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ギャンブル依存症の特徴。そして、人はなぜギャンブルに熱中するのか?

一週間から日本国民とアメリカ野球界で目下の話題となっている「ギャンブル」。今回は「ギャンブル依存症(ギャンブル障害)」について考えていきます。

そもそも「依存症」とは?


「依存症(英語では”addiction”といいます)」は、特定の物質や活動に対して強い執着や衝動的な欲求を持ち、それらをコントロールすることが困難となる状態を指します。生活に支障をきたし、健康や社会的関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
依存症は大きく2つに分けられます。

①物質依存症

アルコール依存症、薬物乱用(覚せい剤、コカイン、大麻など)、ニコチン依存症(喫煙)など。
物質依存症は、身体的な依存や耐性の形成、離脱症状の発現などの生理学的な変化が伴います。

②行動依存症

ゲーム依存症、インターネット依存症、ギャンブル依存症、性依存症、摂食障害(拒食症、過食症)、仕事依存症など
行動依存症は、特定の活動や行動に対する強い欲求や依存が生じる状態。
その行動や物質に対する強い欲求や衝動が生活の中心となります。

どこからが依存症?

ギャンブルをしている人はたくさんいますが、依存症はどこからなのでしょうか?
アメリカ精神学会による精神疾患の診断・統計マニュアルの最新第5版(DSM-5)では、ギャンブル依存症を「ギャンブル障害」として扱っています。以下がギャンブル障害の☑項目です。

「ギャンブル障害」かどうかのチェック

□ より強いスリルを求めて、賭け金を増やしたいと思う
□ ギャンブルに行けないことでイライラしたり怒りっぽくなることがある
□ ギャンブルを減らそう、やめようと努力してみたが、結局ダメだった
□ 自由なお金があると、まず第一にギャンブルのことが頭に浮かぶ
□ 不安や憂うつな時に、よりギャンブルをしたいと思う
□ ギャンブルに負けた分を取り返そうとして別の日にギャンブルをする
□ 家族に嘘を言って、ギャンブルをすることがしばしばある
□ ギャンブルをすることで、人間関係、仕事、学業に支障を来した
□ ギャンブルをするために、借金したことがある

過去 12 ヵ月間で上の4 個以上に該当する場合は、ギャンブル障害である可能性が高いと考えられる
(国立研究開発法人日本医療研究開発機構「ギャンブル障害の疫学調査、生物学的評価、医療・福祉・社会的支援のありかたについての研究」班 『標準的プログラム』より作成)


どんな人がなりやすい?

ギャンブル依存症を専門に治療している国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口先生の書籍によると、年齢や性別、性格としては、以下のような特徴があります。

ギャンブル依存症になりやすい人

年齢→ 40代が多く、30代より若い人も多い
性別→ 男性
性格→ 負けず嫌い、落ち着きがない、強迫的な傾向がある
行動→ 衝動性が高い、刺激を求めやすい、反社会的
環境→ 時間やお金の調整がしやすい
ほかに持っている病気→ アルコール依存症、ニコチン依存症、うつ病など

(樋口進 監修「ギャンブル依存症から抜け出す本」2019年 講談社より引用・作成)

ギャンブル依存になりやすい人格とは?

ギャンブル依存になりやすい人格も研究で指摘されています。
「Big Five(ビッグファイブ)」という、人間の性格を5つの特性で表す理論があります。
Big Five の1外向性(社交性)、2調和性(親切さ)、3誠実性(責任感)、4情緒安定性(不安)、5開放性(好奇心)という5つのうち、「調和性(親切さ)」と「誠実性(責任感)」の2つがギャンブル依存と関係しているという指摘があります。元々の気質が、ギャンブル依存症となる原因のひとつになることもあるということです。

「誠実性」が低いタイプの人

ギャンブル依存症は、短期的な報酬を求める行動のひとつで、そのリスクや後果を考えずに行動することが特徴です。誠実性が低いと、自己制御や責任感が弱く、衝動に抵抗できず、短期的な快楽や興奮を求める傾向があります。

「調和性」が低いタイプの人

ギャンブル依存症では、噓をついたり、身近な人と対立したりと、対人関係がうまくいかないことが多くあります。
調和性の高い人はそうした対人葛藤を引き起こすような依存的な行動を避けますが、調和性の低い人はこの逆で、対人関係において不適切な行動やコミュニケーションをとることがしばしばあるとされます。

(参考:高田琢 弘ほか「日本人成人におけるギャンブル障害傾向と Big Fiveパーソナリティ特性の関連パーソナリティ研究」 2020 第 28 巻 第 3 号 260–262)

ギャンブルに熱中してしまう理由

ギャンブルに依存しやすい人の特徴はわかりました。
しかし、そもそも人がギャンブルに熱中してしまうのはなぜ?
その理由のひとつとして、ギャンブルで起こる「制御幻想」というものが関係していると言われます。
制御幻想とは、「本来はコントロールできないことでも、自分のスキルと知識を使えばある程度コントロールできると考えること」です。

ギャンブルのほとんどは主催者が利益を生み出すために開催しています。本来、ギャンブルの参加者は運や主催者のコントロール下にあるわけですが、ギャンブルで参加者が何らかの行動をしたり知識を使うことで、その分良い結果を得られると考えてしまうのです。

パソコンのルーレットゲームを使った実験では、ルーレットを回るボールを自分のタイミングで止める指示を出せる場合と、自動で止まる場合の2つのパターンを設定した結果、ルーレットゲームの結果に差が出ないようにパソコンでコントロールしているにもかかわらず、指示を出せる場合により熱中したことが分かりました。(森川 和則ほか2010 日本認知心理学会第8回大会 口頭発表6より)

ギャンブル依存症の治療依存症の人との関わり方については、別の記事で👍ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます!


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