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月明かり 【詩】

日本の詩は
シベリアで生まれた
という説もあるようだ

タンタンタンと木魚を叩く
月明かりが悲しい

息をするだけで凍る夜
今日は三つの柩を運んだ

ペンペンペンと雑草をかじった記憶
月明かりが悲しい

わたしたちの眼は凍りついている
わたしたちの時間は止まっている

なぜこれほどの月明かり

届かない手紙を書いていると
故郷の薄墨色の月を思い出す
マスクをした兵隊が通り過ぎていき
100年前から
大統領恩赦を待っている捕虜たちの柩

カンカンカンと凍りついた足指をかじる
化石になった爪を鏡に映す

昨日
最後の樹木を切り倒した
木魚を叩く音が聞こえている

変に明るい月明かり

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