【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】10

今までに経験したことのない治療を受けたその日の夜、夢を見た


400ccのバイクに乗る僕


真っ直ぐ運転している僕


交差点に差し掛かる僕


突然反対車線の車が急に曲がってくる


慌ててブレーキをかける


キキィーーー


スローモーションのようにゆっくり時が流れる


曲がってきた車に吸い込まれるように相手の車が近づいてくる


キキィーーーーーーー


「間に合わない…」


ドガーーーーーン!!!!!


・・・


・・・・・・



「はっ!」


事故直前の夢を見ていた
ぶつかったと同時に目が覚めた
飛び上がるくらい焦ったが身体中に痛みが走る
身体中に管が入っていることも影響している


「このままどうなってしまうんだろう…」


絶望感に苛まれているところに看護師が声をかけてきた
どうやら今日は水を飲ませてくれるらしい


事故をしてから4日が経っていた


数日間食事だけでなく、水分も摂っていない
久しぶりに口にモノを入れる


ゴクリッ…


えっ?
なんだ?
何なんだこの美味しさは?


今まで口にしたどんなモノよりも美味しい

「ただの水がこんなにも美味しく感じるものなのか?」


思わずもう一口飲んでみる


・・・


普通の水だった…
何度飲み直しても変わらないただの水


「あの美味しさは何だったのか?」


美味しさの理由はわからなかったが
様々な衝撃を受け続けている中で
初めて幸せな気分になれた瞬間だった



つづく


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