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『スキマワラシ』恩田陸


成人男性の語り手や主人公は彼女の作品にしては少々珍しいのではないだろうか?
と感じたのは、その前に「なんとかしなくちゃ」のを読んでいて梯家の末娘に親しんでいたからかもしれません。

思い返してみると、『maze』『ブラックベルベット』の神原恵弥くらいではないか?
彼は成人男性とはいえ、、な人物だし。


あとは『黒と茶の幻想』もそうだったっけ?

とっても多作な方なので、私が印象に残っている作品では少ない、というだけなのかも。

とにかく『スキマワラシ』は主人公が結構メタ的にぐいぐい喋る。
これは『なんとかしなくちゃ』にも通じていて、(あっちは完全に作者が喋ってるけど)
最近作者の中で流行ってるのかしら、と思ってみたりする。

さて、このグイグイ喋る主人公だが、主人公自身が怖がってる語りが強すぎて若干置いてけぼりをくった。
来るぞ〜来るぞ〜怖いよ〜〜、と言われすぎて、あれ?そんなに?と思ってしまうあれだ。
高校生の少女が語り手であるデビュー作『六番目の小夜子』は、読んでいるこちらが逃げ出したくなるほどの恐怖に引き摺り込まれたものだけど、、
単に私が歳をとったからでしょうか?

いまなお鮮やかな恐怖と青春の甘苦さを思い出す、六番目の小夜子

その分ライトに読めるし、建築や古道具、アートといった小道具や、ビジュアル面の想像を楽しめる作品でもある。

恩田陸にとって、「集合的無意識」は『月の裏側』以来常にテーマとして強くあるようだ。
『夢違』『愚かな薔薇』でも顕著だが、
どこかにはそのエッセンスが入っている気がする。

これも怖かった〜

この辺りはいま読んでいる別作者の作品でもちょうど出てきたので、読了したらまたその感想も書きたい。

しかし幻想を含む風景描写は相変わらず美しい。
アート作品から幻想空間に迷い込むシーンの、リアリティとファンタジーが入り混じった空気。
読んでいても、いま本を開いている自分のリアルと、本の中の虚構という構造が、そこにニ重写になったようで、小説の醍醐味と没入感を感じたシーンだった。


モノクロームの花々。
と、日本の暑い夏の時期、表紙の通り抜けるような青空と少女の白いワンピースの世界。
その対比。
目に沁みるようだった。



しばらく読んでいなかったら未読作品が溜まっていて嬉しい限り!

読んでいない本を余剰と感じるか負債と感じるか希望と感じるか、みたいな話があったけど
今の私にはとっても財産!

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