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萌えは愛の上位概念

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声優とはオノマトペである-アニメ記号接地問題について考える②

声優とはオノマトペである-アニメ記号接地問題について考える②


前回↑

言語の恣意性-ソシュールさて、声優とはオノマトペであるとは、どういうことだろうか。

そのことを考えるにあたって、まず一人の言語学者を召喚したい。

現代言語学の父、フェルディナン・ド・ソシュールである。

ここで、論じたいのは、「言語の恣意性」の問題である。

恣意性とは、arbitraire の訳語である。別の言い方をするとすると、任意性、勝手な、気まぐれなという意味を持つ。言語学

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声幽ネットワーク論-東浩紀の虚構推理

声幽ネットワーク論-東浩紀の虚構推理

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注意事項:グーグルドキュメント版で見るときは、PCで見るか、印刷レイアウトで見たほうが良いです。(脚注が見れないので)

説明構想から8年かかっちゃった声幽ネットワーク論完成です。

タイトルからして何が書いてあるのかよくわかりませんよね。その名の通り、かなり電波的な文章なので読み手は非常に困るかもしれません。そもそもこのままだと読まれないかもしれない危惧しかないので、本文でも書いてます

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シン・声幽ネットワーク論:ll ■親と子の鎮魂の物語-庵野秀明,安野モヨコ,宇多田ヒカル-さようなら、すべてのエヴァンゲリオン批評

シン・声幽ネットワーク論:ll ■親と子の鎮魂の物語-庵野秀明,安野モヨコ,宇多田ヒカル-さようなら、すべてのエヴァンゲリオン批評

光が世に来たのに、人々はその行いが悪いので、光よりも闇の方を好んだ。それが、もう裁きになっている。悪を行う者は皆、光を憎み、その行いが明るみに出されるのを恐れて、光の方に来ないからである。しかし、真理を行う者は光の方に来る。その行いが神に導かれてなされたということが、明らかになるために。(ヨハネの福音書)

シン・エヴァンゲリオンについての感想は主にふたつだ。天国だったと賞賛するもの。あるいは、そ

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東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』読解-郵便、電話、不気味なもの

東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』読解-郵便、電話、不気味なもの

こんなツイートが流れてきたので、前に書いていた『クォンタム・ファミリーズ』論を書き直してみた。

これは、先日書き直した、「萌えは愛の上位概念とは何か?」と関連しているので、面白ければそちらも読んで欲しい。

アクロバティックな「私小説」『クォンタム・ファミリーズ』は、東浩紀によるSF小説である。小説としては、その前にも桜坂洋との合作の『キャラクターズ』があるが、その初の単著で彼は三島由紀夫賞を受

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萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係⑥

萌え要素と萌えの違いさあ、そろそろこの文章もまとめにかかろう。

改めてこの文章の目的は、2つだ。

1. 萌えは愛の上位概念という言葉はどういう意味なのか?
2. 東浩紀の内なるカントによって、東浩紀を再解釈させること

この目的を果たすために、もちろん、最後に召喚するのは、批評界のアルファにしてオメガ。東浩紀である。改めて、東のテクストと宇野の解説について吟味してみよう。

東浩紀は、この文章

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萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係⑤

ゼロ年代の幽霊進捗としては、ようやく8割といったところだろうか。とはいえ、駆け足ではあるが当初の2つの目的はある程度達成出来たと個人的には思っている。

まとめに入る前に、ここでは副題にもある確定記述と固有名について考えてみる。

ここで新たに呼び出されるのは、批評界のアルテマウェポンこと村上裕一である。

東浩紀が企画していたゼロアカ道場優勝者である彼のデビュー作『ゴーストの条件』は、まさしく東

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萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係④

カントのモノ自体からデータベース消費を考える③では、萌えと推しの違いを考えながら、最終的には、モエ自体という概念を生み出した。

このモエ自体は、前述したように、モノ自体から由来するので、そろそろカント大先生を召喚しなくてはいけないが、どうやら私のMPでは難しいようだ。だから少し別の人を召喚して手助けをしてもらうことにする。

それが、現代思想界のギルガメッシュこと千葉雅也である。

千葉雅也は、

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萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係③

推しとは何か、萌えとはどう違うか?前回は、東浩紀の萌えと愛について、批評界のイフリートこと宇野常寛(このフレーズが気に入っている)の力を借りて整理してみた。

改めて記載しておこう。

萌え=複数的=確定記述

愛=単数的=固有名

ここから、①で私が語った萌えは愛に先立つものであるという解釈にはまだ隔たりがある。

そこで、この③では少し回り道をして、萌えの近似概念である「推し」について考えてみ

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萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係②

萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係①|小林勝平|note

最強の東浩紀読者の宇野常寛による東浩紀読解を読む
さて、本題に入ろう。

といったところで、①にも書いたが、構成も何も考えてはいないし、基本的に引用以外は、iPhoneのフリック入力と記憶力で書く文章だから、何から始めればいいのかすら考えていない。

ただ、私の頭の中では、全て出来上がっているの

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萌えは愛の上位概念(©︎東浩紀)とはなにか-あるいは確定記述と固有名と愛の関係①

萌えは愛の上位概念という謎詳しい初出は私もわからないが、思想家の東浩紀は10年以上前に「萌えは愛の上位概念」という謎めいたワードを語っていた。

わたしは、自分が発起人でもある東浩紀同人誌『はじめてのあずまん』の本人インタビューの中で語られた時に知ったこのワードを10年以上考え続けている偏執的な読者である。少なくとも、このワードについては、世界の誰よりも深く考えてきたと自負をしている変人である。

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