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叩く理由

私の両親はしつけをする時に叩いたりつねったりする事はなかった。その当時にすれば珍しい事だったのかもしれない。父ちゃんのゲンコツが飛んでくるとか、お母さんに頭をポカンとやられる、とかはよく聞く話だった。

小さい頃から私は割と良い子だったし、年の離れた弟もやんちゃだったけれど、悪い事はしなかった。母に話しを聞いても “シマも弟も2、3歳の頃にレストランに連れて行っても立ち上がったり騒いだりせず、お利口に座っていた”と言う。
そんな良い子だった私は、多分悪い事をして叩かれたのは一度だけで(その話はここで)、それ以降は人の道に外れた悪い事もせず、両親に体罰をされたことはなかった。

ただ学校ではよく叩かれたように思う。親以外の大人に叩かれていた。

親は知らなかったけど、私はよく“悪い事”をしては大声で怒鳴られて叩かれていた。
とくに小5と小6の担任は酷かった。どちらも若い男性教師で体罰以外の方法を知らなかったのかもしれない。高学年ともなると口は達者で頭も良いし、反抗的な態度をとる事もある。そんなこまっしゃくれた子供が憎たらしかったのかもしれない。
昭和の田舎の話しで、現代にはもうこんな先生はいないと思うけれど、先生たちはこんな理由で叩いていた。

あいさつの声が小さい
教科書を出すのが遅い
何かを忘れた
給食を食べるのが遅い
仮病を使って授業を休んだ
居眠りをしていた
授業を聞いていなかった
テストの点が悪かった
音読の声が小さい
口答えをした

あまり思い出したくもないこんな事をリストにするのは初めてだけど・・・なんだ、こりゃ。これが彼らにとっては生徒を叩くほどの ”悪い事” だったとは。
教師が生徒を叩いて良い理由はいつの時代も一つもないけど、それにしてもひどい理由ばかりだ。

いつから体罰は許されない、という日本になったのかはわからないけれど、中学でも高校でも、平成に変わる時まで私は叩かれていた。何か失敗をしたとか、態度が悪い、テストの成績が悪い、そんな理由で叩かれた。

その時代に私たち生徒を叩いていた先生たちは今、何やってるんだろうか、どう思ってるんだろうか、後悔しているのか、胸が苦しくなるのか、夢に出るのか。

どうなんだろう?私のような生徒が思い出すほど、彼らは生徒のことを思い出したりしないのかな。しないんだろう。5年の時の担任が、過去の体罰を理由に教職を去ったと言う話も聞かないし、高校の数学教師だった人が過去の体罰の罪の意識に苛まれ自殺したと言う話もない。

あの先生たちはサイコパスだったのかもしれない。人の気持ちがわからない、過大な自尊心があるばかりで良心も罪悪感もなく、表面的には人格者でも、傷つく人を見ても何とも思わない。そんなサイコパスだった。じゃないとちょっと辻褄が合わない。先生にくだらない理由で何度も叩かれた、よりもサイコパスに無差別に攻撃された、の方がまだ納得できる。

私は不運だったのだ。この世の中に良い先生はたくさんいたのに、当たったのはサイコパスばかりだった。

それが、かつての私のような可愛くない生徒も、めちゃめちゃ可愛くてしかたない教師の私が出した結論です。

シマフィー



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