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「イスラエル‐パレスチナ問題」こそ学校教育で教えるべき内容かもしれない


学校で教えるべき○○

○○を学校で教えるべき、という番組や特集が昨今は流行っています。

借金や投資、起業などに関して教えろという他力本願な人も多いようです。

しかし、実際には学校のカリキュラムの中に含まれますし、それらを調べるための最低限の知識やスキルは身についているはずです。(国語や数学、英語の単位を修得しているのですから、調べようと思えばいくらでも可能です。)

こうした主張の大半は、自分で能動的に調べる意欲も無いことの責任を誰かに押し付けたい、学校教育の責任にして自分の無知を正当化したい行為でしかないでしょう。

あまり教えていない内容:イスラエル‐パレスチナ問題

それと比較して、社会の教科内容に含まれているにも関わらずそれほど深く触れていないと私が感じるのがユダヤ人やイスラエル‐パレスチナの問題です。

グルーバル化への対応というお題目で1989年の教育課程から世界史は必修化されてきました。現在も「歴史総合」という名前で世界史がカリキュラムの中に必修科目として設定されています。

旧課程においては必修であった世界史Aで前近代史を学ぶ中でユダヤ人の迫害の歴史を触れていましたが、その後の近代以降のイスラエル建国から現在の中東問題に関わる内容はそこまでしっかりと学習することがありません。

新課程の歴史総合は近代史をメインにした科目ですが、イスラエル‐パレスチナ問題の場合、今度は逆に前近代史を学ばないため、問題の経緯は全く見えてこないということになります。

世界史選択者は少ない

加えて中東問題などのややこしい内容に世界史Aよりは時間の取れる世界史Bの履修者が少ないことも問題です。

令和3年度の共通テストの場合、世界史Bの受験者は約85000人、日本史Bは約143000人、地理Bは約138000人、B科目受験者の20%しか世界史を十分に学習する時間は確保できていません。

新課程においては歴史総合は必修となっていますが、これは日本史と世界史をハイブリッドした近代史を主とした内容となっています。

受験科目として利用する科目は日本史探究、世界史探究という選択科目であり、中東問題を深く知るには世界史探究を選択する必要があります。

ところが大学受験において文系は日本史、理系は地理、というのがスタンダードとなっているため、また世界史は広範な内容から対策が難しいとされており、必履修でありながら受験科目としての選択者は少ないのが実際のところです。

日本での注目の低さが物語っている

今回のハマスによるイスラエルへの大規模攻撃に関しては人道的には許されざる行為だと私は考えています。

とはいえ中東の歴史を考えれば様々な立場の人がいるのも理解はできます。

ところが日本における中東問題における最も大きな問題点はそうした是非を論じる段階ですらありません。

この問題に関して日本における問題は、他国と比較しても明らかに国民が無関心である、ということです。

この傾向はテレビ報道を見ると顕著です。さすがに新聞はそこまでありませんが、テレビは他国と比較すると露骨に差があるようです。

2023年10月10日 FNNニュースページのトップ
2023年10月10日 CNNニュースページのトップ

上のスクリーンショットはFNNとCNNの本日、2023年10月10日のサイトトップのものです。

CNNは全てイスラエル関係のものが並んでいるのに対し、FNNは画面内には存在しません。一応擁護しておくと、このすぐ下にイスラエル関係のニュースが一つ存在しました。

テレビのような大衆メディアは国民の関心のあるニュースを重点的に報道する傾向があることを考えれば、日本におけるイスラエル‐パレスチナ関係の関心の低さは明らかです。

無知が無関心を生む

私自身も中東問題に関してそれほど詳しい知識がある、とは言えませんが以下のツイートの内容ぐらいは頭に入れているつもりです。
(この方のツイートは非常によくまとまっています)

詳しい方からすれば間違いがあるかもしれませんが、この程度の浅い理解とはいえ、一応は問題を知っているという状態ということです。

しかし、残念ながらイスラエル‐パレスチナ問題に関して世界史B(世界史探究)を選択していない生徒と話をすると感じるのですが、中東問題やユダヤ人、イスラエル‐パレスチナに関して全く知識を持っていません。

そして無知であるがゆえに無関心でもあります。

模試ではそれなりに高得点を取り、難関や名門と評価される大学に進学するであろう(した)生徒がその調子なのであれば、世間一般の認知がどの程度であるか、推して知るべしでしょう。

極東問題と中東問題の差

中国や韓国、北朝鮮との問題は多くの国民が高い関心を持っています。

それぞれの思想信条や偏見はあれども議論にもなり、それぞれが自分事として多少は捉えています。

実際、戦争や紛争状態となれば他人事では済まないということもあるのでしょう。

一方で中東問題は国民の関心も低く、大衆メディアの扱いもぞんざいです。

しかしグローバル化が進み、原油供給やそれ以外の世界経済への影響も決して無視できるものではありません。また地域住民の中に中東系の人がいるというケースも多いようです。

もはやこれまでのように無関心を決め込める状況ではないでしょう。

何よりも、今回の事件がきっかけとなって、後世に第三次世界大戦と称される可能性は十分にあるはずです。

社会科に押し付けるのではない

こうした話題においては、最終的に教科にその責任を押し付ける結論を導き出しがちです。

今回の場合は社会科、世界史の中でしっかり教えるべし、という結論がそれにあたるでしょう。

しかし、イスラエル‐パレスチナ問題は国土を持たない民族や宗教観など、現代社会を生きる私たちに重要なテーマを何重にも含んでいる難解な課題です。

これほどの難題を社会科だけに押し付けるのは余りにも無責任ですし、何よりも勿体ないでしょう。

総合的な探究だけでなく、人権教育などの教科外の時間の中で学びを深める価値があるのではないでしょうか。

何よりも私を含むほとんどの教員がこの問題に関して無知な素人です。

だからこそ、生徒とともに学ぶ機会を持ち、問題の認知をした上で自身の価値判断の基準を作るべきではないか、と思うのです。

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