書評・嫌なやつばかり登場する面白い話。サマセット・モーム『人間の絆』新潮文庫

100年以上前に書かれた名作の金原瑞人による新訳なんですが、実に面白い!

モームって「世界文学」という冠から想像していると、ただただ面白い話で、「あれっ。文学ってこんなに面白いの?」って思わされます。

自伝的小説であり、主人公がめちゃめちゃ嫌なやつ。ってことは、モームも嫌なやつなのでしょう。そして、悪い女の人と知り合うのだけれども、その女性もまた、かなり嫌なやつなんですね。

嫌なやつばかり出てくるのに、目が離せない。嫌なやつ、ダメなやつすぎて主人公に感情移入しにくいのだけど、どこかで自分を重ね合わせてしまう、不思議な小説です。

主人公のたどり着いた境地も、実に主人公らしいところで、でもそこには多分、真実というものが含まれているんだろうなと思わされます。

どうぞ、嫌なやつのお話をお楽しみください。

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