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これまで、今回の9月入学に関する議論を時系列にまとめ、更に遡った9月入学論の歴史をひもといてきました。

シリーズの最終回は、世界の入学事情に目を向けていきたいと思います。

他の国は○月入学?

日本は4月入学の国ですが、他に4月入学の国は数えるほどしかありませんでした。

外務省のホームページをベースにわかる範囲でまとめてみました。

1月 シンガポール、ケニア、南アフリカ
2月 ブラジル、ニュージーランド
3月 韓国 ペルー、アルゼンチン
4月 日本、
5月 タイ
6月 フィリピン
7月 インドネシア
8月 キューバ、メキシコ、アイスランド、スイス、フィンランド、サウジアラビア、スーダン
9月 台湾、中国、モンゴル、ベトナム、アメリカ、カナダ、イタリア、ウクライナ、イギリス、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スペイン、ベルギー、フランス、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ロシア、UAE、カタール、トルコ、ガーナ、チュニジア、イラン、エジプトなど
10月 カンボジア、ナイジェリア、セネガル

※インド 4月入学、授業開始は7月から(酷暑期を避けるため)
※オーストラリア 2月・7月
※カナダ 9月・2月
※デンマーク 1月、8月
※マレーシア 随時入学(年3~5回)
※ドイツ 州により入学時期がバラバラ

外務省のデータと他のデータで違うものもありましたが、その場合は外務省のデータを載せています。

このように見てみると、やはり、9月入学がスタンダードで116か国、日本と同じ4月入学の国はインドくらいしか見当たりませんでした(ただし、インドの場合は4月入学とはなっていますが、酷暑期とぶつかるため実際の授業は7月から始まるそうです)。

少しおもしろいところといえば、ドイツ。
州により基準がバラバラで、専門医による適性検査を受け合格した後に入学するのだそうです。

くわしくはこちらのサイトに分かりやすく載っていますので是非参考にしてみてください。

ドイツの学校は適性によって入学の時期が決まる

9月入学を採用する理由

先ほども述べたとおり、欧米を中心に9月入学を採用する国が多く存在しています。
諸説要因はありますが、欧米における9月入学の理由は農作物の収穫時期が関連しているようです。
ヨーロッパでは前年秋にまいた冬小麦の収穫時期が7月から8月。
また、家畜を飼っている農家では干し草を夏に作るため、この時期は人手が欲しているようです。

実は、この話を家族でしていたとき、夫の出身地・新潟では、記憶があいまいであるものの、小学生のころ、田植えの時期に数日お休みがあったという話をしてきました。
田植えの時期は家族総出で田んぼに出て田植えをするのだそうです。
もちろん、欠席にはならず、学校自体がお休みとなります。
今どうなっているか定かではありませんが、昔は少なからず農作業の手伝い要員として子どもたちがかり出されていたということになります。
年代が一世代違うというのもありますが、私が幼少期過ごした千葉ではそのようなお休みは特になかったので驚きでした。

大卒の就活状況の違いも

もうひとつ、日本と世界の入学時期の違いとして挙げられるのは大卒の就活状況です。

日本は最近でこそ崩れつつありますが、4月の「新卒一括採用」が主流です。
3月に卒業する高校生、大学生、各種学校の生徒を対象に4月に一斉入社できるよう、就職活動を一斉スタートします。
いまは大学生の場合、3月に情報解禁、6月に面接解禁で順次スタートとなりますが、実際は6月以前から選考を開始し内定を出す企業も多いようです。

私が就職活動をしていた1990年代前半はバブルの最後のほうだったのですが、当時は特別な期間を設けていませんでした。
その結果、早ければ大学3年時に早くも内々定をもらう男子学生が出現するといういわゆる「青田買い」という現象もありました。

一方の海外の就職活動ですが、日本で行われているいわゆる「新卒一斉採用」というものはありません。したがって、入社時期は人によりまちまちです。

海外の企業に就職するにはまずは実力をつけるところから始めなければなりません。
完全な実力主義の世界なので、自分の実力、成果をみせるためまずはインターンとして入ります。
そして、このインターンでの仕事ぶりで採用が決まります。

日本でも最近インターンという制度があるのですが、どちらかというと「職業体験」のようなイメージをもっています。
実務を通して「仕事とはどういうものなのか」を理解する意味合いが強いのです。

海外は採用試験の一環として。
日本は職業体験として。

同じインターンでも意味合いがだいぶ違うようですね。

結果、4月に就職をするのが暗黙のルールと化している日本では、よっぽど意識的に「自分探しの旅に出たい」という人でない限り学校卒業即就職となりますが、海外ではそのルールがないため就業の縛りがなく、自分のタイミングで就業スタートできるという利点があります

まとめ

今回は海外の入学時期とその背景を探りました。
世界の9月入学の背景には農業があり、日本の4月入学の背景となった軍隊とは対照的でした。
また、日本における「新卒一括採用」というユニークな制度も4月入学に少なからず影響を及ぼしていることがわかりました。

3回にわたり「9月入学」について考察していきました。
私個人の考えとしてはグローバルスタンダードという観点から9月入学には賛成という立場を取っています。
ただし、これを実現するためには長い年月をかけて徐々に変えていくことが肝要で、現役世代の負担軽減につながると考えています。
新卒一括採用、年功序列、終身雇用という日本独特の制度が崩れつつあるいま、「新しい生活様式」として徐々に日本の社会活動に変化がみられていくことで学校の入学時期にも変化がみられるのか。
今後も注視していきたいと思います。

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