宝塚歌劇について、いま思うことを整理する~人事の視点から 2

今回の宝塚歌劇の案件は人事関連の格好の教材になりつつある。長時間労働、パワーハラスメント、契約形態などホットな内容盛りだくさんだ。おそらく教材としてずっと残るだろうな。

長時間労働とパワーハラスメントについてはすでに書いたので、今回は契約形態について考えたことを整理する。

契約形態について


今は研6から業務委託契約になっているということをX(旧ツイッター)などで読んで、昔は研7までは直接雇用だったと思ったけどなあ・・・なんて思っていて、ハタ、と思い出した。そうだった、有期契約5年を超えると無期契約転換しないといけないんだった。

そうか、だから研5まで契約社員、研6以上は業務委託契約になったんだなあ。

無期転換ルールは、企業の規模にかかわらず、全ての企業が対象です。

無期転換ポータルサイト

ってちゃんと書いてあるし、そりゃあ宝塚も法令遵守しないとね。

もしも無期契約だったら


5年超えたら、契約は続くよ どこまでも

無期転換ポータルサイト
  • 契約更新しないことはとても難しくなる(雇止めになる)。

  • 卒業=退団ではなく、歌劇団から阪急阪神のどこかのグループ企業に異動ってこともあり得る。

  • っていうか、障碍者雇用とか高年齢者雇用を演者だけでクリアするのは難しいから、裏方もまとめて無期雇用だな。

  • 定年は60歳で、65才までの雇用義務がある。そのうち70才までの雇用義務も発生するかも。現場、めっちゃ危険。

  • 現在未婚の女性に限ってるけど、直接雇用の場合そんな就業規則ありえなくない?結婚も子供を持つことも禁止できないよね。それに結婚するから、妊娠したからって異動させたら、それこそセクハラ、マタハラになっちゃうよ。

こうして書いてみると、なんだかすごく実現が難しい契約形態のように思う。働く側としては保証があり働きやすさもありそうだけど、とくに結婚しても異動が難しいあたり、すくなくとも現代のコモンセンスのなかで宝塚歌劇というビジネスとして続けていけるのだろうか?

また、ほかの劇団や外部ミュージカルが業務委託で続ける中で宝塚だけが直接雇用になった場合、その「保証されている感」は、また違った面で問題視されてくるんじゃないだろうか?

業務委託契約における統制


今回、劇団側が長時間労働を認めていて、パワーハラスメントについてはまだ調査が足りないようなんだけど、劇団側が今後もっとこのあたりをコントロールしていくべきだっていう意見もある。

ただ個人事業主と業務委託契約を交わす場合、直接雇用と違って会社は相手を直接コントロールはできない。
劇団側が生徒の自治に任せすぎなんじゃないかって感じるのは、このあたりから来てるんだろうな。

事細かに管理しちゃったら雇用関係になっちゃうから言えない。
雇用関係ってことになっちゃったら、宝塚っていうビジネスが続けられるかわからないとなったら、及び腰になるんだろうな。

業務委託契約でできること


そうは言っても個人事業主でも労働安全衛生法で守られ始めているので、このあたりから解決できるんじゃないのだろうか。

昨今コンプライアンスが相当厳しいので、会社と会社がビジネス関係を続けるにあたっては、相手が法令遵守しているかどうか、アンケートをとったり念書をとったりすることが多い。

劇団と生徒の間でも、法令遵守について念書を交わしたらどうだろう。
すでに法令遵守は契約書の中に入っているような気もするが、パワーハラスメントなどは定義も類型もはっきり明記してしまえばいい。

5年間の直接雇用の中で、長時間労働とパワーハラスメントについて、めちゃくちゃ研修を受けさせたらいい。
パワーハラスメントは3年以下の懲役もしくは禁固、または50万円以下の罰金刑になる可能性があるということを明記すればいい。

上級生は下級生に、パワーハラスメントにならないように指導すればいい。
厚生労働省も、指導するななんて言ってない。禁止してるのはパワーハラスメントだけだ。

イチローも言ってるよ。厳しく指導しない残酷さ。

生徒から個人事業主へ


タカラジェンヌが妖精さんだったのは20年以上前のことだ。近頃は、タカラジェンヌのことを「働くお姉さん」と感じることも多くなった(みんな年下なんだけどね)。

全員が宝塚音楽学校のOGだから、劇団側にも「業務委託先」でもあり「生徒でもある」というジレンマがあっただろう。

だからこそ直接雇用の5年のうちに、生徒というマインドから個人事業主のマインドに代わってもらう必要がある。
舞台上という危険な現場で働く以上、最低限知っておかなくてはいけない様々な事項の中に、パワーハラスメントが筆頭にあることを知ってもらう必要がある。

もちろん私は宝塚の契約書を見たわけはないし、足りない情報が多すぎるので、これらが本当に解決策になるのかどうかはわからない。
ただ単に、ファンであり人事マネジャーである人間がぐるぐる思うことを整理するために書き連ねただけだから。

自分自身の本音


私は今後のことばかり考えてきたけれど、それにしてもパワーハラスメントを認めて謝罪するのは辛いことになるだろう。
劇団だけが謝ればいいってことにはならないだろうなと思うからだ。

とてもしんどい、辛い時期を乗り越えないといけないし、できれば乗り越えてなお、最後には笑顔で私たちに舞台を届けてほしいと思う。

とても傲慢なファンだなと思うけど、偽らざる気持ちです。










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