マガジン

  • 読書記録

    本の記録

  • 仕事論

最近の記事

『賢治と鉱物』、『少年宇宙』

『少年宇宙』という漫画がある。 トイズ・ヒルという不思議な街の外れの水晶林には光の粒子が降り注ぎ、ゼンマイ仕掛けの少年たちは流れ星を網で捕まえてお茶に入れて飲む。 緑柱石を拾い、紫水晶の香りを嗅ぐ。 その美しい世界観は幼い僕を魅了し、以来鉱物にそこはかとない憧れを抱いていた。 鉱物は静かさの香りがする。 しんと澄んでいるような、 少し寂しいような、 冬の夜の紫色の空気に似た匂いがある。 それは銀色夏生の言葉にも似ている。 賢治には、世界がどんなふうに見えていたのか そ

    • 面接で面接官にたくさん喋らせる方法①

      先日の記事で面接に合格するための方法の一つとして、 求職者ではなく面接官の方にたくさん喋ってもらうということの意義をお話しした。 今回は、実際に面接官にたくさん喋ってもらう方法に踏み込んでいきたい。 ①面接官が喋り始めてから、あるいは最初からよく喋るおじさん面接官に当たった場合(非常にラッキー)の聞き方 ②面接官に喋らせるパス出し 上記2項目に分けて解説していく。 今回の記事は①の部分について。 ①面接官が喋り始めてから、あるいは最初からよく喋るおじさん面接官に当た

      • 『愚かな薔薇』恩田陸・桜庭一樹・大手拓次それぞれの薔薇

        恩田陸『愚かな薔薇』 読み終わって調べたのだが、虚船というのは日本各地の民族伝承に実在するのだそうだ。(伝承に「実在する」というややおかしな表現となってしまった。) 何も知らない渦中の少女が、夏の異郷でその少女期を終えるような経験をする。 これぞ恩田陸の真骨頂!醍醐味!と、脳内に数々の傑作の走馬灯が駆け巡り、「理瀬!憂理!」と叫んで駆け出しそうになった。 『七月に流れる花』、『蛇行する川のほとり』、『麦の海に沈む果実』、『ネクロポリス』もそうだっけ? しかしこうやって過去

        • 面接合格するには面接官にたくさん喋らせろ

          転職活動の面接で、求職者ではなく面接官の側にたくさん喋ってもらうことは可能なのか。 または、面接で話好きなおじさん面接官に当たり、自分より相手の方が多く喋っているくらいだった。一体あれで大丈夫だったのかと不安になったが、後日何故か面接通過の連絡が来た。 こんな経験をしたことはないだろうか? これはまさに上手く面接官に喋らせることができた例である。 そう、面接官に喋らせることは面接の合否にとっても非常に意味のあることなのである。 まずなぜそんなことを試みる必要があるのかか

        『賢治と鉱物』、『少年宇宙』

        マガジン

        • 読書記録
          5本
        • 仕事論
          2本

        記事

          『パン屋再襲撃』(『ねじまき鳥クロニクル』)村上春樹

          僕は十八歳で、そのとき下宿先の煎餅布団に寝転び本を読んでいた。その六畳一間はすぐ外を走る電車の小さな駅の光を窓から取り込み、中途半端な明るさを保ちながら夜半を迎えようとしているところだった。 六月の気だるい蒸し暑さが夜を包み、若者ばかりが押し込められた、縦に五列横に十二列のその古い学生アパートを、枡に区切られた陰気な標本箱のように見せていた。やれやれ、まだ零時前か、と僕は思った。 もしも村上春樹が好きかと問われたら、自信を持ってそうであると答えることが僕にはいまだできないよ

          『パン屋再襲撃』(『ねじまき鳥クロニクル』)村上春樹

          『なんとかしなくちゃ。青雲編』恩田陸

          奇しくも、本作品を読んだのは転職活動真っ只中。 一家の大黒柱である私は、今後の仕事をまさに「なんとかしなくちゃ」と思いながらしかし、押し寄せる面接とSPIの日々、 御社御社!弊社当方!志望動機は経験と挑戦と貢献!の面接の嵐、それに二語の成り立ちやら旅人算やらもう何年振りのSPIの勉強に疲れ果て、大好きな作家の真っ青な表紙を開いたのだった。 というのも、ここらで読んでおくかと読んでいた『ユダヤ人大富豪の教え』、 そこでゲラー氏から言われた言葉に従ってみようと思ったのだ。 さ

          『なんとかしなくちゃ。青雲編』恩田陸

          『スキマワラシ』恩田陸

          成人男性の語り手や主人公は彼女の作品にしては少々珍しいのではないだろうか? と感じたのは、その前に「なんとかしなくちゃ」のを読んでいて梯家の末娘に親しんでいたからかもしれません。 思い返してみると、『maze』『ブラックベルベット』の神原恵弥くらいではないか? 彼は成人男性とはいえ、、な人物だし。 あとは『黒と茶の幻想』もそうだったっけ? とっても多作な方なので、私が印象に残っている作品では少ない、というだけなのかも。 とにかく『スキマワラシ』は主人公が結構メタ的にぐ

          『スキマワラシ』恩田陸