見出し画像

【桐生夏の旅2023】vol.2ー桐生八木節1日目の終わらぬ長い夜

序章


さて今回は前回の続きである。
果たして何部作になるのかは鹿田の気分次第である。
てなわけで皆様今日もお付き合いよろしゅう。

桐生八木節参加初日、その後周辺をぶらりと見て回った後に、では家に帰ろうということになった。(所長の自宅)鹿田としょまちゃんは後ろ髪惹かれつつ祭りの地を後とする少し寂しい祭りの終わりであったが、しかし2次会があるというのならば、鹿田は話は別なのである。



眠る踊り子


精一杯踊ったしょまちゃんは既に体力の残値0で、「おんぶ」と特権を乱用し、その上で「こうたい、こうたいじゅんばん、じゅんばん(※であった)」という言葉を覚え、大人皆で祭りの神童を抱え歩くことを許して遣わした。ま、後半は鹿田の妄想であるが前半はほぼ同等のことを言い放ち、まさに大人顔負けである。

大人の背中に力をゆだね、解放したしょまちゃんはさぞ重かろう。そっと隣から覗いてみると祭りの神は不敵な笑みで(にや)と笑った。ま、鹿田はそのおんぶレースからまんまと降りたのが。

2次会ビール祭り

始めのころは鉛のようになった我が両足に「ほら、ビールだ、ゴールはビールだ」と声掛けむち打ち、テンポ乱さずあるいた鹿田だったが、はじめのうちとは当然数メートルのことで、それ以降は「遠い、くそ、ビールめ、暑すぎるからつかれる、くそ、ビール」と文句を振り回してはその反動でどうにか歩いた。

漸く所長宅の最後の階段を登り切り、玄関のドアを開け放した時のエアコンの心地よさを、鹿田は一生忘れまい。そして

「もどりまし、た!
・の「た!」の時点で所長の母上からビールを受け取り
・その後コンマ0.000000000001秒で、プルタブをプスッ!と開け放ち
・もうコンマ0.000000000001秒でビールをゴブリ!と喉に流し込み
・その後のコンマ0.000000000001秒で鹿田は「うめぇぇぇぇぇ」と叫ぶと予 
 知能力が発言し、我が両眼は未来のペルセウス座流星群を視認した。

流星群を見つめ胃の奥底から吐く炭酸の混じった溜息は格別であった。重みをもち、とろりと口より流下していくのがわかった。そして桐生の夜もまた深く、濃く、とろとろまったりと濃密に更けていったのである。

宴会が始まって間もなく、鹿田はどれだけこの日を待ち望んでいたかを、その場に集まる皆に高らかに演説した。どれだけ、どれだけの日々を耐え忍び、やっと桐生八木節に辿りつけたかを。
時にビールは塩気を帯び、きゅうりの漬物に塩分を足し、そでで鼻水をひいてはとくと語ったが、だれか聞いていたかは定かではない。

なぜならばそこには星野アイごとく、アイドルしょまちゃんがいたからである!

しょまちゃんはなにかと反発し、第1期反抗期よろしく「いやだ!」とか言ったりする癖に、静かにおいでおいでをすると素直に近づいてくる。なのでここにどうぞと胡坐の膝をポンポンと叩いてみせると、するととちゃっかり座っちゃったりするのだ。

鹿田がふたたびしめしめと、悪い笑みを上部よりかざしているとはつゆ知らず、のんきにおもちゃで遊ぶのを促してくる。まあ、こんだけかわいいなら桐生八木節にも負けじと劣らず押せるものがあるなぁと、結果勝手に鹿田はしょまくんを夏の風物詩に格付けした。

さらに夜は更ける

さらに夜は更け、鹿田は帰りたくなかった。鹿田が『冬』に拮抗しこの世で一番嫌いな言葉は『祭りのあと』である。だからいつまでも祭りの渦中にいたかったのだが、明日もあることだし、と仕方なしに深夜所長の妹に送ってもらい予約していたホテルに帰った。それによく考えたらまだ祭りは始まったばかりだったし。

