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コールドリーディング術を使いこなす弁当屋のおばちゃん

ときどきお昼にお弁当を買いに行きます。ちょうど歩いて行ける距離に屋台村があって、よくある和食系から、中華、タイ料理などバラエティー豊かで楽しい所です。
そんな中の、ひとつの店舗のおばちゃんのお話。(上の写真は参考画像、たぶんどこかのアジアのおばちゃんです。)

そもそもコールドリーディングとは?

コールド・リーディング(Cold reading)とは話術の一つ。外観を観察したり何気ない会話を交わしたりするだけで相手のことを言い当て、相手に「わたしはあなたよりもあなたのことをよく知っている」と信じさせる話術である。「 コールド」とは「事前の準備なしで」、「リーディング」とは「相手の心を読みとる」という意味である。(Wikipedia)

特におばちゃんは「あなたのことをよく知ってる」部分を活用し、お客さんからの親近感、信用を得ているようでした。

そこは和食系のお弁当屋さんで、10種類ほどあるメインのおかずから一つ(それぞれ副菜あり)、白米・十穀米のどちらかを選べて450~600円の価格帯の屋台でした。日替わりおかずのチョイスがアジフライや蒸し鶏の梅しそソース掛けなど、良い感じのお店です。

手前に並んでいるお弁当から一個選んでおばちゃんに注文します。するとおばちゃんは、
「いつもありがとうございます」
と言うのです。このお店はたまに利用するくらいだったので、”いつも?覚えててくれてるの?”と少し混乱しますが、言われて悪い気はしません。むしろこれはまた次回利用した際に言われたら、覚えててくれたんだ、と勝手に思い込んでしまいます。人間は、自分の経験に沿った思い込みをする生き物だからです(*1,*2)。

おばちゃんは後ろに積んであるお弁当から注文されたものを袋に詰め、ご飯の希望を聞いてきます。
「ごはんはどちらでしたっけ?白米?十穀米?」
ここでも絶妙な聞き方をしてきます。まるで知ってるかのような聞き方。覚えててくれてるのか!すごい!と勝手に感動しました。

でもよく考えると「ごはんはどちらにしますか?」と全く同じ意味です。ニュアンスを変えて、親近感・信頼感を醸し出しています。

その結果か、その屋台にはいつも行列ができています。味は正直ほかの和食系屋台とはそんなに変わらない、だからこそ、おばちゃんとの親近感で差別化し、リピーターが続出しているのではと考えます。

意図的かどうかは全くわかりません。もしかしたらそのおばちゃんの人柄があふれ出ているだけかもしれません。でもそれは「コールドリーディング」のように体系化された知識をそのままマネする以上に身体化され、効果も絶大になるのでしょう。僕もまたおばちゃんのお店に行こうと思います。


Shin Itagaki / 板垣晋
Web: https://www.shinitagaki.com/
instagram: https://www.instagram.com/shinitagaki314/
Twitter: https://twitter.com/shinitagaki314


*1 選択と決定、先入観に基づく観察と評価   安達 卓俊 
     https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/review/8-2-s/8-2-7.pdf

*2 ヒューマンエラーを減らすために
     ヒトの特性とヒューマンエラー   河合篤
     http://www.jr-rengo.jp/kikanshi/terumini41-sympo2.pdf

Photo by John T on Unsplash



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