投票率の常識をぶっこわす!① 投票率が上がったら、ほんとに野党が有利になるの!? 徹底検証スペシャル

 どうも、投票率予測でおなじみ、シタサンです。
 今回の参院選、私は「#シタサンプライド」と銘打って、新潟や滋賀など、激戦が繰り広げられており投票率によって勝敗がつきそうな選挙区を対象に、投票率予測を行う予定でいます。
 また、ただ予測するだけではどちらに有利なのか分からない、という声にお応えして、一部選挙区のデータを徹底分析して、どこの地域の投票率が上がればどちらに有利なのか、といったことも含めてお伝えする予定です。
 つまり、投票箱が閉まるまでの、選挙運動もできないあのもどかしい時間が一変し、リアルタイムに投票率を追いながら、投票箱が閉まる前から、投票率、そして選挙の結果の大まかな部分を知ることが出来るということです。今週末から、順次接戦区の記事をアップしていきます。当noteアカウント、及びツイッターアカウントをフォローしていただいて、投票率コンテンツをお楽しみください。

お忙しい方は、目次から 4のまとめ に飛んでください。いいたいことは4、5に書いてありますので。

1 投票率が上がれば、ほんとに野党が有利なの?

 今回の記事の目的は、投票率を見る際に一種の常識になっている、投票率が上がれば野党が有利になる、という論調に真正面から挑んでいく、というものです。
 まずは、この記事の作成に先立ち、選挙好き、政治好きの皆さんにアンケートを取りました。
 投票率が上がれば、有利になるのはどっち?
① 無党派層が多い都市部
② 保守層が多い地方
③ どちらも有利になる

その結果が、こちらです。

記事作成時点では、 都市部と答えた人が65% 保守層が多い地域が9%
26%がどちらも有利になる、といったものでした。

 この結果から、多くの人は投票率が上がれば無党派層が多い都市部で野党が有利になり、保守層が多い地域は投票率が増えてもどうせ保守層ばかりなので野党には有利にならない、という認識を抱いていることがわかりました。
 それは正しいのか。僕もそれと同じ認識を抱いていたので、銅なんだろうと気になって調べてみました。
 すると、衝撃的なことが分かったんです。

 2 常識がひっくり返る!調査の結果報告

 投票率が上がれば、無党派が多い都市部で野党有利になり、保守層が多い地方ではそうでもない、という仮説を立証する為、とある調査を行いました。

 実は、2017年総選挙と2014年選挙の与党の比例での得票率はほぼ同じなのです。なので、この二つの選挙の間で大きく投票率が上がった選挙区を取り上げて、その地域で与党の得票率が下がれば、それは野党が有利になる、ということを示し、そうでなければ、有利になったとは言えない、ということになります。
 調査の対象にした選挙区は、いずれも2014年より5パーセント投票率が伸びた区で、①無党派層が多いと言われる各県の1区 ②小選挙区導入以後自民系候補が負けたことのないいわゆる保守王国 にわけて、与党の得票率がどう変化したかを調べました。(大きく区割りが変更され、比較が難しい選挙区などは省きました)

御託をならべるのはこれくらいにしときましょう。その結果が、こちらです。まずは、①無党派層が多いと言われる各県の1区

2014衆 2017衆と書かれている下の部分の数字は、それぞれ2014年、2017年の当該選挙区の与党の得票率です。

 見ていただければ一目瞭然でしょう。我々の認識通りなら、投票率がここまで上がったのなら、与党の得票率は大きく下がっていなければならないのに、与党が得票率を伸ばしている地域が約半分を占めているのです。

では、次に ②小選挙区導入以後自民系候補が負けたことのないいわゆる保守王国 の結果を見ていきましょう。

 これも驚きです。なんと、保守王国なのに、投票率が上がっただけで、大きく与党の得票率が下がっているのです。 オレンジで色付けされた選挙区は、比較用に自民でも屈指の人気を誇る小泉氏と菅官房長官の選挙区の結果です。二氏の選挙区はいずれも投票率が下がりましたが、投票率が大幅に上がった選挙区より与党の得票率の低下は穏やかです。ここから、保守王国ッ全般での与党票の退潮以上に、投票率が大幅に上がった選挙区での与党の票の喪失割合が大きいことが分かります。

 ちなみに、参考までに全国平均です。

与党の得票率はほぼ横ばいであることがわかります。

訂正 投票率は2017年の方が全国で1.04ポイント高かったです。表では1.02ポイント減と書いてありますが、これは誤りです。お詫びいたします。

3 検証

 このデータはどう見るべきでしょうか。
 まず、1区のデータを検証しましょう。
 比例票を基準に考えると、決して投票率が上がっても野党に有利になっているとはいいがたいです。ですが、小選挙区の当選者を見ると、2014年が非自民が1人なのに対し、野党が4人と大幅に増えています。これはどう見るべきでしょうか。

