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読書感想 - 「なぜ,仕事が予定どおりに終わらないのか?~「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術」 佐々木正悟

感想

「見積もり」+「実測」というセットを持ち、時間的な余裕など全くないことを骨身にしみて実感するために、タスクシュートという時間管理術を解説する本書。

タスクシュートは、一日の1分以上かかる全ての行動を書き出し、分単位で見積もり、実測値を書いていくという一見病的にも思える方法論なのですが、これは「予測と現実のズレが異常に大きい」ということを認識し、意識に叩き込むために必要なことだと著者は力説します。

実際に試してみると、確かに1分と見積もっていたことが10分ぐらいかかっていたり、60分と見積もったことが20分で終わったりと、相当あてにならないことを実感できました。また、確かにやろうとしていることに比べて時間はなく、著者の言うところの

「すばやくやれば、少しはできる」「スキマ時間を活用すれば、自分の時間が持てる」という幻想

を私もまた抱いて日々を過ごしていたことが明確になりました。

お金や住空間に置き換えると簡単に理解できるのですが、「見積もり」+「実測」の仕組みを持たないということは、お金の場合は預金残高を把握せずに買い物の判断をするようなものですし、住空間の場合は部屋の広さを把握せずに家具を購入するようなものです。

あたりまえですが、どんなに希望しても熱意を持っても努力しても、持っているお金以上の買い物はできませんし、部屋の広さより大きな家具は部屋に入らないのです。

しかし、著者も指摘するのですが、これが「時間と仕事」の関係になると

「本気でやればできる」とか「実行時間を明らかにすればできる」とか「手帳に書けばできる」といった、意味不明の言説がまかりとおる

という不思議。これもあたりまえですが、時間を長くしたり製造したりすることはできないので、調整する(縮める)としたら仕事の方なのです

タスクシュートのような方法で、自分がやろうとしていることを全てやると24時間では足りないということを明確に意識しないと、いつまでたってもなんとなく時間はあるという感覚でやることを増やしていったり、先延ばしにしたりしてしまいます。

もしかしたら逆なのかもしれませんね。時間がある、と思いたいから自分の可処分時間を明確にしようとしない。明確にしてしまったら時間がないことが突きつけられてしまうから。ただの現実逃避ですが、多くの人が行っていますね。

その他、心にとまったセンテンス

結局は仕事をするしかないのです。仕事をしないから、不安なのです。そしてその不安は、時間がなくなるほど大きくなるに決まっています。

手塚治虫が関わっていた出版社では、「手塚おそ虫」とか「手塚ウソ虫」と陰口をたたく編集さんもいたようです。これは、世の完璧主義者が知っていていいことです。完璧主義の人にしてみれば、とにかく仕事の質を落とすことこそ、最も非難されるべきことなのかもしれません。しかし、仮に仕事は完璧だとしても、手塚治虫ほどの天才が完璧を追求した結果締め切りに間に合わなくなったのだとしても、「締め切りに間に合わない」ということへの不快感を強く感じる人は、けっこういるということです。

「たいていの見積もり時間は正しくないが、それは『短く見積もる』という誤りが犯すのであって、『まちがって長く見積もる』という人はほとんどいない。とくに最初のうちは、気合いを入れて倍速で仕事をこなそうとするより、仕事を半分に減らした方が賢明だ」

「見積もりの半分の時間で、すべての仕事を終えられた」などという人は、1人も見たことがありません。

計画はどうせ狂う、だから計画を立てる

人はしばしば、諦めるべきところで「自分の意思の弱さ」などを嘆き出すのですが、それは時間管理ではありません。

おそろしいことに、会社などでは「手が空いている風のヤツにいかに仕事をうまく割り当てるか」といったことがかんたんに、真剣に検討され出します。休憩時間を「いかに埋めるか」がすべてであるかのようなのです。言葉が悪くて申し訳ありませんが、こんなことをくりかえしていると、仕事が生来できる人すら「使い物にならなくなって」しまうでしょう。

「割り込み」と「休憩」を分けなければいけないことをハッキリと認識しておくべきです。

タスクシュート上の「休憩」を「バッファ」(予備時間)と書き換えることは容易なことです。これを繰り返して入れば、やがて「空きのまったくない物置のような空間」と変わりのない時間の使い方になります。つまり、時間は使えなくなるのです。

現代の多くの人の悩みは「空けた時間で何をするか」ではありません。「そもそも、時間に空きがない」ことのほうが問題です。

人は、単純に休憩を取らずに仕事を続けてしまうと、怪しげな判断を平気で下してしまうもののようです。

先送りを避けるための最も有効な方法は、「毎日同じように過ごす」ことです。

「事実を直視する」とは、こうしたことを言うものです。「ムダな時間をなくす」とか「スキマ時間を活用する」などといったことは、完全な幻想でしかありません。完璧主義の人が寝不足になるのは、「23に4を足せば、27になる」という、ごくごく単純な事実を無視しようとしているだけのことなのです。


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