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大学受験で引けを取らないHigh Tech Highのリアルな大学進学事情

High Tech Highの大学進学事情

アメリカでは、3月から4月にかけて多くの大学の合格発表があります。春休み明け初日。High Tech Highの二人の生徒から、合格発表の連絡をもらいました。

Aくんは、ダートマス大学、UC Berkeley、UCLA (Los Angels)に合格!
Lさんは、ハーバード、スタンフォード、イエールに合格。。。いずれも超名門校で、2024年世界大学ランキングでは以下の通りです。


世界大学ランキング2024

そして二人とも、どの大学に進学するか迷っているそうです。Lさんは、ハーバードとスタンフォードで迷っているそう。この気持ちは比較的想像しやすいですね。

先月行ってきたスタンフォード大学

興味深いのはAくん。第一希望がダートマス大学、2番手にUCLA、3番手にUC Berkeleyで迷っているそうです。おもしろいのは、世界大学ランキングの低い順なんですね。よくよく話を聞くと、ダートマスやUCLAでは彼が最も興味のある「Technology × Linguistic(言語学)」を同時に学べるそうです。

一方、UC Berkeleyはその圧倒的倍率の高さから、彼は倍率の低いStatistics(統計学)の専攻で受験して合格したとのこと。倍率が高いのも当然で、UC Barkleyは公立校として全米No.1の超絶名門校で、孫正義さんの母校としても有名です。しかし、世界大学ランキングという世間的に一番高い評価には目もくれず、彼は自分の学びたい学問を優先したいとのことでした。

この2人以外にもヒアリングをしてみました。もちろんHigh Tech Highの全生徒がこれほどのトップ校から合格をもらうわけではありません。第一志望の大学に、合格できなかったと話していた生徒もいました。実際の進学先として多いのは、UC San Diegoやサンディエゴ州立大学です。研究も盛んで、サンディエゴで人気の公立大学です。

まとめると、このようになります。

①High Tech Highの大学進学率は98%
②多くの生徒が地元で人気の公立校に進学する (30~50%ぐらい?)
③一部の生徒は世界トップ大学に進学する (5~10%ぐらい?)
④世間評価だけではなく、自分が学びたいことを重視して進路を決める生徒が多い

*大学進学しない生徒は、militaryに入ったり専門学校に進むといったケースが多く、いずれも生徒の意思が尊重されます。
*②と③の割合は、大まかな感覚です

この環境を僕の故郷である京都で無理やり例えると、こんな感覚でしょうか。

100人の卒業生がいれば、
2人が、専門学校や自衛隊などの道に進み、
98人が四年制大学や短大に進学する。

50人ぐらいが、京都府立大や立命館などから合格をもらい、
15人ぐらいが、京大や阪大などから合格をもらい、
5人ぐらいが、ハーバードやスタンフォードなど、世界トップ校から合格をもらう…

でも、最終決定は世間体ではなく、自分の心を信じる。

(*日本とアメリカでは教育文化があまりに異なるため、この例えには少々無理があります。笑)

大学合格を最優先事項におく進学校ならともかく、卒業後の人生も見据えたProject Based LearningにフォーカスするHTHで、この実績を作れるのってすごくないですか!?公表データとして大学進学率が高いことは知っていましたが、僕はかなり驚きました。

選択肢を持つ力と自己選択する力

ここからは僕の持論になるのですが、、、
学歴が重視されすぎる社会は徐々に変わっていくべきだと思いますが、時間はかかるでしょう。この過渡期では、「選択肢を持った上で自己選択できる力」が重要だと考えています。

大学進学にしても、仕事選びにしても。複数の選択肢を持つことは豊かなライフスタイルを築く上でとても大切です。一つのことを突き詰める職人的な生き方はとてもかっこいいですが、日本ではこの美徳文化が少々度をすぎてると感じることもよくあります。(例えば、スポーツ選手がビジネスをすると批判が殺到したり…)
同時に二つの選択を取ったり意思決定直前まで常に複数の選択肢を持つという、この生き方にモラルが無いと言われる文脈がもしあるとすれば、それは”結婚”ぐらいで十分なのではないでしょうか?(笑) 
(もはやこの考えさえ、時代とともに変わっていくのかもしれませんが…)

