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ALL WE NEED IS LAUGH

今こそ書きたい、大好きなお笑いのことを。


私がお笑いを好きになったのは、中学生の時だった。

小学生の時にいじめを受けた影響で、中学校では人間不信に陥っていた。
「(学校に)行きたくない」「死にたい」が口癖で、家族ともよく衝突しては部屋に引きこもり、日記に愚痴としんどい感情を書きなぐる毎日。

楽しいとか面白いとか、そんな感情とは無縁だった。

そんなある日、なんとなく思い立って深夜にテレビをつけてみると、『THE THREE THEATER』という番組が放送されていた。数組の芸人が3つのシチュエーションでネタを披露するコント番組だ。

久しぶりにお腹の底から笑った。毎日枯れるほど涙を流していたが、笑って涙を流したのは何年ぶりだっただろう。

自分の中でずっと忘れていた、熱いものがこみ上げてくるような感覚になった。


その日から私は、お笑いというジャンルに興味を持ち、毎日欠かさず番組表をチェックするようになった。

中でも、『THE THREE THEATER』のゴールデン進出にともなって名前が変わった『爆笑レッドシアター』は特別に好きで、毎週指折り数えて水曜日を心待ちにしていた。この番組をきっかけに、私にとってお笑いは"なくてはならないもの"になった。


『爆笑レッドシアター』で好きになった芸人のことを調べていると、渋谷の∞ホールで開催されていた『AGE AGE LIVE』にたどりついた。

『AGE AGE LIVE』は、よしもとの若手芸人が昇格をかけてネタを披露するバトル形式のライブで、東京よしもとの登竜門と呼ばれていた。
毎日夕方に行われ、インターネットで生配信もされていたため、興味を持ったタイミングですぐに見ることができた。

当初は出ているほとんどの芸人を知らなかったが、誰がいつ売れてもおかしくないくらい、みんながみんな面白くて(実際に今ではテレビで見ない日がない人たちもたくさん出ていた)、劇場にはまだ世に出ていない面白い人たちがこんなにたくさんいるんだということを知った。

学校から帰ったあとに『AGE AGE LIVE』の配信を見るのが、毎日の日課になった。


そしてもう一つ、私にとって大きな存在となったのが『爆笑オンエアバトル(以下オンバト)』だった。

『オンバト』については以前にも書いたが、いろんな事務所の面白い若手芸人を知ることができる、とても貴重な番組だった。

『AGE AGE LIVE』や『オンバト』を見る感覚は、もしかしたらスポーツを見る感覚に近かったのかもしれない。

『M-1』や『キングオブコント』などの賞レースにも言えることだが、応援しているコンビが勝つ(ウケる)と嬉しいし、負けると悔しい。
「ネタが違えば行けたんじゃないか」とか「あのアドリブが見事だったな」とか、素人ながら分析してみたりもする。そのライブ感こそがお笑い鑑賞の楽しさの一つだ。

そしてなにより、彼らは目の前の人たちを笑わせることに人生をかけている。
大人が全身全霊でふざけて、本気で喜んだり悔しがったりしている。

そんな泥臭さにも、心を掴まれた。そこには、もしかしたら自分が学校や部活で味わえなかった青春のようなものを重ね合わせてしまっていたのかもしれない。

気が付けばどんどん"お笑い沼"に浸かっていった。
同時に、人を笑わせる仕事をとても尊敬するようになった。


いつしか私は、漫才やコントを見るだけでなく、自分でもやってみたいと思うようになった。
自分でネタを書いて、誰かを笑わせてみたい、と。

それから、ふとひらめいたことや友達との会話の面白かったやりとりをノートに書き留めるようになった。いわゆる"ネタ帳"だ。
中学から高校に上がるまでの2年くらい、そんなことばかりやっていた。

ネットを通じて、芸人になりたい同じくらいの年齢の人たちと繋がり、お互いのネタを見せ合って、「いつか一緒にやりたいね」なんて話したりもした。

中学生から高校生になり、高校生から大学生や社会人になって、当時の仲間たちはそれぞれの道を進んだ。私も、紆余曲折あって芸人になりたいという夢は諦めてしまった。
しかし、その当時の思いや経験は間違いなく、今noteを書いているこの瞬間にも繋がっている。


学生時代の私は、ずいぶん長いあいだ、学校と家がこの世のすべてだと思っていた。
そんなとき、こんなに楽しい世界もあるのだということを教えてもらった。

辛いときに笑顔をくれたことはものすごく心の支えになったし、大袈裟ではなく、生きる希望を与えてくれた。

そんなお笑いが、お笑い芸人が、私は大好きだ。




だから、彼ら・彼女らが、私たちに笑顔をくれるその裏で人知れず傷つかなければならないなんていやだ。

もちろんお笑い芸人だけに限らず、アイドルも、俳優も、みんなそうだ。

事務所やタレントを守る側の人たちには、「演者ファースト」であってほしい。
どんなときも「お客様ファーストだ」と言ってくれる演者のことを、どうか一番に考えていてほしい。


最近ずっと、どのチャンネルをつけてもこの話題ばかりだ。

世の中にはもっと重要なことがあるし、知るべきこともある。それなのに、こんなにもこの話題ばかりが優先的に報道されてしまうのは、やはりそれだけ国民の関心が高いからなのだと思う。

この問題の行く末を、自分自身や身の回りに置き換えて見ている人は多いはずだ。
特に私の同年代や若い世代においては、今回のことを政治よりもよっぽど自分に近い話として捉えている気がする。

元はといえば、疑惑と嘘から始まったこの問題。
最初はおそらくほとんどの人が他人事に感じていたが、あの会見を境に、芸能ニュースの枠では収まりきらなくなってしまった。

私は、最初の嘘と今の話ではまったく別の問題だと思っている。
長年隠されたり許されたりしてきたことが明るみに出るきっかけが、たまたまあの謝罪会見だったのだろう。

今、若手の人たちが不満を言うことにたいして眉をひそめる人もいるが、下の人たちが声を上げやすくなったのはとてもいいことだ。自分の進退をかけてまで訴え、そういう流れをつくった人たちはすごい。

ピンチは最大のチャンスだとも言える。
芸能界が、社会全体が、今こそ変わるべき時なのではないだろうか。

どうか、この問題でこれ以上誰かが傷つくことなく、演者のことを一番に考えた形で収束し、芸人にたいする「渦中の」というフィルターが一刻も早く外れてくれることを願う。

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