火吹き山2

【右脳めし】かつてファンタジーといえばゲームブックだった|火吹き山の魔法使い(書籍)

ファミリーコンピューター(1983年)が発売されて間もない頃で、まだドラゴンクエスト(1986年)が世に出ていない1984年。
ぼくにとって、剣と魔法の世界を楽しむ場といえば「ゲームブック」でした。

ゲームブックは、文章を読み進めながら、サイコロを振ってモンスターと戦闘をしたり、選択肢を選ぶことで、物語の展開や結末が変わっていくアナログゲームです。

今回取り上げる、スティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストン著『火吹山の魔法使い』は、ぼくが初めて手にしたゲームブックです。
『ファイティング・ファンタジー』シリーズの第1巻で、原書は1982年にイギリスで発売されました(日本語翻訳版の発売は1984年)

『火吹山の魔法使い』あらすじ
頂に赤い植物が群生しているところから「火吹山」と呼ばれる切り立った山の地下には、悪の魔法使いザゴールの作り上げた迷路が広がっている。魔法使いの蓄えた莫大な財宝を求めて多くの冒険者が地下城砦に挑んだが、いずれも怪物たちに阻まれ、ほとんど生きて戻らなかった。そしてわずかな生還者も、再び挑戦しようとはしなかった。
そして今、新たな冒険者がこの難関に挑もうとする。先人たちの残した手がかりによれば、たとえ首尾よく魔法使いを倒したとしても、その宝を手に入れるためには地下城砦のあちこちに隠されたカギを見つけておかなければならないだろう。
【Wikipedia】

遊び方

ゲームブックの基本的な遊び方は、現代のRPGとそれほど変わりません。
ゲームを進めて分岐点が来たら、どちらに進むかプレイヤーが判断。
モンスターと戦闘になった時は、互いの攻撃力とHPで勝敗を決めます。

ただし、アナログゲームなので、戦闘時の数値はサイコロを振って計算をします。

手順としては、まず、あらかじめ自分の基本パラメーター(技術点と体力点)をサイコロを振って決めておきます。
ゲームブックを読み進め、敵(技術点と体力点が表記されている)と戦闘になったら、もう一度サイコロを振り、出た目に技術点を足して攻撃力を定めます。

攻撃力が体力点を上回ったら、体力点から2点引きます。
これを、敵と自分交互に行って、体力点がゼロになった方が負け。
自分が勝てたら先に進み、負けたらゲームオーバーです。

食料は10点分。1回の食事で1点を消費し、体力を4点回復できます。
その他の持ち物は、金貨が1枚(ゲーム中に増えたり減ったりする)。
二服の薬が入った薬瓶が1つ(薬は3種類あり、冒険を始める時に1種類を選ぶ)。

これらのアイテムをと2つのサイコロを駆使して、ゲームを進めます。

ゲームの進め方は、文章を読んで、末尾に書かれた番号に進むだけ。
分岐点に来ると、幾つかの選択肢の中から次の行動を選びます。
選択肢ごとに番号が記載されていて、選んだ番号の文章を読み進めます。
例えば、こんな感じ。

ごたごたとちらかった部屋の中で、老人が揺り椅子に腰掛けている。
老人は「こんにちは」と声をかけてきた。君は、

世間話を始めるか? 334へ
剣を抜いて突撃するか? 247へ
相手にするだけ時間のむだだと部屋を出て北へむかうか? 292へ

で、334へ進むと、

334
 君が口をきくと老人は立ち上がる。「いや、これはこれは、よそのお方!」と切り出す。「どうぞ、中へ、開店しておりますぞ。なにをおさがしかな? なにをお求めかな? お目にとまったのはなんですかな? どちらへ行かれる? 北かな? ええ?」君は老人に一部始終を語って聞かせる。老人は熱心に耳を傾けて答える。「ははあ、なるほど、そういうことならうちの青いローソクが1本お入り用ですな。金貨は20枚です。現金で願いますぞ。(以下略)」

と、物語が展開していきます。

イラストが気分を高める

冒険の気分を高めてくれるのが、上記にも載せた挿絵のイラストです。
描いたのはイギリスのイラストレーター、ラス・ニコルソン(Russ Nicholson)氏。『ファイティング・ファンタジー』シリーズ16作の他、ゲームブックで多数のイラストを描いています。

ぼくは、このイラストに惹かれて『火吹山の魔法使い』を購入し、その流れで、ゲームブックを楽しむようになりました。
だから、ファミコンで剣と魔法の世界を描いたRPGが発売された当初は、ニコルソン氏のイラストと比べると絵的な魅力を感じられず、食指が動きませんでした。
(後々、ハマる事にはなるのですが)

再販を願う1冊

『火吹山の魔法使い』は1984年に社会思想社〈現代教養文庫〉版、2005年に扶桑社版が発売されて以来、再販されていません。
今ではどちらも版も絶版となり、プレミア価格がついた中古本でしか入手できません。状態の良い物は1万円を超え、完全にコレクターズアイテムです。

若いクリエイターも手にすることができるよう、適正価格で再販していただきたいものです。

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