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星柄の傘


わたしは傘。生まれは渋谷のLOFT、性別はポリエステル、チャームポイントは星柄。

生まれて初めて聞いた言葉は「おすすめの新作です」

これから梅雨入りですよ、という時期に店頭に置かれたの。


わたしたちの出番は雨の日。つまりニンゲンにとっては憂鬱な日。

明るくハッピーな気分で手にとってもらえることは少ないわ。まったく不都合な人生よね。

その場だけしのげればいいのか安めのビニール傘がバンバン売れて、どこかに置き忘れることはしょっちゅう。


わたしは傘のなかでも可愛くてモテモテ。世の女性が次々と手にとり「欲しい」と口を揃えたわ。

育ちもよく、お姫さまのように育てられたわたしは、母親譲りの星柄がだいすきだった。

傘をひらくと、星たちがいっぱいに広がるの。まるで満天の星空を見上げてるかのようにね。


わたしを手にとったのは小さな女の子だった。6歳くらいかしらね。

「ママ〜、これほしい!」

そう言ってわたしを振り回す。雑に扱われるもんで「この子はイヤだ!」と叫んだけど意に反して購入された。


その子はみおちゃんという女の子だった。

みおちゃんは小学一年生。雨の日が嫌いだった。雨の日には駄々をこねてお母さんを困らせる。

そんなムスメに困り果て、お母さんが考えついた苦肉の策が「好きな傘を買ってあげる」ことだった。

これで雨の日も学校にいってくれるに違いない。


そしてようやく雨の日が訪れた。ついにわたしの出番だ。

その日、みおちゃんはあっさりと学校へ向かった。

お母さんしてやったり。みおちゃんはわたしを嬉しそうに握りしめて、るんるんと歩く。

そうして学校につくと、顔色が変わった。何かにおびえているような顔つきだった。


みおちゃんは男の子とよく学校でケンカをしていた。というより、いじめられていた。

「なにそれ、ヘンな傘〜!」

男子たちがわたしを馬鹿にする。みおちゃんは悔しそうだ。


次の瞬間、みおちゃんがわたしを振り回して男子たちを攻撃しはじめた。まるでチャンバラだ。

「うわ、やめろ!」

男子たちは逃げていった。よくやったみおちゃん。


その日の帰り道、みおちゃんはわたしをひろげて自慢げに笑った。

「これ、ママがくれたんだも〜ん」

満天の星空がひろがる。

みおちゃんの願いは、叶ったようだ。




「 アタイにだって言いたいことがある。」

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アタイの気持ちといいます。月に10本くらい書いてます。

文章:しみ

イラスト:じゅちゃん

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