション会場を出禁になった。夜空で流れ星が暴れていた。俺は星に願う、この絵を誰か評価してくれと。しかし同時にこう思った。あの願いを込めた流れ星はどんな願いを持っているのかと。流れ星からみたら、流れているのは俺たちの方だ。だけど俺たちの中で流れ星の願いを一度でも聴こうとしたやつはいたか?流れ星の願いは誰にも届かないんだ、この広い宇宙の誰ひとりにも。悲しくなって涙を落とした。あのキャンバスに雫が落ちた。その時俺は、ゴッホと1つになれた気がする。そして、このキャンバスこそが俺のオリジナリティだったんだ。

小さい頃からお金をもらうことが好きでした