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「全国学力テストの過去問対策」調査に見る、教員向けアンケートの無意味さ

以前、全国学力テストに関して、学校が事前にテスト対策を行っていることが問題になっている件について触れました。

テストの目的が不明確が故に現場の混乱を招く

このテストが何を目的にしているのがよくわかりません。

ただ、現在の実施方法の場合は事前対策を推奨しているように現場の教員側からは感じ取れるでしょう。

学校や県ごとの平均点を発表し評価をする以上はそうした圧力が発生するのは必然です。

そのため、テストの結果で一喜一憂する管理職や教育委員会の態度を見て、忖度した対策を強いられることになった教員も多いのでしょう。

そんな中、長野県教育委員会は全国学力テストの対策を行ったかどうかの調査をしているようです。

肌感覚とずれる調査結果

県教委の調査は11月中旬、匿名で初めて実施。(中略)事前対策をしたと答えた教員は、小学6年の担任で4・3%(21人)、中学3年の教科担任で0・9%(7人)。小学6年では、対策時間は2時間が最も多く、5時間以上も14・3%あった。理由は「学校や学年、教科会などで行うよう決めた」が約7割を占めた。中学3年の対策時間は、いずれも1時間以下だった。

朝日新聞デジタル
全国学力テスト「授業で過去問対策」2%超 県教委調査

この結果は現場での肌感覚からすると極端に少ないように感じます。特に中学3年は信じられない数値の低さです。

もちろん、長野県が厳しく制限している可能性もありますが、鵜吞みにしがたい結果と感じます。

教員に答えさせるという無意味な調査

この調査の無意味な点は、県教育委員会が「テストの正答率を実力以上に高くするため、事前に繰り返し過去問対策をすることは、テストの目的に反する」というコメントを出しているところにつきます。

こうしたコメントを出した、あるいは事前にそうした態度をとっていることが分かっている以上、調査を受ける教員が忖度をしないわけがないのです。

「直前に繰り返し過去問を解くなど誤解をされるようなことはだめ。変なことをやって点数を上げるのは推奨しない」という教育長の言葉から、「直前に繰り返し過去問を解いた」と答えてはいけないのだ、というメッセージと読み取ることができます。

さらに、近しい内容を復習として行うことはここで言う「対策」には入らないとも言えます。

特に、管理職からの「対策」をしたという数値を下げる圧力を考慮すれば、そうした隠れた「対策」はかなりの数に上るのではないでしょうか。

真の実態調査は生徒、保護者に直接アンケートを取る

こうしたアンケートを教員にとったところでそれがきちんとした調査結果として成立することはないでしょう。

真の実態を確認したければ、生徒や保護者へ学校を通さない形のアンケートを取らなければ意味がありません。

特に中学3年生ならばこうしたアンケートへの回答であれば、100%とは言えないまでも、それほど低くない信頼度で調査をすることは可能でしょう。

学校向け調査のほとんどが同じ病を抱えている

学校向けのこうしたアンケート調査のほとんどはこの調査と同様の傾向があるのではないでしょうか。

調査主体である文科省や教育委員会の意図や思惑があまりにも透けて見える上に、その意図に従おうとする管理職の圧力下で本当の実態をあぶりだすことなどできるわけがないのです。

働き方改革に関する労働時間や部活動関連の調査、いじめその他に至るまで、こうしたアンケートの多くが同じ轍を踏んでいます。

忖度を多分に含むアンケートや調査の結果を見て、評価を行うことはあまりに意味がありません。

こうした無意味なアンケートを行うために時間的、費用的コストを支払うことは、無意味以上に教員の労働時間にも影響し、大きな負担になっています。

働き方改革以前にそうした意識改革をする必要があるのではないでしょうか。


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