例えば起業する人も、サブプランはあった方がいいと思います。どこにも就職することが難しいという状況で起業をするのと、自分の興味がある企業や公務員としても働けるという選択肢を持った上で、起業するのでは精神的安定度が全く異なってきます。反論する人も当然いるでしょう。「他の全ての選択肢を絶つ背水の陣こそ起業のコツだ。起業したいなら大学は中退しろ」という一部の起業家の極論も全く分からなくはありません。しかし100人が背水の陣に挑戦した時、この綱渡りを成功させる人が何人いるでしょうか。社会全体の幸福度が上がる方法とは思えません。

ちなみに僕自身は起業する際に、教員免許を持っていたことは大きな心の支えになりました。仮に事業がうまくいかなくても、自分のもう一つの夢であった先生になることもできる。路頭に迷うことがない安心感があったからこそ、自分の事業にフルスイングすることができました。
(ちなみに、コロナで留学事業がどうしようもなくなった時、このおかげで数学教員として働きながら生活ができました!)

一方、自分も当事者なのでよく分かりますが、複数の選択肢を持つこと・選ぶことは簡単ではありません。人生のその一瞬においては、誰かに選んでもらう方が楽だと感じることもあります。でも長い人生で見ると必須能力でしょう。

人生の節目節目で、

  • 興味のある選択肢を複数持つ視野の広さと好奇心

  • その選択肢へ進むチャンスをつかむ力

  • 自分の心を信じて選択する力

これらの必須スキルの習得は、誰もが自然にできるわけでもないので、練習が必要です。High Tech Highでは、日々のProject Based Learningの中で、この力が培われているのだと感じます。
テーマに沿ってどんなプロダクトを作るのか?複数のデザイン案を作って、共同批評をし合いながら最後は自分で決定をする。そんな経験が日常の至る所にあります。

HTH生徒による複数のデザイン案

そして、アメリカという国での学歴社会という現実も見た上で、大学受験で戦えるサポートも行っており実際、進学率は高いです。

また、ハーバードやスタンフォードのような極めて入学難度の高い大学への合格者がいることも、大きな意味を持っています。もちろん単純に偏差値が高いから、有名だから、という理由ではありません。生徒たちがどうしても研究したいことを追求していくと、「スタンフォードの○○教授のこの研究アプローチがおもしろい!」みたいなことは起こってきます。そんな時「私なんかがスタンフォードなんていけるわけない、、、」となるのか、「だったらこうしてみれば…!?」となるのか。その分かれ道として、身近な友達や先輩に実際にその道に進んだ人がいるかどうかは大きな影響を持ちます。

High Tech Highに焦点を当てたドキュメンタリー映画、Most Likely to Succeedの中では、「PBLで大学に進学できるのか!?」という問題提議がされます。実際、開校まもない頃ほどHTHでもこの課題感は大きかったようです。2024年の今、HTHは進学のために極めて有利な学校と思っている先生や生徒はあまりいないように感じます。その一方でHTHだから、PBLしかしてないから、大学受験が不利だ、と感じている人もあまりいないように感じます。

2000年という、Project Based LearningのPの字も知られてなかった世の中で、革新的な学校を作ったHigh Tech High。今では16キャンパスで6000人の生徒が通い、毎年数千人の教育者が世界中から視察に訪れます。昨日はハワイから。今日はデンマークから20人ほど先生や校長が視察に来ていました。熱心にいろんな質問がされますが、卒業後の進学事情についての質問はとても多いです。

デンマークからの視察者

HTHの先生の中には、「そもそも大学受験のシステムは好きじゃないんだけどね」と苦笑いする人も少なくはありません。その前置きの上でも、生徒たちが豊かな人生を歩んでいくことを願って、今できる最高の教育を作り続ける。日々改善を続ける。こんな挑戦を24年間も続けてきたからこそ、High Tech Highは今も世界中の教育者を魅了し続けているのだと感じます。

1年弱ほどHigh Tech Highにどっぷり使ってみて。自分が日本で新しい学校を作るなら、、、
極めて進学に有利な学校にはあまり興味がありませんが、情熱次第でどんな未来にも進みやすい学校にはしたいと強く思います。

  • さまざまな進路を考える幅広い視野と好奇心

  • 進みたい道に進むための知識や技術

  • 最後は、自分の心を信じて意思決定できる力

これらを育めるような学校にしたいです。心から、学びたい大学に進める、働きたい場所で働ける、作りたいものを作れる。そんな人生の自由度を高めることに貢献したいです。

留学終了まで、残り約1ヶ月。最後の1日までありったけのことを学び続けたいです!!

P.S.
先日のDeeper Learning Conferenceで、High Tech Highの創設者と知り合えました!今週末は、彼のオフィスに訪問して、じっくりと創業秘話を聞ける機会をいただきました。楽しみすぎます!!


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