いつの日かスマホは人間の承認欲求を食べるようになった。フォロワーを何百万人も抱えるようなインフルエンサーのスマホは「いいね」を貪り食って丸々と太っている。

　いまや、でっぷりとしたスマホを持つことはステータスであり、とんでもない金額で転売されている。一攫千金を夢見て、僕もスマホを購入し流行りのSNSアプリをダウンロードしてみた。

　でも僕は友達もいなければ、バズるような企画を思いつきもしない。当然「いいね」は押されず、フォロワーも全く増えない。

　スマホはみるみるとやせ細り、ついには餓死してしまった。

　可哀想なことをした。やっぱり性に合わないことはするもんじゃないな。

　白骨化しかかっているスマホを丁重に埋葬し、己の愚行を懺悔しながらケータイショップへ向かう。ガラケーを手に入れるためである。

　僕にはこれで十分だ。

　契約を済ませて店を出るなり、ひとりの女性に電話をかける。

　「あっ、お母さん。電話番号変わったから。」

了（409字）

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