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「大先輩現る!」

 何気に入った飲食店の主人が、自分にとってとてもタイムリーな人だったお話です。後述する私の好きなyoutuberさんも仰っている「繋がる」と言うワードに当てはまる出来事だったので。今回お伝えします。

*忘れ物

 エキナカの百貨店で洋服を購入し。さてと電車で帰宅しようと時刻表を見ると1時間以上待ち時間がある。「ちょっと一杯引っかけて帰ろう」と思い
駅前のお好み焼き屋に入った。ごく普通のお店で瓶ビールとお好み焼きを頼みほろ酔いになる。お勘定を済ませて田舎のローカル電車に飛び乗ると、酔いもあり終点までスヤスヤ。到着した駅で車掌さんに起こされ下車すると、何か忘れてると気付いた。「買い物した洋服を忘れてる!」

 即座にググリ、お好み焼き屋へ電話を掛けると「荷物、忘れてるよ!」と。仕事でも使いたい洋服だったので「着払いで結構ですので、お手数ですが送って頂けませんか?」とお伝えすると快くOKしてくれ、翌日には手元に届いた。直ぐにお礼の電話を掛け「改めてお邪魔させて頂きます」と本気でお伝えし、少し時間は開いたが一か月後に改めてお店に伺った。

お好み

*趣味は・・・?えっ!

 先ずは改めてお礼を述べて、後は大好きなお好み焼きを堪能しようとカウンターの真ん中に座る。ビールとツマミを頼みマスターとのお話が始まった。私より恐らく20歳以上は先輩かと思しき風貌で、体格は良く目は異常なほど優しい。終始笑顔で手際よく鉄板仕事をこなす。他愛もない会話が進み、何となくベタだが「マスター、趣味は?」と聞いてみた。

 「ワシなぁ、youtube好きでなぁ」と帰ってきた。失礼ながら正直なところ「ご年配にしては洒落た趣味やん」と思った。主に時事問題について論じておられる方の動画を好んで観ていると。すると同じ質問がマスターからもあり、ワタシは「僕も最近youtube観ますよ、ただ時事問題とか難しいのではなく・・・。」詳しく答えても理解してもらえなと思ったが、「僕、タイが好きでタイに特化した動画ばかり観てます。」と返した。すると、お好み焼きをひっくり返すマスターの手が止まった。

 「あんた今タイって言うた?タイってバンコクのタイ?」

 マスターの顔が若干驚いた様に見えたので、「魚のタイじゃなくて、東南アジアのタイです。何回か旅行に行ってハマってます。」するとマスターの口から思わぬ言葉が。

 「ワシ今はお好み焼き屋やけど、30年前駐在でバンコクに住んでた!」

 それを聞き「今日は閉店まで帰らない」と誓った。

*youtube閲覧会

 私は今まで、10年前程度のバンコクのお話は何人かの方から聞いた事があった。しかし今回の「30年選手」は初めてで、これはチャンスとばかりに質問攻めを繰り返し、マスターの仕事の手を止めさせてしまった。マスターもここ最近のバンコク事情を知りたくなったみたいで、ライフラインの充実や屋台のカオマンガイが50バーツぐらいだと細かくお伝えする。しかし口で説明するよりお互いの共通の趣味であるyoutubeを観てもらう方が早くて分かりやすとなり、いざ閲覧会開催。使用するお題目及びyoutuberは、私が初タイからお世話になる「激旨タイ食堂」を連載して下さり、数々のローカルタイ料理を取材し動画に編集して配信し続けてくれる「西尾康晴さん」の動画を教材とし、マスターと二人でじっと眺める。

 すっかり変わったバンコクの街並みを、マスターはどことなく寂しそうな目で観ていた。

*30年前の記憶を蘇らせる

 マスターとはこれを機に親しい間柄になる。ご自宅にも呼んでもらえ、マスターからの昔話と私からは現在のバンコクの話で何時も盛り上がる。ただ
人間は30年前の記憶を鮮明に詳しく思い出せない。昔話をしてくれるマスターは、何時も所々地名や料理の名前を忘れる。すごく悔しそうな顔で思い出せない自分を責める。思い出は沢山あるはずなのに・・・。

 私はマスターのご自宅のパソコンに「西尾チャンネル」を登録し、好きな時に好きな動画を観てもらえる様に設定した。連日LINEが来て「いや~変わってしまって街がわからん」と驚くも、少しずつ地名やご自身がお住まいだった街を思い出し始めた。そんな矢先、マスターにとって最高の教材となる動画を西尾さんは企画する。

 1時間歩き街並みを映し、ローカル料理も紹介する。「早朝ライブ」だ。

 このライブはとにかく重宝する。前日に行き先を報告して下さり、そこへ行ったことがある人をワクワクさせると共に、行ったことがない人にも最寄り駅から丁寧に歩き自身が通る道を細かく伝えてくれる。Googleマップと併用してライブを観ていると、「チャオプラヤ川まで近い」とか「こんな所にマーケットがある」等、情報がどんどんと入ってくる。

 今、マスターはこの早朝ライブにどっぷりハマッている。記憶は急速に蘇り、「住んでいたのはサトーン通りで、バンコク銀行本店までは歩いて行ける」とまで言う。送られてくるLINEの文字にも「マイペンライ」や「スースーナ」等のタイ語が混じる。「早朝ライブのチャット欄にコメントしたい」とパソコンを猛勉強中だ。ハンドルネームも決まっているそうだが教えてくれない。後から私に気付かせるそうだ。

 また1人、一緒にタイに行くメンバーが増えた。

 

 


 

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