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暗黒日記Z #34 「実に夏であります」

セプテンバー。アースウィンドアンドファイアー。終わりかけの夏が死に体で酷暑している。去年はコバエを自分の部屋で累計軽く百匹は見たような気がするけど、今年は全然出なかった。違いは何かと考えると、多分寝てる間もエアコンをつけっ放しにしていたことだった。単純に熱中症で逝ってしまいたくなかったからではあったものの、おかげで羽虫らの繁殖を防ぐことにもつながったようで得した気分。電気代は倍近くなったし喉イッガイガにもなったから全然トントンと言えばトントンだが。一個人の幸福の総量は決まっているだとかナントカ言うロクでもない説を信じてしまいそうになるバランス感覚流石でごぜえます現世さん。来世に期待。

夏してるかと我が身に問えばしてるかボケとノータイムで返ってくることは必定。八月六日に『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観たのは夏っぽくもないこともなかったが。本当に全く狙ってなどおらず、その日も果たして私は今どの映画を観るのが最適解なのか知らんと小一時間悩み散らしてままよと最後に選んだのがかの作品であった。すずさんが小舟に乗ったあたりであれそう言えば今日はそうであったなあと無意識のうちに自分がどこかでそのことについて考えていたらしいことに気付いて妙な心持ちがした。映画についての感想は毎度のことながらFilmarksに投稿しているので適当に読んだり読まなかったりしてもらえたら嬉しかったり寂しかったりする。

夏と言えば私の場合マルボロのメンソールが季節に紐付けられていたりもする。西新宿の、その辺りのオフィスビルとしては等級は上の下といったところであったビルのワンフロアにある会社で働いていた頃のこと、ビル内はおろか周辺にも喫煙所は無く、愛煙家(事実ほとんどはただの惰性であったものと私は信ずるが)達はビルの脇の日もよく当たらない場所にさながら誘蛾灯に寄せられる虫けらどもがごとく集まって毒を身体に取り込んでいた。吸い殻は、流れ切らなかった雨水なのか何なのか、何故かずっとその場に留まり続けている水があるちょっとした溝のような場所に皆が捨てていた。ひどいと思いながらも私もそれに倣っていたのだが、ある日、いつものように煙草休憩をしていると、掃除夫の老人からお叱りを受けた。周りには他にも大勢のマナー違反者がいたというのに何故か私だけが彼に訥々と説教をされ、釈然としない思いを抱えながら確か私は吸い殻を残りのまだ火をつけていない数本が入っているポケットの中の箱に戻し、律儀にも家に持ち帰ってゴミ箱に捨てた。当時は二十二、三でなかなか強いトラウマのようになっているせいか細かく覚えてしまっているのだが、ダンディ坂野もかくやという真っ黄色のワイシャツをその時私は着ていた。今まで身に着けたことの無い色を、と考えてH&Mで買った一枚だったことまではっきりと覚えている。一応まだ手元にはあるが、もう何年も着ていない。苦い記憶と共にあるからというつもりでは無かったが、本当のところはそれが理由かもしれない。思えばそのシャツを買った頃を最後に服というものを長いこと買っていなかったけれど、昨日決心してジーンズ……私の中であれは「ジーパン」であって「ジーンズ」なんて洒落たものでも況んや「デニム」でなどある訳がないのでここはジーパンで通す、そう、ジーパンを買っていたく気に入っているので、これを機に服を揃えていきたい。お気に入りの物を身に付けることの楽しさを久方ぶりに思い出せた。

物的幸福。その追求。いつかも書いた気がするが改めてそれをしていきたい所存。元来形に残らないものより残るものをこそ欲していたはずなのに年々そこの優先順位の逆転現象が悪化の一途を辿っている。そのうち清き魂さえあればよいとか解脱者まがいのことを言って路上の詩人にでもなってしまいそうな勢いだ。路上にいるのはギリジンであれ。詩人はいらぬし自身なぞまかり間違っても置くべきでない。大人しく家にこもってその家の居心地を高めるべく最適な土地を探して移動した上で北欧インテリアでも詰め込み給えよ拙僧様よ。ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー。

夏ということで更に言うのであれば夏の色はどれかと世人に訊いて回ったとすると思うに「青」が他を余裕綽々に凌いで最も支持されることであろう。私もそれには大いに納得するのであって、そうしたわけで昨日から私はブルーアーカイブを始めたのである。

ごもっとも。

多少どころか全開に非効率的な話題の進行で今更やり出したソシャゲの話を始める不甲斐ない先生を許してくれヒビキ。スマホのスペックが足りてなくて中画質と高画質を、時々低画質さえ行ったり来たりしてしまう私をどうか見放さないでおくれよ。低画質でも一時間に一回は落ちるからもう結構真剣にスマホの買い替えを考え始めてもいるよ。iPhone12 mini、今だと十万しないんだってさ。買っちゃおうかな先生。ヒビキはどう思う?

うんうん。
うん?
あーね。
ありがと〜。

終わりの茶番をしてしまった。終わり。人としての終わり。三時間くらいリセマラしてようやくお迎え出来た推しが可愛いから仕方ないけど。楽しいねブルアカ。ストーリーがテンポ良いしそもそもディストピア風味の学園都市が舞台っていう設定面からしてワクワクするし。でも何でか可愛らしい子ばっかり来る。そういう趣味の人だと思われてんのかってくらいちっちゃい子ばっかり引ける。サオリ……チヒロ……カズサ……カリン……みんなどこにいるんだ……先生はここだぞ……もう200連くらい回してるのにどうして一人として来てくれないんだ……気長に待つけどね……本当にストーリー面白いしバトルも楽しいから……。

ところでこれは夏について語ってみようと思ったきっかけである八月のディスカバリーオブザマンス。名前読めねえよ! と思ったけど御本人のTwitter見たら「螟上?邨ゅo繧」と書いて「夏の終わり」と読むことが判明した。その名の通り夏の終わりの音がする。ここ数年の何ら面白味もないただ不快なだけの暑さしかない夏とは違う「あの夏」の終わりという感じがして非常に好き。こういう自分なりの幽玄をどうにか形にしようともがいているような創作物が私は本当に大好きだ。

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