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〜大学院後すぐ独立編〜 はじめての現場はまったく役に立たたずでした

役に立たない

大学院を出て自分で改装のお仕事をしていたときの話です。設計&監理です!たくさん図面を書いて持っていった(つもり)のですが、今から思い返せば1/50の平面、立面、断面、それにそれぞれの仕上げが記載してあるものくらいです。方針は伝えることはできても、どうやって工事を進めるか、何を残して何を撤去するか、壁をあけた時に腐っていたらどうするか、なんて全然書いてありません。つまり、僕の図面は現場で役に立ちませんでした

順調?

事前に図面は渡しており、見積りも出て工事契約も済んでいました。順調に進んでいたつもりでしたが、僕がコントロールできるところは全く残されていませんでした。とても善良な工務店さんだったので、揉めないように進めるためにはその進め方が最良と判断されたんだと思います。工務店さんはまったく悪気はありません。至極真っ当な判断だと思います。学生あがりで全然現場を知らない奴にうろうろされてはトラブルを起こしかねない、そう思われても仕方がないくらい頼りない図面でしたし、態度も悪かったんでしょうね。

挨拶

それでも、現場が始まると僕は毎日行きました何もすることはできないのですが、図面を持って現場をうろうろしてました。引き下がるとこれまで建築を学んだ色々が否定されるような気になっていました。気持ちが弱くなると「居なくてもいいな、これ…」と頭をよぎります。それをブンブンと振り払って居続ける毎日でした。ほんとに何もしてなかったので(笑)、ある日少しやけになって、
「お疲れ様でえーっす!」
とでかい声で挨拶しながら入っていきました。そしたら「…おー、また来たんか」と大工さんが返してくれました。現場で自分の存在が確認できた瞬間でした。変わらず何もできませんが、僕がここにいるということを他人の声で確認できたことが嬉しかったんです。

チャンス

それから、それでも何かできないか、職人さんを観察することを始めました。わかったことは、現場の職人さんは12時から13時まできっちりお昼休憩をし、10時と15時にこれまたきっちり休憩を取ります。そして休憩のときには、人それぞれ決まった缶コーヒーを飲むことがわかりました。
「これはチャンス!」と、誰がどのコーヒー(もしくはお茶とかコーラとか)を飲んでいるかを覚えました。そして次の日に、10時ちょっと前にそれらを買って現場に行きました。
「お疲れ様でぇーす!!!」
と、さらに声を張り上げ、休憩の輪にコーヒーを持っていきました。
「お!サンキュー」
自然と(?)輪に入ることができて、やっと話しかけてくれました。
職人さん「自分、何しに来てんの?」
白須  「現場の監理です」
職人さん「監理やったら図面持ってこなあかんやろw」
白須  「じゃあ持ってきます!」
やっと僕の役割を認識してもらえました。血気盛んに建築を勉強し、意気揚々と世に飛び出した僕が現場でできたはじめてのことは職人さんのコーヒーの種類を覚えることでした。

建築の仕事

次の日に持っていった図面は、これまたまったく役に立ちませんでした(笑)。それでも、
「ここがこうなってたら意味ないやろ、」
「これどうやって留まってんの?クギもビスも入らんやんw」
と図面を前にして会話することはできました。次の日も、その次の日も図面を修正して持っていきました。図面が完成した頃には建物が完成しました(笑)。

そのときの僕は本当に役にたたなかったです。でも、何とか建築の仕事につま先だけでも食い込めて、その建物が目の前にある経験をはじめてしました。感動的だったと同時に「これはまずい!非常にまずいぞ!」と(やっと)真剣に思いました。


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