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ITC American Typewriterという書体

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


American Typewriter(アメリカン・タイプライター)という書体

KがAmerican Typewriter
Source: www.kurzfilmtage.ch License: All Rights Reserved. via fontsinuse.com

タイプライターっぽい文字としてあらゆる場面に登場するのが、このAmerican Typewriterという書体です。この書体はどんな書体で、どこで使われているのかを今回はご紹介します。

ITCアメリカン・タイプライター・フォントの見本
By &lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/File:American_Typewriter_spec.JPG&quot; title=&quot;File:American Typewriter spec.JPG&quot;&gt;American_Typewriter_spec.JPG&lt;/a&gt;: &lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/User_talk:Dam%C3%ABrung&quot; title=&quot;User talk:Damërung&quot;&gt;☩&lt;/a&gt;&lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/User:Dam%C3%ABrung&quot; title=&quot;User:Damërung&quot;&gt;Damërung&lt;/a&gt; &lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/Special:Contributions/Dam%C3%ABrung&quot; title=&quot;Special:Contributions/Damërung&quot;&gt;☩&lt;/a&gt;&lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/User:Dam%C3%ABrung/Gallery&quot; title=&quot;User:Damërung/Gallery&quot;&gt;.&lt;/a&gt; -- 16:45, 29 September 2009 (UTC)derivative work: &lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/User:Cosmocatalano&quot; title=&quot;User:Cosmocatalano&quot;&gt;Cosmocatalano&lt;/a&gt; (&lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/User_talk:Cosmocatalano&quot; title=&quot;User talk:Cosmocatalano&quot;&gt;&lt;span class=&quot;signature-talk&quot;&gt;talk&lt;/span&gt;&lt;/a&gt;) - &lt;a href=&quot;//commons.wikimedia.org/wiki/File:American_Typewriter_spec.JPG&quot; title=&quot;File:American Typewriter spec.JPG&quot;&gt;American_Typewriter_spec.JPG&lt;/a&gt;, <a href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0" title="Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0">CC BY-SA 3.0</a>, <a href="https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9428650">Link</a>

書体名:American Typewriter(アメリカン タイプライター)
カテゴリ:セリフ体
分類:スラブセリフ
デザイナー:
Joel Kaden, Tony Stan
ファウンダリー: ITC, published by: Adobe, Apple and Linotype
リリース年:1974年

American Typewriterは、1974年にInternational Typeface CorporationのためにJoel KadenTony Stanによって作られたスラブセリフ書体です。

タイプライターのスラブセリフスタイルに基づいているのですが、実際ののタイプライターフォントとは異なり、プロポーショナルデザインです。

American Typewriterは、古風なイメージや工業的なイメージを連想させるためによく使われます(映画にも頻繁に出てきます)。


当初はコールドタイプ(写真植字)でリリースされ、その後デジタルでリリースされました。多くのITCフォントと同様、ライトからボールドまで4種類のウェイトがあり(イタリック体もある)、コンデンス体もあります。


書体“American Typewriter”の使用例

もっとも有名な使用例は “I love New York”のデザイン
image resource: Source: www.moma.org © 2021 NYS Dept. of Economic Development. License: All Rights Reserved. via Fonts in Use



Patti Smith – “Pissing In A River” German single cover
Image source:  noisey.vice.com via fonts in use
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Pink Floyd – The Final Cut album art
Image source:  www.pinkfloyd.com via Fonts in Use
License: All Rights Reserved.
The Office (US) logo
Image source: thetvdb.com via Fonts in Use
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ITC: International Typeface Corporation

インターナショナル・タイプフェイス・コーポレーション(ITC)は1970年、アーロン・バーンズ、ハーブ・ルバリン、エドワード・ロンドラー(Aaron Burns, Herb Lubalin and Edward Rondthaler)によってニューヨークに設立された活字製造会社。

同社は金属活字製造の歴史を持たない世界初の活字鋳造所のひとつです。現在はMonotype Imaging社の完全所有ブランドまたは子会社です。

沿革

同社はフィルムセットおよびコンピューターセット用の書体のデザイン、ライセンス供与、国際的な販売を目的として設立されました。

同社は新しいデザインと古い書体や古典的な書体のリバイバルの両方を発行し、写植や後のデジタル使用に適した形にカットし直し、さまざまなウェイトのファミリーを生産しました。

