子どもと大人の境目とは(1)障害福祉サービスについて

僕がグループホームで働いていた時に感じた、自己決定ってなんだろう?という問いについて書きます。その前に、そもそも障害福祉サービスとは、と
いうところから書いていきます。

僕の専門分野が知的障害・発達障害なので、おおよそこれらの障害について言及しているものと思ってください。

※一応、調べて確認しながら書いていますが、間違っていることや煩雑になるので省いている説明もあるので、詳しくはご自身でお調べください。

障害福祉サービスとは?

障害福祉サービスとは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律(障害者総合支援法)に基づき、市町村が障害者に支給するものです。お金を直接、障害者に給付するのではなく、サービス自体を支給する、という考えです。

実際にサービスを提供するのは、主に民間の事業者です。事業者は、障害者=サービスの利用者に各種障害福祉サービスを提供し、事業収入を得ます。事業者は、市町村の代わりにサービスを提供します。なので、法律等に定められた基準をクリアして、サービスを提供する事業者として指定を受ける必要があります。

サービスの費用について

サービスの費用について、利用者は自己負担額1割を払います。残りの9割は国50%・都道府県25%・市町村25%の公費で賄われます。

この自己負担額については、障害者およびその配偶者の収入状況によって月あたりの上限が定められます。障害児については、保護者の世帯の収入状況によって上限額が定められます。最近、よく言われている障害児の所得制限というやつは、この障害福祉サービスの上限額のことです。

所得制限は補装具・日常生活用具にもかかってきます。補装具とは車いすや補聴器などのことです。日常生活用具とは、紙おむつや点字ディスプレイなどがあります。日常生活用具の利用者負担については市町村の裁量で決まるようです。

先ほども触れましたが、実はサービスの自己負担額については、大人と子どもで所得の判定基準が変わります。子どものころは自己負担金を払うけれど、大人になったら自己負担金がなくなる、ということがほとんどです。

どちらかに統一したほうが分かりやすいと思うのですが、色々と行政の事情もあるのだと思います。自分の負担がゼロ円だったら、利用者は事業者が不正にサービス費用の請求をしていても気づかない、または気づいても何も言わないかもしれないので、利用者のチェック機能を働かせるために全部ゼロ円はナシにしたい、というのは分からなくもないです。

サービス利用までの流れ

障害福祉サービスを利用するにあたっては、利用者はサービスの支給を受けるために、受給者証というものの発行を市町村から受ける必要があります。受給者証を発行する手続きを支給決定といいます。
そのために医師の意見書や障害の状況等の調査を受け、どういうサービスを使いたいのか、の計画を立てて市町村に申請します。
この計画のことをサービス等利用計画といいます。この計画書は利用者自身が書くこともできますが、役所の職員もしくは相談支援専門員が書くことが多いと思います。
相談支援専門員というのは、高齢者福祉でいうケアマネみたいなものです。

サービス等利用計画を立てる前に、相談支援専門員の方と一緒に見学をしたり、紹介を受けたり、自分で探したりして、どの事業所に行きたいか、を決める必要があります。

障害福祉サービスを提供している事業所は『WAMNET』に情報を掲載する義務があるので、このサイトを見て探すと良いです。
ちなみに、このサイトに情報を載せていない事業所はもれなく法律違反ですので、利用するのは止めましょう。

事業所が決まって、市町村にどこどこの事業所を使いたいという申請をすると、市町村の中で支給決定のために調査や審査会など行います。サービスを受ける必要があると認定されたあとに、サービス等利用計画の案を提出すると、支給決定が下りて、サービスを使える状態になります。

この支給決定の手続きについては、使うサービスによっては省略される部分があったり、担当する職員によって多少変わることもあります。

サービスが使える状態になったら、受給者証をもって、事業者とサービスの利用契約を行います。

利用契約の時に、事業所から個別支援計画というサービスの提供内容についての具体的な計画について説明を受けます。基本的にはこの計画に沿ってサービスの提供を受け、サービスに対しての費用を月ごとに1割支払う、という流れです。

利用者がサービスの提供を受けたら、基本的には毎回、利用者がそのサービスの内容を確認して、実績記録票という紙に確認しましたとハンコを押したりチェックを入れます。自治体によっては、月末に1回確認すればOKなところもあります。

次回予告

サービスの利用までの流れをざっと書いてみました。
意外とめんどくさくて複雑なんですよね。
この複雑なシステムを、知的障害のある方本人が理解して利用する、というのはなかなかにハードだと思います。

果たして、障害のある方本人が、この複雑なシステムの中で、自己の在り様を自分自身で決めることができているのか?
そして、障害福祉の仕事を通して、自己決定とは何か、を考える中で、知的障害のある方の自己決定・判断能力と政治について、経験を通して考えたことを次回、書いていこうと思います。

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