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結局、ハラスメントを跳ね返せる方法とは……その4

シリーズの4回目になります。
一回めはこちら。

そもそも人にあれこれイチャモンをつけて攻撃する理由とは何でしょうか。

相手が落ち込んでいる姿を見るのが嬉しい、というのはかなり悪質ですが、大抵の人は、「すいません」と言って欲しいだけのような気がします。

自分がいつも謝っている、上司に、クライアントに、いつも頭を下げている、そんな日頃の憂さ晴らし。だから、反論できない相手を攻撃して謝罪させたい、その為にはどんなことでも理由になるという、今回はそんな実例をご紹介します。

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ケースその4〜万引き被害にあって……

お店にとって高額商品をいくつも万引きされることはかなりの痛手です。店長自身も上からキツく咎められるようで、そのせいなのか、他の店舗で盗難被害があるとかなりうるさく、犯人の顔写真が印刷されて貼り出されます。

店長
「近くの〇〇店で被害がありました。写真を見て犯人の顔を覚えるようにしてくださいっ」

そう言われてもAIじゃあるまいし、不明瞭な防犯カメラの映像のスクショを見ただけで覚えられるはずがありません。犯人を認識できないまま、数日後、不幸にも盗難の被害に遭ってしまいました。その時にレジにいたのはハルさん。苛立った店長から「どうして犯人に気づけなかったのか」と問い詰められました。

店長
「このレジがなぜ出口の方向を向いているか、分かりますか?」
ハル
「お店から出ていく人が見えるように……」
店長
「そうです、不審者に気づく為です。会計をせずに出ていく怪しい人物を見つけたら、レジにいる人が真っ先に気づかなきゃいけない。これだけ言っているのにまだ覚えられませんか?」
ハル
「すいません、でも……防犯ゲートを設置した方がより防げるのではないかと思うのですが……」
店長
「それは会社が考えることで、今話しているのは個人の責任についてです。自分ができる努力を怠ったから被害に遭ったんですよね
ハル
「はい、すいません」
店長
会社の利益を減らさない為に、もっと本気で注意していきましょう


最後まで強引に押し切られていますが、ここでは誤前提暗示とカチッサー効果が使われています。

まずは、誤前提暗示
「レジが出口の方を向いているのだから、レジの人が気づくべき」という前提のもとに、「盗難を防ぐ努力をしなかった」と非難されています。しかし、これは、前提そのものが間違っています。

レジに立つ人がどんなに努力しようと、盗難被害を防ぐことはできません。人の目はあくまでも補助的なもので、本気で防ぐには、防犯タグを使用する、ブザーのなるゲートを設置する、カメラの台数を増やす、店内放送で私服警備員が巡回していることを知らせる、などの対策が必要です。

それを行わずにスタッフを責めるのはかなり理不尽。しかも正当性を増すためにカチッサー効果も使われています。

カチッサーとは「もっともらしい理由があると受け入れてしまいやすい」という心理的な効果のことです。この場合は「会社の利益を減らさない為に」という理由をつけることで、「もっと本気で注意していきましょう」という言葉が受け入れられやすくなっています。

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どこまでがパワハラでどこまでがそうでないのか。
その基準は曖昧ですが、一方的に自分が悪いと責められ、謝らされるのはツラいものです。
職場に限らず、友達や夫婦、親子や先輩後輩といった関係においても、気がつかないうちにやり込められているのはよくあること。こうやって文字にしてみると、様々なテクニックがいくつも使われていることにビックリです。

人は無意識に自分が人に言われてきたことを真似るそうですが、みんな多かれ少なかれ、人から責められることを経験しながら育ちます。ということは、人を攻撃するのが上手い人は、それだけ沢山攻撃されてきたということなのでしょうか。

それなら、とりあえずはねぎらう気持ちで「すいません」「そうですね」と言うのが一番なのかもしれません。

本には書いてありませんが、私の個人的な経験から言わせてもらえば、理屈に対しては冷静に返すよりも、「すいません」「そうですね」とわざとらしいくらい感情を込めて演技するくらいが丁度いいのではないかと思います。

少し大袈裟に「そうですよねえ〜」「ほんと、すいませ〜んっ」くらい、明るく演じ切った方が気持ち的にはお互い楽な気がします。

その為には、どこまで自分と切り離せるのかがポイント。

決して同情しないこと。
迷惑をかけたなどとは思わないこと。
イライラしているのは相手であって、あくまでも「相手の問題」として捉えること。

それこそがまさにスルースキル。
しかし、どうすればそこまで他人事として捉えられるのでしょう。それは、

相手の言葉に対して感想を持たない

「どうしてこんなことを言われなきゃいけないんだ」
「そっちこそ問題ありだろう」
「自分は悪くない」
という気持ちが湧き上がってしまうと、相手の攻撃をまともに喰らってしまいます。

反論してしまうと「攻撃を跳ね返そうとする働き」が生まれて、自分が苦しくなってしまうのです。

とにかく距離を取る

実際にやってみて効果があったのは、相手との間に見えない分厚い壁を作り、「私は守られている」と繰り返したり、「バリアー、バリアー」と心の中で唱えたり。
大きな壁は攻撃も感情もシャットアウトしてくれるという意識で、言葉の意味を考えず、自分の呼吸や足の裏に意識を向ける。

それでも刺さってくる場合は自分の中に問題があるので、家に帰ってからしっかりと向き合います。それが自分の弱点でありとトラウマであり、人に言われたくないことです。

決して無視できない問題なので、心が痛くてもじっくり向き合って、何度も手放すしかありません。具体的には、手のひらの中にその感情を入れてポトンと下に落とす、を繰り返します。
表面化するとしばらくは何度もしつこく頭の中に浮かんできますが、そのうち消えてくれます。

トラウマについての話はこちらの記事に詳しく書いているので、興味があったら読んでみてください。

次回はいよいよ最終回です。







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