さて、桐生より少し離れた地にあるこのホテル。
泊まるのは鹿田とメガネさんである。


毎年我々二人は桐生駅近辺のホテルを取り、そしてまた翌日所長の家に歩いて出向くということをしていた。しかし今年はいけるかいけぬかが直前までさだまらず、予約を取るのが遅くなってしまったのである。

そのためやむを得ずいつもより遠い、市外の宿泊施設を利用することになった。


そのホテルの名を”R-9”といい、全国展開しているのようなので知っている人は知っているのだろうが、初見の我々は車からおいた瞬間の景色に衝撃を受けた!

なぜなら我々が今夜泊まるはずホテルが、コンテナというコンテナに埋め尽くされていたからである
あの、貨物列車が引き連れるあれ、である。写真はないのだが、以下にサイトを貼るので興味のある方はみてみてほしい。とにかく規則正しくならぶコンテナのにはひとつ残らず階段が付着しており、その横たわった四角柱の正方形の入り口には扉が付着していた。

R-9のHP

内装は撮った。


とにかくお疲れお疲れと荷物を置き、ひといき吐いて我々は見つめあった。勿論旅の1泊目である。深夜にホテルにつこうがそれで終わるはずもなく、我々は「よし、いこう」と主語を飛ばしても伝わる合言葉を発したと同時に立ち上がり、怪しきコンテナから一時退席した。

その後我々は寝静まった夜中の国道沿いを当てもなくあやしく、その界隈を徘徊した。してR-9を出てすぐ、桜色に光る電光掲示板を発見したのであう
る!

発見したといいつつ、我々は桐生に来る際、別店舗のそれをみつけて興味を抱いた。それは”さくらみくら”という電光の看板である。

我々知るところのセブンイレブン、やファミマローソンなどの文字が並ぶはずの場所に”さくらみくら♪”となんとも陽気に優しい文字が変わって並んでいた。興味を持たぬはずがない。すでに我々は大酔っ払いである!

それは我々の住処福島県ではみたことのないコンビニで、さぞ面白いものが売っているに違いないと、鹿田とメガネさんはそわそわとまるで路頭に迷う蛾のように千鳥足で、にたにたと笑いながら怪しく光る桜色の看板を目指した。

中に入れば全国的なコンビニにはないような、店舗独自の商品が並んでいて、我々はこれはいい収穫をしたと適当に好きなつまみと酒を選んでは買い、帰路についた。

ま、ホテルに帰っていざ袋を開けてみれば、どこのコンビニでも買えるような缶ビールに缶ハイボール、そしてつまみの数点がごぞごそと出てきただけであった。それとお土産にもらったベビーカステラをつまみに、我々の夜は更に更けた。

して翌日。
重みの増した頭を抱え、我々は炎天下の朝、訪れる迎えの車を待った。

2日目

迎えに来てもらい、再び桐生の所長の実家に戻る。玄関を開け放ち「おはようございます、今日もお世話になります!」と声をかけたならすでに朝食の良いにおいが部屋中に充満している。

すでにおはようございますと言ったか、いただきますと言いたか定かでないような際立つ空腹に再び足もとふらつかせ着座すれば、朝は特大おにぎりに、各種多様なおかず、それから格別においしいみそ汁に出迎えられた。僕は所長の実家の味噌汁がたまらなく好きである。

この日は鮎のつかみ取りに行く予定になっていた。朝食をいただきながらもすでに想像して腹が減るという永久機関になりかけたころ、昨晩暴走機関車のように妙にハイになっていたしょまくんが起きてきた。やはり少し眠そうである。

なので魚のつかみ取り大丈夫かなと鹿田は思ったが、全くの杞憂だった。

てなわけで!次回、魚つかみ取り編!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?