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本田圭佑の「飛び級モデル」発言に群がる自称『天才』達の醜さ


本田圭佑氏の「飛び級」発言

世界的なサッカープレーヤーである本田圭佑氏は教育問題について、これまでも持論を発信してきました。

そして、今回もそうした例の一つとして、「飛び級」について発言しています。

彼のように世界で活躍する才能に恵まれた(もちろん並々ならぬ努力あってのものではありますが)人の発言としてはよく見られる傾向の発言です。

では実際に「飛び級」制度が日本の教育制度の問題点となっているのでしょうか。

アメリカの「飛び級」制度に関して

「飛び級」制度が存在すると多くの人が考えているのはアメリカでしょう。

そこでアメリカにおける「飛び級」制度はどのように運用されているのでしょうか。

残念ながら、アメリカでどの程度「飛び級」が運用されているという統一データは見つかりませんでした

ただ、高校の場合は日本のような学級別の授業ではなく、大学のように個人が履修する講義を選択するシステムとなっており、実際にはクラスごとにレベル別の選別が行われるようです。

また、アメリカの高校は4年制であることが多いようですが、大学進学を考える場合はある程度短い期間で単位を取得し、それ以外の活動に時間を費やすケースが多いようです。

そう考えると、日本の状況で考える上の学年に入り込むケースのいわゆる「飛び級」と呼ばれる印象とは大きく異なります。

また「飛び級」を実際に行う場合、体格や精神発達の影響からいじめなどの標的になったり、集団から孤立するケースも多く、必ずしも良い結果を生むとは言えないようです。

日本に「飛び級」は存在しないか

そもそもこの問題に関して、日本には「飛び級」が存在しないことになっていますが、本当にそうでしょうか。

確かに公的には日本の教育制度は年齢主義を取っているため、「飛び級」して上の学年に入学するといったことはありません。

しかし、日本の教育制度の場合は民間教育が補完する形で「飛び級」制度が存在するのです。

例えば、日本における中学、高校入試や大学入試での受験の場合、多くは学習塾や予備校に通うことになります。

そこでは先取り学習制度が取り入れられているケースが多く、優秀であれば実際の履修学年よりも早い段階で学習内容を学ぶことになります。

難関中高一貫校に通う生徒なども同様です。多くの中高一貫校は高校2年生までで高校内容にカリキュラムを終了します。

こうした状況はひとまとめにして「飛び級」しているようなものでしょう。

ボトルネックは大学歴意識

つまり、現場における運用において日本の教育制度はすでに「飛び級」制度を活用していると言えます。

事実アメリカの教育課程は必修内容で言えば日本よりも進度が遅く、学習塾に相当する機関がほとんど存在しないことから学校内で柔軟に運用しているだけ、ということでしょう。

では、大学入学を早めるべきではないか、という批判がありますがそもそも日本においても「飛び級」入学できる大学は存在します。

ここに上げられている大学であれば飛び入学をすることは可能ですが、これらの大学を選択的に受験しないのがほとんどではないでしょうか。

おそらく東京大学に高3で合格できる生徒の多くは、千葉大学の飛び入学試験に挑む実力はあるはずです。

しかし、実際の受験者数は多くて2桁ですし、そもそも合格者が一桁台であることを考えると大学側が求めるレベルに到達していないということなのでしょう。

結局のところ、早期入学で千葉大学に進学することよりも東京大学に進学することに価値を見出す人が大半であるということです。

自称『天才』達の醜さ

本田圭佑氏の発言に対するヤフコメやXでのリプに多いのが「自分も飛び級するレベルだったが、先生や学校のせいで窮屈な思いをした」という自称『天才』の恨み言です。

しかしながら、この欄にコメントを書くような程度のレベルの場合、アメリカでも「飛び級」の対象になるようなことはないようです。

年齢主義ではない国家の教育制度の多くでも、「飛び級」においてはかなり厳密に審査をするからです。

実際、上の学年に放り込まれて学習に追いつけるのはかなりの高い能力が求められますし、それをすべての教科、科目でとなれば負担は想像以上に大きいものになるでしょう。

海外の事例や近年のインクルーシブの流れからすると、ギフテッドに対しては一律的な「飛び級」よりも「級外指導」や「選抜コース」などの措置が一般的であり、その方向での柔軟性を模索するべきではないでしょうか。




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