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書評:ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』

ロマン・ロランの描いた真に強き人間の姿とは?

今回ご紹介するのは、フランス文学よりロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』。

本作は、主人公の音楽家ジャン・クリストフの苦難と闘争に満ちた波乱万丈の人生を描く壮絶な物語である。

全編がヒューマニズムに彩られた高貴な作風を特徴とする。こうした作品に出会うかどうかで人生の深みが変わるだろうと思える程に、必ずや読者の人生の滋養となると確信できる作品だ。私はこの作品に出会えたことに感謝している。

ジャンの人生は正に不幸の連続。孤独、裏切り、失恋、貧困、病苦と、彼の背負った不幸を数えたらキリがなく、また成功も名誉もない。

それでも彼は音楽という表現に憑かれひたすらに表現に生き続ける。

人間の強さとは何か?
成功や栄達がその人の強さを裏付けるのか?

この作品から私が感じたのは、「負けない人こそが真の強者」という一つのテーゼであった。

どんなに苦しくどんなに不幸でも、生き抜くジャンの姿は間違いなく強き人間のそれだと感じられた。

何があっても折れない心。それをどうやって手にすればいいのか、それはわからない。ただこの作品においてヒントとなるは、ジャンの心に沸々と燃え続ける「表現への情熱」ではないかと思われた。

彼にとっての表現。それは正に彼の生き甲斐そのものである。

これを普く一般に敷衍するならば、「使命」を確信することに強き心の根幹があるのかもしれない。

自分は何のために生まれてきたのか?
自分は生涯で何をなすのか?

これ自体難問中の難問だ。

しかし答えは与えられるものではない。自分で決めるもの。否、自分で決めていいもの。正にジャンがそうである。

自らの使命を決めた時、人は本当の強さ、負けない心を備えることができるのではないか。ならば、人生の意味を問いもがく過程は、迷いの中にあるようで、実はそれ自体が強き人生に近づく高貴な挑戦なのかもしれない。

世に「不惑の四十」と言う。私はまだ「困惑の四十」だろうし、もしかしたら「誘惑の四十(誘惑に弱く、何なら若干誘惑されたい)」かもしれず、時折自分が情けなくなる。

そんな感傷に耽る時、本作を思い出す。未だ自分に自信がなくとも、そんな不安に負けなければ大丈夫だ!

私を強く、そして温かく励ましてくれる。そんな作品である。

読了難易度:★★★★☆(←長い!)
人の強さを考えさせてくれる度:★★★★★
主人公の心が強すぎて軽く嫉妬度:★★★☆☆
トータルオススメ度:★★★★★

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