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普通学校か特別支援学校か2

今回は「普通学校か特別支援学校か」の続きになります。


なぜ医療的ケア児を普通学校に?

なぜ医療的ケア児を普通学校に通わせたいと親は考えるのだろうか?
理由は様々あるが、大きな理由が2つある。

我が子を地域に

1つ目の理由は「地域の友達と一緒に学校生活を送って欲しい」だ。
背景には親の切実な想いがある。
私が相談に乗ったあるお母さんは、
「今まで一緒に過ごした保育園の友達と離れてしまうのは可哀想。将来のことを考えても、地域の子ども達との関わりは必要」だと考えていた。
この考えは当然の考えだと思う。
親としては、親亡き後、地域の人たちとの繋がりがあると安心できるからだ。
特別支援学校は住宅地から離れている場合も多く、自分の地域から遠いことがほとんど。
そのため、親が送迎することになる。(通学バスは医療的ケア児は使えない場合が多い。)
また、登校や下校の時間が異なるなど、地域の子どもたちは特別支援学校の子どもたちを見かけることは少ない。
物理的にも時間的にも交わることが少ない。
まるで地域の子供達とは違う世界で生きることになるわけだ。

経済的負担

2つ目の理由は、経済的な問題だ。
医療的ケア児の多くは、親が車で送迎するしか移動手段がない場合が多い。
特別支援学校に通うとしてもそれは変わらない。
医療的ケアの種類にもよるが、基本的に通学バスを利用できないからだ。
親の身体的負担はニュースなどで見かけるが、経済的な負担についてはあまり知られていないように思う。
(自分の家の経済的状況をわざわざ話す人は少ないだろうから、当然と言えば当然だが)

では、どんな経済的な負担があるのか、具体的に考えていこうと思う。
まずは、医療的ケア児の預け先がないことによる退職だ。
例えば私の家庭の場合、妻が退職をした。
共働きだったので、単純に同じ年収だとすれば、これだけで、世帯収入は半分になる。
フルタイムはできなくとも、バイトなどですこしでも収入を補填できるのでは?
と思われるかもしれないが、ほぼ不可能である。
可能性があるのは、在宅ワークだろう。
しかし、それができるスキルを持っていることが条件になる。
おそらく、ほとんどの人はスキル習得からはじまることを考えると、やはり、ほぼ不可能だろう。

次に、医療的ケア児のケアにかかる諸費用だ。
子どもの状態によって差が大きいが、何かとお金がかかる。
例えば、子どもが車椅子で、ケアに必要な荷物が多い場合は、福祉車両を購入することになるだろう。
車の購入の際に補助金はない。
中古車を購入すれば費用を抑えられるが、それでも10万20万で買えるようなものではない。
当然新車であれば何百万円とかかる。

福祉用具もタダではない。
正確には、補助金が支給されるが、補助金内で収めようとするとあまり使い勝手のいいものを購入できなかったり、そもそも支給対象でないものがあったりする。
実際に私は、物によるが数万円〜数千円を何だかんだで都度払っている。

医療的ケアに使う物品も病院でもらうことができるが、必要な物すべてをもらえるわけではない。
例えば、気管切開部に挿入しているカニューレを固定するバンドは、一本千円近くする。
節約しようと一本1ヶ月ほどの期間使ったこともあるが、バンドが外れやすくなり危険だったりする。(バンドが外れるとカニューレが外れ、呼吸出来なくなる)

他にも入院の差額ベッド代(もちろん個室でなければかからない)や付き添いでかかる費用、利用する施設への交通費(多くの家庭は利用する施設や病院が近くにはない)など、あげればキリがないが、医療的ケアや障害があることでかかる経済的負担が多くあることは伝わったのではないか。

逆に障害があるためにもらえる手当もある。
長くなるので詳しくは書かないが、私の子どもは最も重い障害と認定されていて、障害があることで受け取ることができる手当の最も多くをもらっているはずだ。
しかし、トータルをするとマイナスの方がはるかに多いのだ。

少々話が逸れてしまったが、経済的負担の中で一番の損失は働けないことによる収入減である。

となれば少しでも働く時間を確保しなければならない。
今後普通学校で医療的ケア児を受け入れていく環境が整ってくると仮定したとき、
片道1時間かかる特別支援学校か。
片道5分の普通学校か。
どちらを希望するべきだろうか。

次回は、制度の壁についてを投稿します。

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