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「梅の花は長く咲くのに桜は早く散るのはどうして?」——人間が選んだ桜 #子ども科学電話相談 4月7日ピックアップ

夏と冬に好評なNHKラジオ番組『子ども科学電話相談』が毎週日曜日にレギュラー放送となりました。

このnoteでは、毎週ひとつの質問を取り上げ、ちょっとだけ深く掘り下げます。というわけで本日にピックアップはこちら。

先に梅の花が咲き始めて長く咲くのに、桜は後から咲いてすぐに散るのはどうしてでしょうか。

ヒント、桜はすごく特殊な植物です。

梅と桜の違いは、花のつき方と形

梅も桜も、分類としてはバラ目・バラ科・サクラ属なので、かなり近い仲間です。見た目の違いとしては、こんな感じ。

梅:花は枝にほぼくっついている、花びらが丸い
桜:花は枝から少し伸びて咲く、花びらはハート型、とにかく多く咲く

梅はこんな感じ(Unsplashより)

桜はこんな感じ(自分で撮影)

桜はやたら花を咲かせてすぐに散る変異体

ここからが、甲南大学特別客員教授の田中修先生の解説。

梅も含めて植物は、花を咲かせることで雄しべと雌しべで受粉して実を作ることが目的です。なので、それなりに長く咲き続けることは理にかなっています。

ところが桜、特にソメイヨシノは、華やかに散るものを人間が選別し、その特徴を残すために接ぎ木で繁殖したものが全国に広がったものです。極論を言えば、やたら花を咲かせてすぐに散る変異体です。

接ぎ木で繁殖させたので、ソメイヨシノは遺伝情報が同じクローンです。植物は、同じ個体の中で受粉しない性質が強くあるので、ソメイヨシノはどんなに花を咲かせてもソメイヨシノ同士で種ができて子どもが生まれることはありません。はかないですねえ。

ちなみに最近の全ゲノム解析から、ソメイヨシノは百数十年前にエドヒガンとオオシマザクラの交配から生まれたこと、この2つの桜は552万年前に共通の祖先から分岐したことがわかりました。

あと、全国のソメイヨシノに付着している細菌集団を解析する「お花見メタゲノムプロジェクト」もありました。桜にも生命科学が立ち入る余地がありそうです。

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