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心の扉

「怖いよう」
「寂しいよう」
「助けてよう」
「かまってよう」
「愛してよう」

欲しいと願えば願うほど
膨らむ期待

期待が膨らめば膨らむほど
手に入らなかった時の悲しみは
大きい。

もう悲しみたくないんだ
怖いんだ。

膨らむ期待を箱に押し込めて
鍵をかける

箱の蓋を突き破って出てくるもんだから
蓋の重さを重ねる

何重にも何重にも。
蓋を重ねるうちに
大きな重い蓋を重ねるうちに

箱の蓋の上に立てるようになったんだ
まるで蓋の上が地面のように
蓋であることを忘れたように
蓋の下には心の叫びを閉じ込めたことを
記憶から消し去るように


だけど心の叫びは諦めてくれない

時折でっかい蓋は小さく揺れる
その上に立つわたしは揺れを感じる

眩しい光を見たとき
でっかい蓋は大きく揺れる
その上に立つわたしは立っていられなくなり
しゃがむ


お願いだから、静まってくれ
思い出さないでくれ
元通り、わたしを立たせてくれ

立てない苦しみは揺れ続ける蓋の上で
続く


そのとき見えたんだ
光の方向から一緒に蓋を開けられる
大きな手を

わたし一人では立てないけれど
大きな手がわたしの背中を支えた

大きな手に体を委ねながら
わたしは大きい重い蓋をゆっくり外した

たくさん泣いた
悲しかった
怖かった
大好きだった
かまってほしかった

小さなわたしが泣いている

大きな悲しみをみた
大きな手はただそこにいた

わたしは小さなわたしに
そっと語りかけた

あなたは光で満ち溢れるんだよ
あなたは前を向いてどこまでも歩いていけるんだよ
一生懸命生きてくれてありがとう
わたしはわたしが大好きだよ

小さなわたしがちょっとずつ顔を上げた
小さなわたしが涙を拭いた
小さなわたしはニカッと笑って言ったんだ

わたしもわたしが好きだよ、と


そのとき蓋はスウっと消えてなくなった
わたしは蓋の上から地面へ降り立った

なんて広いんだろう。
なんて深いんだろう。

蓋の上からは見えなかった景色、感触

悲しい記憶も嬉しい記憶も
わたしの大切なものがたり

大切な思い出を胸にしまって
歩いていこう、どこまでも


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