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熊本市の「大学生アシスタント事業」は人気でも、教員の確保には全くつながらない


熊本市「大学生アシスタント事業」

熊本市は学校現場における教員補助を大学生に呼びかける「大学生アシスタント事業」なるものを行っています。

そして先日、この事業が人気でさらに募集を拡大するというニュースが報道されていました。

これだけを聞くと熊本市の教員採用の今後の見通しは明るいように感じます。なんせ大学生たちがこぞって教員補助を希望し、その募集人数を倍近い数に増やすというのですから。

アシスタント事業とは

ではこの「大学生アシスタント事業」とはどんなものかを確認し、本当に教員になりたい学生がどれほどまでに殺到しているのか見てみます。

リンク先はこの「大学生アシスタント事業」に時間する説明です。

詳しく見てみると以下のような活動内容のようです。

応募要件
 県内の各大学及び大学院に在籍する学生で、次の要件を満たしている方
(1)児童・生徒一人一人を大切にするなど、必要な適格性を有していること
(2)教職に関心のある学生であり、健康で、かつ、意欲をもって活動できると認められること
(3)活動を行うに当たり、必要な知識及び技能を有していること

これを見る限りでは大学生に教育現場の体験をしてもらい募集が増えるようにも見えます。

しかし正直な話、これで教員の志望者が増加する、採用試験の倍率が跳ね上がるかと言えばどうにも疑わしいようです。

割の良いアルバイト

さて、そのページを読み進めていくと待遇面がまとめてあることに気づきます。

謝 礼 金: 1時間当たり1,600円(所得税を含む。交通費は支給しない。)
活動期間: 活動開始日から令和6年3月まで
活動場所: 熊本市立小学校または中学校

どうやら「アシスタント事業」と銘打っているのでてっきり学生のボランティアのように感じていましたが、現実にはアルバイトを募集しています。

ちなみに熊本市及び近郊の時給はスーパーの店員などのいわゆる学生向けのもので900~1100円程度、TSMCの進出に沸いている地方都市であっても実際にはその程度の時給しかありません。

一方でこの「学生アシスタント事業」はなんと時給1600円。地域内の相場から言えば破格であり、学生はこぞって応募をするでしょう。

条件の良い「アルバイト」として。

部活動の地域移行断念

先日も私の意見を書きましたが、熊本市は現在、ここ数年の部活動地域移行を断念し教員の維持体制を継続するというアナウンスを行っています。

これはとどのつまり、教員の安い(時間外手当を必要としない)労働力は使い潰していきますよ、という自治体、教育委員会の意思の表示であり、正直なところ教員を目指す若者にとって熊本市は決して条件の良い地域ではない、ということを意味します。

仮に今回の「学生アシスタント事業」へ参加した学生がいたとして、どうしてアルバイトより下手すれば条件の悪い教職に就こうと思うでしょうか。

私が教員の補助的な業務に興味のある大学生だと仮定した場合、教員になることを避けて、定時性が高く給与待遇面の優れた職業に就きつつ、子供と触れ合うボランティア活動をしようと考えるのではないでしょうか。

働き方改革、業務改善が行われていない

結局のところ、教員の業務の精査、時間内における業務の完結など現代における他の職業が当然のように満たす条件をそろえない限りは教員という職種が人気を取り戻すことは低いように感じます。

やや高めの時給を出すことで、あたかも学生人気が向上したかのようなアリバイを作る事業に血道を上げるのではなく、希望者増に確実に寄与するような改善策、改革に期待したいところです。

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