書評みたいなの その1

少し前に何回かツイートしましたが、最近読んだ本について書いてみます。
少し前の本ですが、「新・日本構造改革論 デービッド・アトキンソン自伝」です。著者は色々ネット上で毀誉褒貶も激しい人物で、政府に政策提言も色々していたようなので、ある程度のポジショントークはある前提です。それでも色々と興味深い内容でした。

[まず目を引いたのが著者の幼少時代です。本の中では「大英帝国の名残り」「スパスタ教育」とありますが、筆者には虐待としか読めない環境で著者は育ったようです。家庭でも学校でも一切甘やかしてもらえないどころか、真夏も真冬も上着の着脱すら許されない制服、真冬の屋外でのラグビーと、試合後の冷水のシャワー、泣くことは許されず、泣き止まないと「泣く理由を与えてやる!」と殴られたとか。筆者の幼少時代の実家や保育園、学校での体験を思い出してしまいました。日本もイギリスも昭和の教育環境は北朝鮮式が普通ったのでしょうか。

著者はオックスフォード大へ進学し、途中で初来日します。当時は昭和のバブル真っただ中、まだ外国人が珍しい時代ですが、ヒッチハイクで国内旅行をしたり、田舎では地元の人達と宴会をしたり、色々今とは違う世相が読み取れます。

その後は日本の金融機関への就職も視野に経営層と接点を持ったようですが、バブル絶頂期の日本の経営者はまさに天狗そのもので、露骨に「上から目線」な対応にかなりショックを受けたようです。その後まもなくバブルが崩壊しますが、「天狗」状態は没落のサイン、はいつの時代も同じかもしれません。「奢れる平家久しからず」でしょうか。

その後バブル崩壊の中で著者は色々と日本を分析しレポートを発表します。その内容が当時としては「衝撃的」だったようで、著者は散々叩かれます。ただその非難の内容がいつも抽象的、情緒的で具体性皆無なのはいつの時代も同じなようで、筆者も前職での最後の1年間を思い出してしまいました。米中対立でありのままを素直に分析し提案をまとめても上司からは意味不明な罵詈雑言と「上司ブロック」、そして元上司の罵詈雑言は後に全てブーメラン… 「自分が見たくないことは見ない」「現状維持にしがみつきたい」は人の心理なのかもしれません。 

その後著者はゴールドマンサックスに転職し、アナリストとして数々のレポートを発表します。ただその内容が日本の政府や金融機関への忖度ゼロでしかも正論、結果として著者は日系銀行から猛反発を浴び、一方で投資家からは信頼を得ていきます。
そして社内で出世すると同時に、周りで足を引っ張ろうとする社内政治や派閥抗争も熾烈を極め、著者も出世を妨害され、かなりのストレスを抱えたようです。外資は日系とは違う形での社内政治やゴマスリが凄いと前々から見聞きしていましたが、「グローバルな『村社会』」も凄まじいな、が率直な感想でした。筆者の現職は「今のところ」平和そのものですが、まだ全貌が見えていないだけかもしれません。

ただ著者は理不尽な社内政治に足を引っ張られながらも「仕事」で実績を積み、顧客の信頼に支えられます。比べるのはおこがましいですが、少しだけ筆者の前職の末期と重ねてしまいました。当時いた環境で実績を積み上げて「上司ブロック」を跳ね除け、転職も成功した体験です。

さすがアナリストだと思ったのが、著者が膨大なデータを分析して仮説の裏付けをしっかり取ることです。筆者は色々な情報をもとに「こんな感じだな」という「法則」は読めても、基本めんどくさがり屋なので検証はあまりせず、いつも仮説どまりです(これまでのところは概ね外れていませんが)。

ちなみに今日は夜9時からテレビ会議なので、一旦夕方の4時半に仕事を終えてジムと夕食に行き、8時前に帰宅しました。連休前に受けた仕事の説明を忘れていたりしてまだ「休みボケ」状態ですが、来週には入社して1ヵ月なので、そろそろ本気モードに入らないとと思うところです。


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