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自信ってどうやってつけるの?

”先生、授業に関係ないんだけど質問があります”

周りの生徒が作文のアウトラインを書くのに忙しくしている時に、そっと手を挙げた女の子が訊いた。(*アメリカの私立校で教師をしています)

”どうやったら自分に自信がつくんですか?”

まだ8年生、韓国からアメリカに来たばかりのの彼女は小さい体に大きなバックパックを背負い、私が放課後に教室を開放しているエクストラヘルプにやってくる。
英会話は上手に出来ているし意思の疎通ももちろん出来るが、授業で使うスライドや映像や小説となると難しい。アカデミックイングリッシュという学校で使う英語は英会話で習うようなものではないので、こればかりは授業を受けながらコツコツと積み上げて自分のスキルにするしかない。
このコツコツが出来ない生徒はそのまま落ちこぼれたり、合格点にたどり着かなかったり、授業中の行動に問題が出たりして(手っ取り早く点数を取るためにカンニングしたり)一年が終わるといなくなってしまうケースもある。

この彼女はあまりコツコツが出来ないようだ。
エクストラヘルプに来るのだから何か質問があるならば答えるし、上手く出来ない宿題も手伝う。上級生がたくさん来ているので彼らの誰かが小さい彼女をサポートすることだってあるだろう。

だけど彼女はいつもキョロキョロしていて誰かの話に首を突っ込んだり、”あの人が宿題せずにYoutubeを見ています!”とか告げ口(笑)したりして、なかなか自分の宿題に集中できない。
勉強が進まぬまま、口を挟んだ会話にも入れてもらえないし、上級生のお姉さんたちは彼女に話しかけることもない。
8年生の教室では友達の輪に入ってはいるが”入れてもらっている”という様子がこちらにも伝わってくる。

”先生はいつも堂々としていて、みんなが話しかけて来て、いつも一緒に笑ってて、楽しいでしょう?自信があるんでしょう?どうやったらそうなれるの?”

そんな彼女の真剣な目を見ながら私は自分でもなぜだろうか、と思っていた。
私は自信に満ちているのだろうか・・・そうでもない気がするがそう見えていてもおかしくないほどに態度は大きい。が、これまでいつもそうだったわけではないし、何か決定的なことが変化をもたらしたようでもない。
彼女の4倍くらい生きているが、これまで”自分に自信があるか”を考えたこともない気がする。

いざ改めて考えるとコレといったアドバイスが思い浮かばない。
彼女は子鹿のような目で私の答えを待つ間、私の顔を凝視している。

”自分を好きになることかな、誰かと比べたり、競争したり、同じようになりたいと思ったり、自分がダメだと思ったり、そんなことはもうないから・・・自分が好きだって気持ちが自信に変わったのかもしれないね”

彼女はその答えにちょっと不満そうだった。
ひょっとしたら自分を変えてみよう、と思っての一世一代の質問だったのかもしれない。
自分が好きだという感情自体がわからなかったのかもしれない。
まだ小さいのだ、彼女は小さいのに自分について自信について悩んでいる。

”OK” と彼女は薄っぺらく笑ったが、私の心の中はあまりOKではなかった。

彼女の大きな転機になるようなことがアドバイスできたかもしれない。
これなら自分にも出来るかも、と思える一歩を与えられたかもしれない。
もう自分には自信はあるんだ、と感じる言葉をかけられたのかもしれない。


もう何時間も悩んでいる。

どうやったら自分に自信がつくのだろうか・・・・ちゃんと答えられる自信がないのに気づいて自分はまだまだだ、とちょっと自信を失っている。

シマフィー

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