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腰椎椎間板ヘルニア術後の運動は何を、いつからがいい?

こんばんは。

今日は術後後療法の話題を一つ。

腰椎椎間板ヘルニア(LDH)はかなり術部も小さくなってきて早期から活動を開始していくことがゴールドスタンダードになっていると思います。

その中で、術後の運動負荷をどのようにしたら良いかという論文です。

少しゆっくりめなプランのようにも思えますが、ぜひ参考にしてみてください!


抄読論文

Uysal E, Cine HS, Cetin E.
The necessity and timing of exercise after lumbar disc herniation surgery.
Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023 Oct;27(20):9521-9529.
PMID: 37916319. PumMed. DOI: 10.26355/eurrev_202310_34125.
ー運動の種類と開始時間による術後VASスコアの群間比較図ー
Free access

目的

LDHは症例数の多い疾患であり、主に労働世代に見られ、生活の質に影響を及ぼします。

腰部痛と神経根症が存在する場合、手術を受ける選択肢になります。
現在、マイクロサージャリーがLDHに対する一般的な手術となっています。
また、内視鏡や最小侵襲術も多くなっています。

術後は創部などに痛みを生じることがあります。
それに対して物理療法が施行されることもあると思いますが、その明確な効果は示されていません。

また、運動療法の効果も明確にはなっていません。

そこで、本研究では、リハビリテーションの開始時期と内容を検討することを目的としています。

方法

LDHの手術を施行した患者204名を対象に、5つのグループにランダム化割り付けし、検討した。

  • 運動なし群:通常の日常生活のみ、追加で運動は行わない

  • 術後2週歩行練習開始群:術後2週より週3回、20分間の中等度またはリラックスしたペースでの歩行プログラムを開始

  • 術後1ヶ月歩行練習開始群:術後1ヶ月より週3回、20分間の中等度またはリラックスしたペースでの歩行プログラムを開始

  • 術後2週腰部運動グループ:術後2週より標準的な術後リハビリテーショントレーニングを開始。脊柱の安定化として体幹筋の強化を図ることを主にしている。

  • 術後1ヶ月腰部運動グループ:術後1ヶ月より上記と同様のトレーニングを開始。

アウトカムは疼痛をVASにて、腰部疾患特異的評価(ODI)を測定。
術後1週、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月に測定。

結果

VASの結果を以下に示します。

術後1ヶ月で、2週歩行群と2週運動群が他のグループと比較して有意に低いVASスコアを示しました。
術後3ヶ月で、2週歩行群が1ヶ月歩行群よりも有意に低いVASスコアを示しました。
術後12ヶ月で、運動なし群が他の全グループと比較して有意に高いVASスコアを示しました。

以下にODIの結果も示します。

術後1ヶ月で、2週歩行群と2週運動群が他のグループと比較して有意に低いODIスコアを示しました。
術後12ヶ月で、運動なしグループが他の全グループと比較して有意に高いODIスコアを示しました。

考察

本結果より、歩行でも運動でも術後2週の早期(でもないですが…)に開始した方が、疼痛及びODIの結果も良好になることが示された。
つまり、早期に運動を開始することが良好な結果につながることを示す。

長期的にみた場合、運動しないよりも運動をした方が良い結果を示すことが明らかとなった。

どのように活用するか

早期の運動に関して有効であるということは、LDHの術後のみならず、多くの疾患や手術後後療法にて示されている。

本研究では、運動しない群というのを作り、12ヶ月間のフォローができているという点に着目すべきである。
こんな研究は倫理的に本邦では難しいと思うし、よくできるなと感心します。

興味深い結果として、運動しない群は12ヶ月後の疼痛やODIの差が明確であったという点です。

その生理学的作用については本論文でも言及されていませんが、機能的、構造的な影響はもちろん、心理的、社会活動的要因も含まれていると推察します。

つまり、運動をするということは活動を拡大するということで、活動をするということは精神的にも豊かにしていくことにもつながります。

それによって、疼痛を感じる感度が低くなったり、機能的にも良好であると感じることができる可能性もあります。

つまり、運動をするということが、それ自体の肉体的効果のみでなく、精神的、いうならば認知的領域の効果としても表している可能性があるかと思います。

ただ、実際本邦ではほぼ術後翌日から活動は行っていると思いますし、その中で何をするかということの方が重要になってくると思います。

この研究の趣旨は参考にしつつも、今後何をするかという質の面も考慮していく必要があるのかと思います。


今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今日は記事がなんとかぎり書けました!

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