太宰治『女生徒』にもらった、想いの数々。
こんにちは。桜小路いをりです。
先日、プロフィールの記事に「愛読書」の項目をプラスしました。
(実は、少しずつアップデートされているプロフィール記事。時折のぞいていただけると嬉しいです。)
私が愛読書として必ず挙げる本のうちのひとつが、太宰治の『女生徒』です。
高校1年生のときに出会ってから、ずっと大好き。
今年の夏の角川文庫の「カドフェス」でピックアップされていて、ちゃっかり限定カバーもお迎えしました。
『女生徒』が表題になっていますが、太宰が得意とした女性の告白体小説がいくつも収録された本です。今、一編ずつゆっくり読み進めています。
私が初めて読んだ『女生徒』は、文庫本ではなく、図書館で借りた「乙女の本棚」シリーズでした。
今井キラさんのイラストが繊細かつ美しくて、『女生徒』の世界観にとてもよく似合っていて。
しばらくの間、何もかも忘れて没頭してしまったことが、とても記憶に残っています。
行を目で追うたび、ページを捲るたび、胸が苦しくなるほどたくさん共感して、たまらない気持ちになって、気づけば何度も読み返していました。
ひとりの少女の、朝起きてから、夜眠るまでの1日の物語。
彼女は、他の人から見たらどうということもない一瞬に感動したり、悲しくなったり、考え込んだり、憧れを思い描いたりします。
こんなふうに、目まぐるしく色んなことに想いを馳せて、くるくるとたくさんのことを頭に浮かべていく主人公。
彼女が考えるあれこれは、はっとするほど鮮烈で、共感することばかりで。
時代背景も家庭環境も違うけれど、人知れず同志を得たような、そんな不思議な一体感を、読んでいる間ずっと感じていました。
「こう思うのって、私だけじゃないんだ」
そう知ったとき、心の中の重苦しい何かがふわりとほどけて、ほっとしたような気持ちになりました。
でも、同時に、少し寂しいような、真新しい文庫本に折り目がついてしまった瞬間のような、なんとも言えない気持ちにもなって。
読み終えたとき、ひとつ大人になったような気持ちになったことも、まだ覚えています。
キズ、というと、まるで辛いもののように思うけれど。
本当に、「キズ」としか言いようのない痕が心に刻まれたような、息苦しいようでいて柔らかな読後感が、ずっとずっと大好きです。
読むたびに新しい発見があるから、私は、主人公の「女生徒」と同年代のときに、『女生徒』という作品に出会えたことがとても幸運だったな、と思います。
つい引用が長くなってしまいましたが、最も印象に残っているのは、ここの部分です。
私も1冊の本に影響を受けやすいところがあるし、ささいな部分だけれど、周りの人よりちょっと「ずるい」ところがある自負も、心のどこかであって。
だからよけいに、ここの文章が胸に刺さりました。
今もそれは抜けてないんじゃないかな、と思うくらい、私の心の奥に息づいている一節です。
私にとって、「かけがえのない」という言葉では言い表せないほど素敵な読書体験を、想いの数々を教えてくれた『女生徒』。
私と『女生徒』の彼女の年齢は、これからもどんどん離れていってしまうけれど。
私の心には、いつまでも美しく儚く、彼女の姿が在り続けてくれる気がします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、あなたが『女生徒』を手に取るきっかけ、もしくは、もう一度読み返すきっかけになれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。