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川辺にいる間は消費者にならずに済む。

先日、「自律して生きるために、支出をコントロールしなくてはならない。そのために、消費者としての振る舞いを余儀なくされる都市やインターネットとは注意深く付き合う」という話をしました。そしてそのための1番のアティチュードが「家から出ない」ことであると。

一方で、家から出ないことで心身にマイナスの影響を与えることも、容易に想像がつく。「引きこもり」と聞くとフィジカルにもメンタルにも不健康なイメージがまとう。実際にはインドアな暮らしをしていて健康的な人はこの世にたくさんいると思うが、一歩間違えると実際に不健康にはなると思うので、工夫は必要です。

今回は、「家から出ない」を基本姿勢に維持しながらも、不健康にはならないような工夫の一つとして、「川の近くに住む」ということについて書こうと思います。

そもそもなぜ家から出ない方がいいのかを改めて振り返ると、街に出ると消費者としての振る舞いが喚起されるからです。街を歩くと至る所にコンビニがあったり、美味しそうなご飯屋さんがあったり、本屋があったり・・・至る所に消費の誘惑があって、元々無かった欲望まで喚起されて、「今度あそこのイタリアンに行こう」と思ったり、コンビニで喉が渇いたと言ってアイスコーヒーを買ったりします。果たして本当に喉が渇いていたのでしょうか?

もちろん、都市を歩くことで感じる消費の喚起は「街の賑わい・豊かさ」に直結し、それがない街は寂しい。それは確かにそう。地元の生活で賑わいのある商店街とか、確かに私も大好きです。でも、心苦しいところではあるのだけど、まずは自分をコントロールする方法を身につける方が先ですね。

私の散歩道です。

そこでようやく本題なのですが、川辺の散歩についてです。家から出ないと心身の健康に良くないので、単純に散歩をしようと思いました。今の家の近所に川があるので、ポッドキャストを聴いたりしながら川沿いを歩いたりします。

歩いていて気づくのですが、川沿いは歩いていても消費は喚起されないんですね。川は、都市部とは違って、資本主義/消費を推進する原理で作られたアーバン・デザインではないからです。もっと昔からそこにある。

昨今、都市政策・都市計画・まちづくりの業界では「ウォーカブル・シティ」なんて言ったりして、歩きやすい、歩いて楽しいまちづくりが志向されています。アンチ・モータリゼーションだったり、環境配慮、ヒューマンスケールなコミュニケーション、健康、個人商店の持続可能な経営、秩序立った都市マネジメント、いろんな文脈がありますが、この"歩きやすさ"の原理って、個人的にはショッピングモールの開発から始まったように思っています。

もちろん、ショッピングモールの原理は(モールの概念を発明したジョン・ジャーディを見ると)、近代化以前の世界で見られた旧市街の街並みが参照されているような気がします。とはいえ、それを消費をドライブさせる構造としてチューニングしたのは、20世紀後半のモールからでしょう。

この辺、丁寧に解説すると長くなってしまうのですが、要するに今の時代で「歩きやすい」環境って、「消費してもらうため」の環境ですよね?と思ってしまうんです。綺麗な道はモールの原理でできている・・・というか。都市で歩きやすい場所を歩くと、お金を使ってしまいそうなんですよ。

そこで、「歩きやすい/歩きたくなるが、消費は喚起されない」場所を探すとなると、20世紀後半のモールの原理以前から存在した散歩道を発見する必要があって、それが川辺だったりするんですね。

私の散歩道である京都の鴨川は最高で、カップルが等間隔で座っている・・・みたいな話でお馴染みですが、本当にいろんなアクティビティがそこには存在しています。

もちろん鴨もいる

聴いたことのない楽器を演奏している人(何人もいる)、おばあちゃんの腰をマッサージするおじいちゃん、川の絵を描く老若男女(絵のタッチがみんな違う)、走り回る子供、ペットと一緒にランニングするアングロサクソンの方、ビール飲んでる大学生、ファッションフォトを撮影している女の子とおじさん、日光浴しながらベンチで本を読むお姉さん、仕事を休憩しているブルーカラーのおじさん・・・本当に多様なのですが、そのどれもが「消費活動」ではないんですよね。それ以外の全て。

このような、消費が存在しない道があれば、そこは外出しても大丈夫・・・と感じており、支出を抑えるために「家から出ない」は心がけつつ、健康のために鴨川を散歩しています。細かい工夫です。

なので、「自律して暮らすためには川の近くに住め」という話になります。それが難しい場合は、朝か夜の、店が開いていない(消費活動が動いていない)時間帯にコンビニを避けて歩け、などと言えるかもしれません(よく考えたら私はこれを大阪に住んでいた時にやっていました。深夜に商店街を散歩するんです)。

自律的な生活のリズムにおける散歩については、また文章を書きたいと思っています。

今回は、自律して暮らすためには川の近くに住め、家から出ない原則は守りつつ、出るなら都市から離れて川を歩け、という話でした。



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