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こんにちは、あおむしくん

人気のイタリア料理のお店に来ていた。そんなに広くはない店内だったから、お昼時には、いつも満席だった。

ここのお店のオリジナルドレッシングが好きで、よく買って帰っていた。トロッと濃厚な薄茶色、アンチョビ、ニンニクや玉ねぎのすりおろし、オリーブオイル、白ワインビネガーなんかが入っていて、ほんのり醤油の風味も感じるような、酸味と塩味、旨味や甘味のバランスが好み。レタスやルッコラなど少し苦味のある葉物野菜によく合っていて、とても美味しかった。

ランチメニューは、メインにパスタ、肉、魚が選べて、サラダとスープと飲み物が付いていた。サラダには、お気に入りのドレッシングがかかっているから、いつも楽しみだった。

サラダを食べようとした時、

重なったレタスの中に、見つけてしまった。

こちらを、伺っている気がする。

ゾッとして、ぞわぞわして、気分は良くない。しかし、そんなに怒りは感じなかった。

「野菜が新鮮って事かな?」と。

レタスの間に、あおむしくんが一匹いた。

もぞもぞと。

多分、本当ならば、失神するか、怒り散らすか、だと思う。

しかし、私は内向的な性格で、注文時ですら、中々、店員さんに声をかけられない。そして、身内以外には、めったに怒らないし、怒れない。

この時、夫も一緒だったが、夫も、あまり強く言わない人だった。

お店の味は大好きで、テーブルの席は、全て埋まっていた。隣の席と肘がぶつかるくらい、狭い店内で、お店の信用を落とすような、苦情を言いたくなかったのだ。こっそりと「あおむしくん、ここに居ますよ?」と店員さんに伝えたかったが、混雑した店内では、こっそりとは伝えられなさそうだった。

本当は、メモなど残したかったが、生憎、筆記用具を持っていなかった。結局、私は、何も言わずにお店を後にした。

美味しい食事を台無しにされたのは事実で、お店の味の信用を保ってもらう為にも、きちんと言った方が良かったのだろうか?しかし、言ってしまって面倒になるのも、また面倒だった。

お店の方は、あおむしくんに気がついたのだろうか?色々と考えてしまう。

私が苦情を言う事で、入ったばかりのイケメンバイトくんが怒られるかもしれない。イケメンバイトくんは、しっかり野菜を洗おうとしていたのに、先輩に「サラダはまだか!」急かされて、アタフタして、きちんと洗う余裕がなかったのかもしれない。しかし、お客さんに不快な思いをさせない為にも、安心安全、しっかりとした味の保証はあるべきだし、入ったばかりのイケメンバイトくんにも、きちんと指導し、味を受け継がせて欲しかったと思う。

「入ったばかりのイケメンバイトくん」という脳内ドラマを勝手に再生しながら考えていた。

そして、何となく、足は遠退いて、このお店には、行かなくなってしまった。


お店の評判を落としてしまうようで、言えなかった。しかし、残念、失望した事は、事実で、言いたいけど言えなかったって言う事が、ずっと心に引っかかっているのだと思っていた、が、

今でも、モヤモヤしているのは、信頼を裏切られたようで、悲しかった。店員さんに気づいて欲しかった。未然に防いで欲しかった。そして、あわよくば、謝罪をして欲しかった。という思いもある事を知った。

私がとった行動が、正しかったのか、正しくなかったのか、今でも考える。

正しい、正しくない。試験や数学のように、決まった答えがあるならば、その答えは正しい、と思う。しかし、暮しの中には、幾通りもの、立場によって変わる、その人なりの正しいがある。例えば数学にだって、3の答えには、1+2、2+1、3+0、4−1など、ひとつの答えにいくつもの考え方がある。だから「正しくない」とズバッと言われると、自分の考えを、自分自身を否定されたようで、傷ついて不快な気分になってしまう。

そこで、考えてみた。

正しいに変わる言葉を。

良いか、悪いか、これも正しいと似ていて、良いか悪いかの基準がどこにあるかで、受け取り方も変わる。世間一般的な常識とか、普通とか、そもそも、それを、定義できない、ような気がする。そして「悪い」も、言われてしまったら、自己否定されたような気分になる。

好き、嫌い、中々いい感じ。しかし、上司に「君は、好きだと思うのか」「はい好きです」ちょっとした告白。セクハラみたいになる可能性もあり、却下か。

面白い、面白くない。これ、ぴたりとハマる気がする。「正しくない」と言われるよりも「面白くない」と言われた方が、個人の見解に近く、自己否定された気にはならないのではないか?「面白くない?じゃ、どうやって、面白くしよう。あなたは、どんな事を面白いと思いますか?」前向きに捉えて、改善策を考えられるような気がする。

サラダに、あおむしくんがいて面白くなかったです。

どうします?

お店の方に伝えて、未然に防ぐよう、作業を見直し、改善する事を要求します。

問題は、いつどのようにお店の方に伝えると、お店の方が面白いのか?という事。

投書?今の時代なら、メールかSNSのDM、もしくは電話か。しかし、その場で伝えなければ、お店の方は、あおむしくんがいたという事実を確認できない。そうすると、直接、話をするしかないのか?告白のように、愛を込めて。

飲食店で働いた事がないので、お店の方の気持ちがわからないのだけれども「虫入っていたのか!」と気づいた時に、お店の方はどう対応するのだろう?

あおむしくん対応について色々と考えてみた話。

皆さんは、お店のお料理にあおむしくんがいたら、どんな対応をしますか?どんな対応が面白いと思いますか?

お互いに傷つかない伝え方ってあるのでしょうか?

丁寧、思いやり、誠実、正直さ、安心安全、美味しさ、そんな事にお店の面白さを、私は求めているのかな?そんな事も思いました。

結局、私の中のあおむしくん対応、結論はまだまだ先になりそうですが。

あおむし5

あおむしといったら、やっぱり緑色のイメージでしょうか。元々は、黄色と緑色の息子のおもちゃの写真です。

あおむし3

同じ写真にフィルターをかけたり画像処理をして、加工しています。私は、黒い方も、面白くて好きだなと思っています。


はらぺこあおむし 作者エリック・カールさんが5月23日に亡くなったと知りました。あおむし繋がりで、この話を思い出していました。息子はまだはらぺこあおむしを読んだ事がないので、一緒に買いに行こうと思います。きっと、気に入ってくれるだろうな。ご冥福をお祈りいたします。

ここまで、貴重なお時間を!ありがとうございます。あなたが、読んで下さる事が、奇跡のように思います。くだらない話ばかりですが、笑って楽しんでくれると嬉しいです。また、来て下さいね!