闘病少女みかりん

摂食障害しながら物書いたり考えたり。修猷館高校→早稲田文ジャ→糖尿病内分泌科入院→OD…

闘病少女みかりん

摂食障害しながら物書いたり考えたり。修猷館高校→早稲田文ジャ→糖尿病内分泌科入院→OD後救急搬送で内科入院→摂食障害治療で精神科入院→就職するも病気を理由に解雇→心療内科転院したりアルバイトしたり塾講師したり←今ここ ヒトリエ、川上未映子、向井秀徳好き。

最近の記事

食べられないお正月

食べられないお正月 おせちもお雑煮も食べられないお正月があるなんて知らなかった おせちもお雑煮も当たり前に食べていた時の私は知らなかった 今年は食べられなかった 実家に帰る誘いを断って 一人で素麺を食べた 今頃皆ご馳走とどんちゃん騒ぎだと思うと 悔しかった テレビを点けると地震や事故や戦争が起きていた お正月なのに沢山の人達が今年は おせちもお雑煮も食べられなかった 当たり前に食べられると思っていたのに 「孤立」と「食料」という言葉がチラついていた

    • 匂いが産まれる

      匂いが産まれる  鉄の味とは言い得て妙で、何故なら誰も鉄を食べたことがないのに、そう言われると味がわかるからだ。血を舐めた時の味だと言われることも多いが、それとは少し違う。やっぱり鉄の味なのである。読んだところによるとそれは匂いのせいらしい。味を構成しているものには2種類あって、ひとつは「甘い」「辛い」という舌で感じ取るもの、もうひとつが「風味」、英語でいう「フレーバー」を鼻で感じていて、後者の、要するに「匂い」が味の一部となっている。かくして鉄の匂いは、鉄分を含む血液の匂

      • ホールシックガール・エスケープ

        ホールシックガール・エスケープ  テキトーな誰かとセックスするのは  さびしいから  その間は何も考えなくて良い  あなたはそこにいるだけで認められる  例えば良い子であったり何か媚びたりしなくても  将来の不安を考えたりしなくても  ただそこにいるだけで認められる  穴としてである  彼らはただ出せれば良い  その穴の中に、わたしの場合、女の子が住んでいる。  わたしの実家には父親が子供を殴ろうとして開いた穴がある  女の子は誰かと繋がりたい  気

        • 海とスコーン

          海とスコーン  誰かとセックスした後  風呂入っても鉄臭さが抜けない  頭が痒い  突かれてる最中ずっと  ドゥルーズの『マゾッホとサド』のことを考えている  「快感は、遅れて、迂回して、宙吊りになるからこそやってくるのであり」  スコーン早く食いたい  わたしは終わるとすぐに食べられるよう  スコーンを焼いておくのが日常  その角で誰かの喉を切っ裂けるよう  わたしを乱暴に扱う貴様  誰かれ構わず乱暴させるわたし  終わった後のスコーンはひたすらに

        食べられないお正月

          ノンソロ・ピッツァ・ルーナ

          ノンソロ・ピッツア・ルーナ  夜の道を行きます  自転車に乗って行きます  あなたはスコーンを焼きます  その三角形の頂点で誰か  嫌な奴を殺せるように  ですが最悪です  ピッツアでは人を殺せません  幸せの象徴だからです  私達は美味しいものを適量食べられるのが良いのです  いくらピッツアが好物だったとしても丸々一枚食べるのは苦しいです  でもそれが一人だとわかりません。丸々一枚を苦しみながら食べることになるので  ピッツアとは誰かと食べてこその幸

          ノンソロ・ピッツァ・ルーナ

          わたしは夜がとても寂しい

          わたしは夜がとても寂しい  昨日の夜のことです。わたしはタッパーになりました。正確に言うとタッパーの一部が溶けてわたしとくっついて、白くて四角い蓋のついたタッパーにわたしは閉じ込められてしまいました。どんなに足掻いてもそこから出られず、苦しくって、しかしこれが夢だとわかります。タッパーなんて馬鹿馬鹿しい。夢から醒めろ。わたしは自分の頬を叩き、その瞬間景色が変わります。わたしの部屋になります。まだ夜です。あたりは暗く、悪夢のせいで汗をかいたわたしは、体をおこし、水を飲もうとし

          わたしは夜がとても寂しい

          ふたご星

          ふたご星 ずっとずっとあなたはさびしい あしたからもまた地獄みたいな日々が始まります あなたはきちんと食べなければならない そのために働かなければいけないし 上手く誰かと話さなきゃいけない 話すためには口を大きく開けて ワハハ、と笑えなければいけない あなたにはそれが出来ない 夜一人で泣いてしまうことがあります あしたが来るのがこわくって また朝食を食べなければいけない 今日は何がありましたか いつもと変わらない日でした 必死で生きているのに後ろ指

