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人と共存するテクノロジー─グレッグ・リン氏ファカルティ・レクチャー

しなやかな建築の境界や新しいアプローチを検討するために、学際的な協力を通して将来の物理環境とデジタル環境の融合を調査するための国際的なシンクタンクとして設立されたxLAB。

xLABではxLAB サマー・プログラムを開催し、実験的な交流やアイデアの実証、知識の共有を通じて、将来の環境構築のための戦略を開発する、建築教育のための分野横断的な触媒として機能させることを目指しています。

2018年のテーマ「モビリティ」に合わせて開催された、xLABサマー・プログラムのスタジオ講師によるファカルティ・レクチャーの模様をお伝えします。



グレッグ・リン
1964年オハイオ生まれ/マイアミ大学(オハイオ州マイアミ大学)建築学(環境デザイン学士)、哲学(哲学学士)修士号取得、プリンストン大学建築学修士号(建築学修士)取得 /ブラチスラバ美術工芸アカデミー名誉博士号取得/主な受賞に2003年 アメリカ芸術アカデミー賞、レターズアーキテクチャー賞受賞、2008年第11回国際ヴェネツィア・ビエンナーレ建築でゴールデン・ライオンを受賞、2010年米国アーティストからのフェローシップ受賞/2017年xLAB サマー・プログラムでキーノート・セッション登壇
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より少ない要素で、多くのもの/大きなものを生み出す

1990年代からデジタル・テクノロジーを設計に利用する術を検証していたグレッグ・リン氏。
当時を振り返り、その使われ方は「大量の図面を伴うような」複雑性の管理に用いられていたという。しかし、わずか2つの部品からなる「ラビオリ・チェア」(2005年)の設計にあたり、「ものごとを複雑さから解放し、より少ない部材でものをつくることができるようになること」こそデジタル・テクノロジーのイノベーティブな利用法であると確信したという。

その後も、多くのプロジェクトで「より少ない要素で、多くのもの/大きなものを生み出す」ことに挑戦した。



デジタル・テクノロジーの活用

ヨットの設計では、流体力学的要素からの形態生成にあたり、コンピュータの進化によって、異なる流体(水と空気)からの影響を一度にシミュレートできるようになった。
加えて、昨今のプロジェクトとして、アスリートの身体データを収集・分析し、椅子の座面環境にフィードバックして彼らのパフォーマンスを高める椅子「Micro Crimate Chair」や、

Bluetooth、Wi-fiなどの通信技術を使い、利用者がスマートフォンのアプリでコントロールできるショッピング・モール用の荷物のピックアップ・ステーションなど、急速なデジタル・テクノロジーの発達と方向性の多様化に伴う、多岐にわたる事例が示された。



歩行を選択させるモビリティ─自律型軽量輸送用マシン「Gita」

メイントピックは、今年のxLABサマー・プログラムのテーマ「Mobility」に関連するものとして、現在グレッグ氏がピアッジオの研究所で開発している自律型軽量輸送用マシン「Gita」が発表された。

これは、屋内外を問わず運用可能で、大型トラックによる都市内物流の非効率さと、トラックによる空間的な圧迫から歩行者を解放するものとして考えられた。

重要なのは、グレッグ氏とピアッジオは、今日のテクノロジーをベースに、人が都市で「移動する」方法そのものを変えようとしている点にある。
自動車での移動が一般的なアメリカでは、高い肥満度と歩行量の少なさには明確な相関関係が見られ、喫緊の課題である人びとの健康増進のために、移動手段として歩行を選択させることは重要なのである。



「人間がやりたいことを一緒になってやってくれる」ロボット

グレッグ氏は、ロボットについて「人間の仕事を奪う」のではなく、「人間がやりたいことを一緒になってやってくれる」関係の構築が可能であると説く。
人とともに移動する「Gita」により、移動のメインが徒歩になり、家・職場・余暇の距離感として理想的とされる「20分圏内に収まるライフスタイル」を実現すること、デジタル中毒から人を解放し、近隣街区の関係・コミュニティの創発が可能であるという。
こうした都市的な視点の構築において、建築家の職能は今後も発揮されると述べた。
(文責:ゆ/新建築社)



xLAB サマー・プログラムの概要は下記から!


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