与党が得票率を下げた区で、小選挙区でも与党候補が得票を下げたのは、鹿児島1区、福井1区、山形1区の三区いずれもでした。
そして、与党が得票率を上げた区で、小選挙区では逆に与党が得票率を下げたのは、長崎1区、新潟1区、長野1区です。
 ここで、与党が比例で得票率を上げても、小選挙区では落としている、という逆転現象が見られます。(三区とも与党の減り幅は非常に少ないですが) ここから何が言えるか。
 都市部の無党派は、比例で与党、小選挙区で野党、とバランスを取る投票行動を取る層が一定数いるのではないか、ということです。

 野党が2017年に取り返した選挙区で、比例も野党が伸ばしたのは鹿児島1区だけです。これは立憲の川内氏自身の力も大きいですが、元々保守的な地域であることも大きいと思われます。(福井、山形も同上。詳しくは保守地盤の検証の際に)特に保守基盤ではないところの無党派層は、選挙区と比例で与野党一票づつ、というバランスの取れた投票行動をしている可能性が、この結果からうかがえます。
 この結論からは、都市部での得票率の増加が野党の増加につながる、つまり都市部の無党派は野党寄り、という仮説は成り立たない、ということが言えます。

では、保守基盤の方はどうか。これはわかりやすいです。保守層が強い地域で無党派をしている人達は、基本的には野党寄りだといえるのではないでしょうか。というより、保守地域の野党支持層は、候補によっては「寝る(=投票に行かない)」といえるかもしれません。
 保守層で投票率が大幅増加した四区は、いずれも2014年は自民と共産のみ立候補だったのが、2017年は希望の党が候補者を出し、投票率増加に繋がったと思われます。保守地域での非自民支持層のうちかなりの数が、共産候補に票を投じることに嫌悪感を抱いていることが窺えます。

4 まとめ

 以上の結果から何が言えるか。

①無党派は比例と選挙区でバランスを取る投票行動をしている層が多い
②保守地域での投票率の増加は、それが野党の得票増加につながる
③保守地域では特に、候補次第では投票に行かない層が多い

 つまり、投票率を見る際に野党が伸びる際の指針となりそうなのは、保守層が強い地域、そして都市部での投票率増かはそれがすぐ野党の得票増加につながるかはわからない、ということがいえるでしょう。
 今までの定説の、「投票率が上がって野党が得するのは都市部」は実は全く逆で、「投票率が上がって野党が得するのは保守的な地域」だということです。 驚きですね。

 5 今回の結果をうけて、野党が取るべき戦略は

 ここはぜひ野党幹部の皆さんにもよんでもらいたいところです。
以上の検証結果から、野党は参院選、衆院選で、

①保守候補が強い地域(野党が勝ち目がない)でも、出来るだけ共産以外の候補を立てて比例に野党の名前を書いてもらう
②とにかく保守が強く結果が見えている地域でも、多くの有権者に足を運んでもらう。そして投票率を上げる
③都市部では、バランスを取る無党派を一人でも多く比例も野党に引っ張る為、各地の遊説で比例候補と一緒に回るなど、「比例も野党」を強調する。

が重要と思われます。
たとえ勝ち目がなくても、有権者に関心を持たせるために野党幹部がなるべく保守王国にも足を運ぶ、と言った対応は重要です。そういういみで、枝野氏が福井の共産候補の応援に入ったのは、非常に素晴らしいことだと思います。

② ③はこれからの参院選のラスト一週間においても重要になると思われます。北陸や中国、九州などの結果が見えている一人区でも投票率を上げるため幹部がテコ入れし、そして選挙活動ではなるべく選挙区候補と比例候補が一緒に行動する(維新がその戦略です)など、比例も選挙区も野党に入れてもらう行動が重要になると思います。

 保守王国の投票率増加は、野党に有利に働きます。投票総数20万人の選挙区で与党が5%得票を減らせば、1万票減らすことになります。

とにかく、保守王国では投票率増加を、都市部では比例と選挙区のセット投票をより呼びかけることが重要ではないでしょうか。

 6最後に

 どうでしたか、投票率、奥深いですよね。

当アカウントでは、「投票率を見るだけで結果が何となく予測できる」をモットーに、各選挙区で投票率が増えたら勝負が決まりそうな地域を分析し、その地域での投票率も予測しようと思っています。

 当アカウントの投票率予測の売りは、正確さです。 大阪市長選では、最終投票率予測誤差0.1ポイント、大阪12区補選では0.3ポイントでした。

また、選挙当日の昼の辺りで、最終投票率を誤差2ポイント以内で当てるなど、早い時間から投票率を見通すことにも定評があります。選挙当日、することがないともどかしい人たちは、当アカウントの投票率予測を片手に、投票率および選挙の奥深い世界に入り浸ってみませんか。
7月3日以降、滋賀を皮切りに、各地域の投票率予測&詳細分析記事をアップしてきます。終盤情勢を占う上でも、ぜひ参考にしていただきたいデータを多数そろえています。ぜひ、このnoteアカウント、またツイッターアカウントをフォローいただき、最新情報を逃さないようにしてください。

それでは、あと一週間、与野党ともいい選挙をして、投票率を上げていきましょう。アディオース! 


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