          どうしてこんなに苦しいのか考

          どうしてこんなに苦しいのか考  体がきついです。目眩と息切れと耳鳴りがします。そして食べても食べても落ち着かず、ずっと食べていたいです。どうしてこんなに体がきついのに生きていかなければいけないのでしょう。  私は詩人です。ので、詩のことを考えたいのに食べ物のことばかり考えてしまって、悔しいです。それは私の個性が悪いからで、個性的な体というのはBMIが13しかない骨と皮だけの体のことで、少し動いただけですぐにエネルギーが枯渇する体のことです。月曜日私はアルバイトでビラ配りを

          どうしてこんなに苦しいのか考

          スコーン2

          スコーン2  反復ばかりでつまらない。ただの上下運動の繰り返し。挿れる・咥える・握る全てそう。それなのに皆が病み付き。  肉便器という言葉があるがBMI13の私の体に肉はなく、つまりただの便器である。便器だから皆温もりを感じるし安心して中に出せる。最近の便器は暖房効果があり、皆出した後も離れたがらない。痩せ過ぎの私は妊娠しないのでほっとするし、「ギュってしてるだけで癒される」らしい。  セックスはコミュニケーションだというが、それならば繋がっているところから思考が伝われ

          考える秋

          考える秋  私の中で鈴虫の天ぷらと舞茸の天ぷらは同じイメージである。鈴虫ってあんまりよく見たことがないが天ぷらにすると多分舞茸みたいに傘が張って肉厚で美味しい。舞茸はこの季節にはそこらじゅうに(何処だ?)に生えているだろうし、姿は見えないが鳴き声だけは聞こえてそこらじゅうにいること確定な鈴虫にはぴったりだ。そういえば舞茸って鳴き声あるのだろうか? あるとしたら多分「きゅっ」とかそんな感じだろう。旨味成分のグルタミン酸が詰まって凝縮して鳴く感じ。きのこ類は冷凍すると旨味成分が

          害虫

          害虫  窓を開けた瞬間にカナブンが一匹、天井の明かりに釣られて部屋に飛び込み、次の日もそいつは死ななかった。こうしたら勝手に外に逃げて行くだろうと、昨日と同じように窓を開けたら、逃げて行くどころかもう一匹飛び込んで来て、そいつも今日まで死ななかった。気付いたら部屋の天井にはもう一匹増えた三匹のカナブンがいて、地上には一人、俺という人間がいる。  今日こそ俺はお前らをどうにかせねばならない。そんな気がしていた。  ゴキブリのように菌を撒き散らすかは知らないが、飛び回る音で

          スコーン

          スコーン こんなフンイキが 気持ち良いとか恥ずかしいとか ごちゃごちゃうるせえ やることはわかってる 早く終わらせろスコーン食いたい 冷凍庫で冷やされて待ってる あんたは私の頭を小さい小さいと撫でたり 押さえつけたり揺さぶったり 私に逃げ場はないし すること一つだから 脳味噌縮んで小さいんだろ 飯のことだけ考える これ終わったらスコーンが食える どうして好きな人と以外はセックスをしてはいけないのか 考えても答えは出て来ない 好きな人とのセックス

          放生会

          放生会 放生会という祭りに行った ここでは食べるために殺してはいけないのに 多くの人が食べるために歩いていた 屋台で売られるものの全てがいのちである 唐揚げとチュロスと鶏と麦のいのちを 咀嚼し磨り潰す人の波の中を潜り 私は屋台の端から端まで何も買わずに歩いた 何と罰当たりな人混みと思って しかしそんな人もいのちであるので 参道は混雑している ここでは全てのいのちが放たれ 食べることは生きること 人のいのちも殺してはいけない 私は参道の端に辿り着いた

          引っ越し

          引っ越し 丸一日かかって何度も車で往復して重い物を持って草臥れて ふと振り返ると 山の端! 昼と夜の境目 空と陸の端の青と紫とピンクが見えて やまのはってどう書くか知ってる? と言っても母は知らなかった 705前の廊下からは毎日草臥れかかった夕日が見える 車の中での会話 小さい時二人でよく行ったマルキョウの生簀覚えてる? 私がよく着ていた72のTシャツ、首元と袖口が黄色であとは青くって、胸元に72の数字とウインクしたウサギがプリントされているTシャツ覚えてる

          放生会

          放生会 放生会という祭りに行った ここでは食べるために殺してはいけない 多くのいのちが参道に放たれた 犇くばかりの人 両脇にずらりと並んだ屋台 これらは全ていのちであるので 食べてもいけないし殺してもいけない 眼鏡のおじさんは唐揚げを買った 女子高生達はチュロスを買った 食べることは生きることなので 自分を殺してはいけない 人が屋台に並ぶのは善いこと とても多くの人が食べるために歩いて ぶつかり、出会い、渦になって ひとつの方向を目指していた

          放生会

          放生会 放生会という祭りに行った こんなにも多くの人が食べるために歩いているのかと思った こはくくんという9歳の男の子が迷子になっているというアナウンスが何度も流れていた いのちがずらりずらりと交差しているのに こはくくんは見付けられなかった お化け屋敷の屋台は「そんなに長い時間はかかりません」というのが売り文句だった その一瞬のために多くの人が並んでいた チュロス屋台のお兄さんは隣のお姉さんに小突かれた お姉さんは笑っていた ふたりはきっと別れ話をする