プラトンが、ナチズムや共産主義、民主主義を生み出すきっかけを創った?

これは私見だが、この人物が現れなかったら、果たしてヒットラーによるナチズムは生まれただろうか?一時、世界を席巻した共産主義が生まれたかどうか?さらに、民主主義も現在の形で普及できたかどうか。そんなとてつもない影響を与えたと私が考える人物がいる。その名はプラトン。

プラトンはその著作「国家」で、とんでもない構想を打ち出した。国をデザインするという大胆な発想。
今の私達から見ても、国家みたいな巨大なものを個人がどうこうできるとは思えないだろう。しかしプラトンは驚くべきことに、国家は人間の力でデザインし得ると考えた。

プラトンは、ソクラテスのような優れた哲学者が国を支配したら、理想の国家になるに違いない、と考えたようだ。この発想は、姿は違えどヒットラーによるナチズムとどこか似通う。ヒットラーは超優れた指導者であり、それに率いられる国家は理想的なものになる、という幻想を振りまいた。

マルクスの提案した共産主義もどこかしら似通うように思う。共産主義では指導者を想定はせず、労働者が共同で運営するという構想なのだけど、国家を人間の力でデザインするという根底の発想は、プラトンから借用しているように思われる。

現実には、共産主義はレーニンやスターリンなど「優れた指導者」とされる人物に支配される形をとった。これも、優れた人物が国家を支配するというプラトンの発想を借りているように思われてならない。

民主主義は、フランスの革命をきっかけに生まれたものだけど、その前にルソーが「社会契約論」で、民主主義の仕組みを提案していた。西欧には当時、王様の支配する国家ばかりだった。王様が国を支配するのは神様から与えられた権利なのだとする王権神授説が信じられていたくらい。

なのにルソーはどうして民主主義を構想し得たのだろう?やはり、プラトンが国をデザインし得る、という発想を生み出していたことが大きかったのではないか。
国のあり方はなりゆきで生まれたり、神様に愛された王様が支配者になるのが当然と考えられた時代に、人間が国をデザインするなんて。極めて大胆な発想。

プラトンはどうやって大胆極まりないこんな発想を思いつくことができたのだろう?それは恐らく、プラトンの暮らした都市アテネのライバル都市、スパルタに伝わる伝説的人物がヒントになっているのだろう。その名はリュクールゴス。

リュクールゴスは、それまでスパルタに存在した伝統や風習を全て改め、強い兵士を生み出すための国家に作り変えたとされる伝説的人物。この伝説をヒントに、プラトンは国家をデザインできると発想することができたのだろう。

リュクールゴスをヒントに、国家をデザインし得るという発想は、後にもう一つのとんでもない発想を生み出す。デカルトによる合理主義。
デカルトの著作「方法序説」にも、リュクールゴスの伝説が取り上げられている。そして、国をデザインできるように、思想もデザインできるとデカルトは考えた。

当時、西欧の人々はキリスト教に支配されていた。旧教(カソリック)と新教(プロテスタント)に別れケンカばかりしていたけれど、いずれにしろキリスト教。それ以外の発想はしようがなかった。しかしデカルトはプラトンの構想を思想界に借用した。思想をゼロから再構築し、デザインしてしまおう、と。

デカルトのこの発想は、人々がそれまで信じていた宗教や思想を根底から疑い、デザインし直すという発想を生み出した。こうした思想界での革命が、ナチズムや共産主義のような大胆な発想を生み出すことを助けた可能性がある、と私は考えている。

プラトンと言えば、少し詳しい人ならイデア論を思い出す人が多いように思う。しかしイデア論が人類に与えた影響は、わかりにくい。わかりにくいのにイデア論ばかり紹介しても、プラトンが何をした人なのか、なぜ歴史に名を残しているのか、理由がわかりにくいように思う。

特に歴史に詳しくない人でも、プラトンという人物の影響力の大きさを知ろうと思ったら、「国家」という著作のことをとりあげた方がわかりやすいように思う。プラトンの「国家」は、国を人間がデザインできるというトンデモ発想を生み出し、それが今の国家体制を生み出している。

現代人の多くは、もっとマシな国にすることができるのではないか、と考えることができる。そんな「大胆な」発想を普及させたのも、プラトンの大胆な発想によるところが大きいように思う。

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