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陰謀論と信仰(其の一)

こんなことを言うのも恥ずかしい話なのだが、筆者は2020年のアメリカ大統領選以降、約1年にわたりコロナワクチン陰謀論にドップリだった。
Qアノンというたちの悪い欺瞞に始まり、一部のクリスチャンの間でまことしやかに囁かれていた「コロナワクチン=獣の刻印」説、そして様々な有害事象の「噂」に至るまで。
時系列にするとそんなところだろうか。

感謝なことに、今では健全な福音派の牧仕や教会に出会い、これらの陰謀論から距離を置くことができた。
これらの陰謀論がどのような弊害をもたらすのか、そしてどのようにしてこれらの言説から離れることができるのか。
自分自身の経験もあわせて振り返りながら、検証してみたい。

マスメディアは嘘つきだ!

これは陰謀論者達がニュースを語るときの常套句である。
ドナルド・トランプがオールドメディアのことを散々「フェイクニュースだ!」とこき下ろしていたのを覚えている方も多いと思う。

陰謀論を信じる人たちの大半はこれを大前提に物事を見聞きし、その前提に基づき情報源となるソースも取捨選択しているのだが、実はこれが彼らの情報収集能力において致命的な欠陥となり、今やその欠陥を突いた形で、ロシアのプロパガンダ戦略における好都合なターゲットにすらなってしまっている。

2月24日に、ロシアがウクライナ領土にミサイルを撃ち込み始めて以来、今までQアノンを信奉し、コロナワクチン陰謀論をSNSで拡散し続けてきたような人たちが一斉にロシアのプロパガンダを拡散し始めたのだ。

Twitterでの彼らのツイートは、在日ロシア大使館アカウントによる「大本営発表」のそれと酷似しているものばかりで、その内容も一貫性がなく、日を追うごとに言うことがコロコロ移り変わっていくという有様だった。
例えばこんな感じで・・・

ウクライナ侵攻なんて起きてない!キエフは平和そのものじゃないか!
(と言って数年前の街の風景を添付したり、まだ攻撃を受けていない地域の写真を添付したり)

が、

(どっかの病院がミサイル攻撃されたニュースで)
あれはセットで撮影されたもので、写っている人は全員クライシスアクターだ!
(と言ってある被害者個人を「クライシスアクター」と称して晒してSNSで袋叩きにし始めたり)

からの、

あれはウクライナ軍が親露派の住民が住む地域を攻撃しまくってるんだ!ウクライナは極悪非道の酷い奴だ!

って言ったと思えば

あの幼稚園にはディープ・ステートの研究施設があって、あそこで生物兵器を製造しているから、プーチンはそこを狙ったんだ!

とか、あとは露側に捕虜にされたウクライナ人が、スマホのカメラの前でウクライナの悪口を半強制的に言わされているビデオを引き合いに出して「ほらウクライナ市民はウクライナ軍にこんな酷い目に遭わされて、ロシア軍に感謝しているじゃないか!」とか、
まぁとにかく言うことが支離滅裂で滅茶苦茶なのだ。

それも一部ではなく、元々ワクチン陰謀論を語ってたような人たちが一斉に同じことを言いだしたので、既にその世界から足を洗った自分からしてみても、それはそれは恐ろしい光景だった。

何故こんなことになってしまうのだろう?
先に述べた通り、彼らはマスメディアに対する不信感が異常に強いために、彼らが信頼し収集している情報源も著しく偏ったものになってしまうのだ。
それゆえに、様々な角度から俯瞰的に物事を見るということが出来なくなってしまい、頭の中も自分たちの持つ信念で凝り固まってしまうため、やがて異口同音に事実と真逆の主張をしだすのだ。

国内でも、何か事件が起きるごとに根拠のない「自演」「仕込み」説を語り出したり、それだけでなく報道された映像にたまたま映り込んだ一般人を「クライシスアクターの○○だ!」と一方的に決めつけて顔写真をSNSで拡散したり、その行動は常軌を逸するレベルにまで達している。
そもそも肖像権の侵害だし、失礼極まりない上に、下手したら名誉棄損・人権侵害レベルの行為だ。

これらのことを個人だけでなく、陰謀論者の支持を多く集める一部の新興政党も公然とやっているもんだから目も当てられない。

一歩下がって、多角的かつ俯瞰的な視点をもつ

何をそんな当たり前のことを。
と突っ込まれるかも知れない。
でも案外これ、できていない人が多い。

これは自分自身も猛省していることなのだが、ある特定のトピックについてあまりにも深入りしすぎて、且つ上述のように情報源が偏りすぎると、文字通り「沼」に嵌ってしまう。
そればかりかニュースで報じられているあらゆる出来事が嘘か、あるいは何か壮大な裏があるように思えてきて、疑心暗鬼に陥ってしまう。
客観的に物事を見ているつもりで、知らず知らずのうちに客観的な見方ができなくなってしまうことすらあるのだ。

そんなスパイラルに陥ってしまったら、どうすれば良いだろうか?

まずは一歩下がる。

自分の場合、ワクチンの話からだんだん距離を置くようになった。
これらの話題に関するRTや記事のシェアも段々減らしていった。
ウクライナ侵攻が起きてからは、前段でご紹介したロシアプロパガンダでTLが埋め尽くされてしまう事態に陥ったため、それらのアカウントを一斉にミュートした。

そして、ワクチン陰謀論に傾倒していない、かと言ってワクチン激推しでもない、中立的な、客観的な声に耳を傾けることにした。
自分の場合、中立的かつ客観的な目線で、聖書のレンズを通して世界情勢を語ってくれる福音派の牧仕さんに出会って、今まで目の前に被さっていた覆いが少しずつ取れていき、視界がクリアになった。
それと同時に、ワクチン話から遠ざかることで平安を得ることができた。

未だ自分は未接種ではあるが、周りはすでに2回、3回目接種は済ませている人が大半だ。
今行っている教会だって、恐らく90%位が接種済みだと思っている。
そんなことは今の自分にとっては、取るに足らないことになった。
長くなってしまうので細かい話は次回に取っておくが、今まで恐れていたことが実際に見てみるとその多くが杞憂であったこと、そして何より全てが神の摂理のうちにコントロールされていることを悟ったからだ。

ちなみに先般の安倍晋三元首相殺害事件に関しても、それに波及して話が盛り上がっている様々なカルト問題に関しても、今までお話ししたものと同様、掘れば掘るほど「沼」に陥ってしまう危険性を孕んでいるため、個人的にあまり深掘りはしないように心がけている。

(続く)

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