デザイナーたちはオリジナルの書体のスタイルと特徴を維持するよう配慮したと主張しているも、特にITC BookmanITC Garamondなど、いくつかのITCのリバイバルは、最終的な結果がオリジナルの書体と名前だけが関連しているという批判を受けているようです。同社の著名なタイプデザイナーの中には、TiffanyBenguiatフォントの作者であるエド・ベングイアット(Ephram Edward Benguiat)がいました。

ITCの書体一覧

  1. ITC American Typewriter

  2. ITC Anna

  3. ITC Arecibo

  4. ITC Arid

  5. ITC Atelier Sans

  6. ITC Avant Garde Gothic

  7. Avenida

  8. ITC Ballerino

  9. ITC Barcelona

  10. ITC Batak

  11. ITC Bauhaus

  12. ITC Beesknees

  13. ITC Benguiat and Benguiat Gothic

  14. ITC Berranger Hand

  15. ITC Better

  16. ITC Binary

  17. ITC Blair

  18. ITC Blackadder

  19. ITC Black Tulip

  20. ITC Blaze

  21. ITC Bodoni

  22. ITC Bolt

  23. ITC Bookman

  24. ITC Bradley Hand

  25. ITC Braganza

  26. ITC Busorama

  27. ITC Caslon

  28. ITC Century type family

  29. ITC Cerigo

  30. ITC Charter

  31. ITC Cheltenham

  32. ITC Chivalry

  33. ITC Conduit

  34. ITC Cushing

  35. ITC Dartangnon

  36. Data 70

  37. ITC Django

  38. ITC Edwardian Script

  39. ITC Elan

  40. ITC Ellipse

  41. ITC Eras

  42. Eras Demi ITC

  43. ITC Esprit

  44. ITC Fenice

  45. ITC Flora

  46. ITC Fontoon

  47. ITC Forkbeard

  48. ITC Franklin Gothic

  49. ITC Freestyle Script

  50. ITC Friz Quadrata

  51. ITC Garamond

  52. ITC Gamma

  53. Gigi

  54. ITC Giovanni

  55. ITC Golden Cockerel

  56. ITC Golden Type

  57. ITC Goudy Sans

  58. ITC Grimshaw Hand

  59. ITC Handel Gothic

  60. ITC Highlander

  61. ITC Humana Sans

  62. ITC Isadora

  63. ITC Jamille

  64. ITC Jokerman Hellenic

  65. ITC Johnston

  66. ITC Juanita

  67. ITC Juice

  68. ITC Kabel

  69. ITC Kahana

  70. ITC Keefbats

  71. ITC Kendo

  72. ITC Klepto

  73. ITC Kloegirl

  74. ITC Korigan

  75. ITC Korinna

  76. ITC Kristen

  77. ITC Leawood

  78. ITC Legacy Sans and Serif

  79. ITC Lubalin Graph

  80. ITC Luna

  81. ITC Machine

  82. ITC Matisse

  83. ITC Mendoza Roman

  84. ITC Migration Sans

  85. ITC Mixage

  86. ITC Modern No. 216

  87. ITC Mona Lisa

  88. ITC Motter Corpus

  89. ITC Musclehead

  90. Neue Aachen

  91. ITC New Baskerville

  92. ITC Newtext

  93. ITC New Winchester

  94. ITC Novarese

  95. ITC Obelisk

  96. ITC Obliqua

  97. ITC Officina Sans and Serif

  98. ITC Ozwald

  99. ITC Panache

  100. Papyrus

  101. ITC Pioneer

  102. ITC Pious Henry

  103. ITC Plaza

  104. ITC Portago

  105. ITC Posterboy

  106. ITC Quay Sans

  107. ITC Quorum

  108. Rage

  109. ITC Redonda

  110. ITC Ronda

  111. ITC Serif Gothic

  112. ITC Slimbach

  113. ITC Souvenir

  114. ITC Snap

