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認知症と糖尿病の関係


認知症は糖尿病と関係している?

認知症と糖尿病。この2つはどちらも、現代の日本で患者さんが非常に多いです。だとすると、この2つは関係しているのでしょうか?
認知症と糖尿病の関係を裏づけるデータがあります。高齢者(ほとんどが65歳以上)を糖尿病の人と糖尿病ではない人に分けてみたところ、糖尿病でない人と比べて糖尿病では、アルツハイマー病の人が1.54倍、血管性の認知症が2.48倍多いことがわかったというのです1)。
つまり、糖尿病の人は年を重ねると認知症になりやすいということ。断言はできませんが、このデータはメタ解析(複数の研究をまとめて分析すること)のもので対象人数も多いので結果の信頼度は高いといえます。

血糖と認知症の関係
の前に、血糖値の説明

糖尿病といえば血糖値。糖尿病が認知症の原因になるということは、当然のように血糖値が関係しているのではと考えますよね?この疑問にこたえる研究があります。
が、その前に血糖値の簡単な説明です。糖尿病の診断には「血糖値」具体的には、早朝や空腹時の血糖値が126 ml/dL、随時血糖(食事時間とは無関係に測定した血糖値)の値が200 ml/dLが糖尿病という診断の基準です。
また、~ml/dLという数字以外に「HbA1c」という概念も用いられます。HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)というのは、血液中の糖分と結合したヘモグロビンの一つで、特に血糖コントロールの評価に用いられます。HbA1cは、通常の赤血球の寿命(約2〜3ヶ月)の間に糖分と反応し、その割合は血糖値の平均値を示します。つまり、HbA1cの値が高いほど、過去数ヶ月間の血糖コントロールが悪かったということになります。HbA1cの単位はパーセントで、HbA1c が6.5%以上が糖尿病の基準とされています。

高血糖は、認知機能に悪影響!

それでは、具体的に血糖値と認知症の関係を研究から見てみましょう。糖尿病の高齢者の方のデータを7年間追ってみると、平均血糖値が190ml/dL以上もある方々では、もう少し血糖値が低い方々(平均血糖値が160ml/dL程度)よりも認知症になるリスクが1.4倍高いことが分かりました2)。
HbA1cについても似たような研究があります。HbA1cが7.0%以上ある人では、HbA1c7.0%未満の方と比べると、9年後時点で認知機能が下がっている(具体的には注意や情報処理の速度、物事を実施するための速度が低い、など)ことが分かりました3)。

え…?
低血糖でもダメ…?

血糖値の高さは認知症への道に通じる。それはわかった。でも、実は、逆に低血糖であってもダメ、というデータもあります…。
高齢者糖尿病を12年間の追いかけたところ、一度でも重症低血糖(回復に他の人の助けが必要な低血糖で、60 mg/dL 未満が基準です)になったことがある人は、重症低血糖に一度もなったことがない人の2.1倍も認知症発症リスクが高かったというのです4)。
しかも、認知症になると「認知症になった後に低血糖になる」という逆のリスクも1.61倍高いというデータもあります5)。つまり、糖尿病(とそれに伴う重症低血糖)と認知症はお互いが負の連鎖を起こしかねないということです。

糖尿病にならないこと
なっても、血糖コントロール!

以上から、糖尿病は認知症のリスクですので、糖尿病にならないことがまず重要といえます。そしてなったとしても血糖値をしっかりとコントロールすることが大切のようです。高いのはもちろんNG。低すぎてもNG。
糖尿病の方が血糖値をコントロールするには、治療薬、運動、食事などが重要ですが、これらと認知症の関係については、また別の記事で!

1)Cheng G et al. Intern Med J. 2012;42(5):484-91.
2)Crane PK. et al. N Engl J Med. 2013;369(6):540-8.
3)Yaffe K et al. Arch Neurol. 2012;69(9):1170-5.
4)Yaffe K et al. JAMA Intern Med. 2013;173(14):1300-6.
5)Mattishent K et al. Diabetes Obes Metab. 2016;18(2):135-41.

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