4回目の入院〜途中から読書感想文〜
抗がん剤治療も3回目。手術とあわせると4回目の入院になった。
今回もまた,荷物をまとめて職場に行き,2時間ほど勤務してから出勤した。
これまでに2回,抗がん剤治療を受けているあの部屋のことを想像するだけで,少し気分が悪くなる。古典的条件づけ(パブロフの犬的な)のような感覚を感じる。
私が好きな主治医は今回も出張中だったけど,入院中は,病棟長の先生が主治医のような役割をしてくれているので,なんとかなった。
髪の毛はどんどん抜けていく途中なので,掃除にきてくれるおばさんや,頭皮冷却を手伝ってくれている秘書さんには申し訳ない気持ちになった。
今回,抗がん剤治療後は,薬を飲んでいても吐き気と倦怠感があり,つらかった。
私は入院を別名「読書合宿」と呼んでいる。
今回も読書はできた。
大きな雨雲にもsilverLine(銀色のふちどり,的な?つまり
うしろから光がさしているということ)がある,みたいなことわざあるよね。
そのsilverLineは自分にとっては読書時間があることと,患者という立場で感じるさまざまな気づきだと思う。
silverLineがあるからといって,大きな雨雲はなくならない。帳消しにもならない。
ただ同時にそういう光みたいなものも確かにあるということ,それだけだけど,気づかないよりはいい。
今回読了したのは,
「深夜,生命線をそっと足す」燃え殻&二村ヒトシ
と
「黄色い家」川上未映子
の二冊。
「生命線を〜」のほうは,今回の入院がいやでいやで仕方が無く,入院してからもとても憂鬱な状態だったときに,私もだまってそのラジオ収録の場でいたみたいな,というよりむしろ,私がさんかく座りでなにもできないときに,横でふたりの人がラジオ収録がてらそこに居てくれたみたいな感覚の本だった。読み終えて,私の生命線もそっと足された夜だった。みたいな本だった。地味に,本当に助かった。
「黄色い家」のほうは,犯罪心理学授業の必読図書にしたい本だった。人間が犯罪に走る理由は,その人の特性と,これまでの環境のかけあわせでみないと分からないことがほとんどだ。
あたたかさとか,日々の食事とか,眠ることとか。それらすべてをまともではない世界からもらった子が,犯罪を行うようになった。いまこの本を読んでいる私も,そこにいたらそうなっただろう。
犯罪心理学を学ぶきっかけになった先生が,私には二人いる。ひとりは私が被害者参加制度で出た裁判で弁護人をつとめてくれた,臨床心理師の資格も持っている弁護士。もうひとりは心理学を勉強し始めた頃,統計学と犯罪心理学の授業担当だった先生。
そのふたりはどちらも,
自分が非行少年や犯罪者のように犯罪を犯して生きているわけではない(つまりまともな世界で生きている)のは,自分が優れているのではなく運が良かっただけだ
と言っていた。
川上未映子さんもきっとそれに近いことを思ってこの本を書いたのだろうと思う。なぜここまでいきいきと,花さんのモノローグ形式で小説が書けるのだろうかと,この子が本当にいて,川上未映子さんに乗り移って書かされているのではないかと思うほど鮮やかな語りの素晴らしい小説だった。
昨日は抗がん剤が終わって,吐き気と眠気の朝を迎えて,大きな荷物まとめて帰って,歯医者で治療受けて,少し昼寝してから職場に戻った。
食事と洗濯をして,眠って今朝,こうしてブログを書いている。
なんとか生き延びている。まともな世界で。まともではない世界にいってしまった弟について、とりわけ考えている今朝。
本は生命線をそっと足してくれる。
かなしい気持ち,何が起こったのかわからない戸惑い,苦痛に耐える気持ち,誰かに会いたい気持ち。
世界にはそういう気持になるようなことが,たくさんあるんだということを,思い出させてくれる本はいい本だと思う。
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