  115. ITC Stenberg

  116. ITC Stone Sans

  117. ITC Stone Informal

  118. ITC Stylus

  119. ITC Styleboy

  120. ITC Symbol

  121. ITC Tabula

  122. ITC Tetra

  123. ITC Tiepolo

  124. ITC Tiffany

  125. ITC Tempus Sans

  126. ITC University of California Old Style

  127. ITC Usherwood

  128. ITC Veljovic

  129. ITC Vineyard

  130. ITC Vintage

  131. ITC Weber Hand

  132. ITC Weidemann

  133. ITC William Hamilton Page

  134. ITC Willow

  135. ITC Zapf Chancery

  136. ITC Zapf Dingbats

  137. ITC Zemke Hand


プロポーショナルデザイン

プロポーショナル(Proportional)とは「釣り合った」という意味の英語で、「プロポーショナルデザイン」とは、書体全般につかわれる「プロポーショナルフォント」と同じ意味となり、これは

文字ごとの文字幅を個別に設定してあるフォント

を意味しています。一方で文字幅がすべて一緒であるフォントはモノスペースドフォント(Monospaced font)といいます。日本語では「等幅フォント」とも言います。

モノスペースド、等幅フォントのわかりやすい例はタイプライターです。タイプライターは等幅フォントしか使えませんでした。よってタイプライター的な書体であるCourierという書体は等幅フォントです。

Courier
Inductiveload - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8353679による

American Typewriterは、タイプライターっぽい書体にもかかわらずプロポーショナルフォントで文字幅が文字によって異なっています。プロポーショナルであるほうが自然に文字を認識し、読みやすくなります。

(上段)プロポーショナル (下段)モノスペース/等幅
BANZ111 - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2945332による


↓Myfontsで販売されているプロポーショナルフォント一覧


写真植字

写研の写植文字盤(サブプレート)
FeZn - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=109780614による

写真植字(しゃしんしょくじ)、略称は写植(しゃしょく)。英語は phototypesetting, photocomposition。

写真植字機を用いて文字などを印画紙やフィルムに印字して、写真製版用の版下などを作ること。また長らくテレビ放送用のテロップ用の版下としても使われました。

多くのサイズの活字が必要な活版印刷に対し、写真植字はレンズとの距離で大きさを変えられるため、では1個の文字ネガで済みます。オフセット印刷の普及とともに、写真植字も急速に需要を拡大しました。

文字のネガをレンズで拡大または変形して印画紙に焼き付けるので、独特の柔らか味がある事が写真植字のメリットの一つです。DTPが普及した昨今でも、タイトル文字などに限って写真植字を指定して使うケースが見られます。

また、写真植字の歴史は、株式会社写研の歴史そのものとも言えます。

文字の大きさの単位をQ(または級)、文字の送り量の単位をH(または歯)とする。いずれも0.25mmを1とします。すなわち24Qといえば6mmの大きさの文字を意味しています。


タイプライターの文字配列について

ジャレド・ダイアモンドの著書『銃・病原菌・鉄』(下)(1997)の中でこんな実話が紹介されています。

「世界はいまだにキー配列を効率化したタイプライターを受け入れていない」

現代のキーボードはQWERTY配列と名付けられた配列でタイプライター時代のものがほぼそのままの配列になっているものです。これは1873年に開発された「非工学的的設計」の結晶です。この配列は、工夫を施して、タイプするスピードが「上げられない」ようにできています。なぜ非効率な配列に設計されているのかというと当時のタイプライターは隣接したキーを続けざまにタイプするとキーが絡まってしまうという欠陥があったたためでした。この故障をさけるために隣接したキーを続けざまにタイプしないように設計したのがQWERTY配列です。

しかし1932年にはタイプライターの技術的な問題は解決し、効率的な配列が開発され、試用者によって、速度は2倍、使いやすさも95%(!)も向上することがわかりました。しかしQWERTY配列は60年の間にすっかり定着してしまって、新しい効率的な配列を普及させようという試みは、タイピスト、タイプ教師、製造業者たちによって粉砕されてしまいました。

この著書では、このように技術的に後退にみえるような行動を社会的な理由で取ってしまうことがよくあることを紹介しています。タイプライター以外にもイギリスは効率的な電灯が発明されてもなおガス灯設備に投資したために電灯会社の進出を妨害し続けたなどの例を上げています。日本のUBERの普及を止めているのもこれに近いでしょう。


まとめ

同じタイプライター系の書体Courierより、精度が高く、プロポーショナルで使いやすい。


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参照

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