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肩慢性痛に対して、痛みを我慢して運動した方がいいのか?

こんばんは。

今日は、ちょっとはっきりしないのを持ってきました。
はっきりしないというのは、トライアル的な研究ということで、いわゆる予備研究的なものです。
なので、バッチリ統計解析しているわけでもないし、傾向分析みたいな感じです。
それでも掲載されている学術誌はIF2.9と低めですが、IFはついてます。

でもこういうトライアルって、アイデアの宝庫だと思います。
実際、この研究の着眼点もすごく面白い!
これをどうとらえるか、最後に書いていきますね〜


抄読論文

Cavaggion C, Juul-Kristensen B, et al.
Exercise into pain in chronic rotator cuff related shoulder pain: a prospective single-group feasibility study.
BMJ Open. 2023 Oct 6;13(10):e070698.
PMID: 37802620; PubMed. DOI: 10.1136/bmjopen-2022-070698.
ー慢性腱板関連肩関節痛における痛みへの運動:前向き単一群実現可能性ー
Free access

【はじめに】

肩の痛みは、筋骨格系の問題の中で、3番目に一般的なものであり、年間の有病率は5%から47%の間にあります。(アバウトすぎ…)

そんな中、回旋筋腱板関連肩痛(Rotator cuff related shoulder pain(RCRSP))(直訳しすぎた😅)は最も一般的に報告されるものであり、インピンジメント、肩峰下の痛み、回旋筋腱板炎、腱炎、非外傷性の腱板断裂などを起因とします。


様々な治療法がそれぞれの病態に取られていますが、可動域制限を有したものであったり、運動機能が低下したものに対して、痛みを起こさないで運動することに効果が見出せないことがあります。

痛みを伴う運動は痛いけど、高負荷をかけることができ、運動強度としては高いものになります。
また、運動は中枢神経系に肯定的な影響を与え、内因性オピオイドの放出と脊髄の抑制機構の活性化により内因性鎮痛を誘発するという理論的背景もあります。

そこで、痛みを伴う運動は肩の慢性疼痛による症状に対して有効かどうかを検討する第一歩としての調査を行いました。

【方法】


前向きデザインで行い、介入は週1回の理学療法士による治療、そこでは運動療法とマニュアルセラピーを実施されました。
そこで、この条件が面白い。
この研究に包含された症例は、このセッションでNRS(痛みの評価10が一番強い)で4〜7に該当したと治療後に申告したものだけでした。
ものすごいくらいやばいバイアスですが、それでもやり抜いているところがスゴイ‼️

さらに、セルフエクササイズを週2回提供し、プログラムの中から4つ選択肢、実施したら報告します。
ここでも面白いのが、選択するプログラムもNRSが4〜7になるものを選ぶという基準でした。
そんなことできるのか・・・❓ でもやってるのがすごい!

【結果】

比較研究でもなく、前向きの調査研究のため、はっきりとした結果はありません。
それを最初に伝えておきます。

まず、エクササイズを12週間完了できたのは、88%でした。
そのうち、セルフエクササイズも高確率で実施できたのは50%でした。
最終的に解析対象としたのは、12名となりました。



その中で、アウトカムで評価したのは、上の項目です。
痛みを我慢して実施するものなので、FPQ-9を評価しているのは面白い。
これが低い人って相当〜〜なのか?

まあそれはいいとして、結果的にはこれらの項目に対して、、、
、、、
要はまちまちです。

軽減する人もいれば、悪化する人もいる。
よくなって悪くなる人もいる。
という感じです。

それを正直に平均化するのではなく、個別データで出しているところは共感持てます。

なので、これを解釈するのは、、、
難しい😅

【考察】

この研究では、プログラムの遵守率が低かったと述べています。
確かに、50%に満たない遵守率なので。
そりゃ、痛いことはしたくないよね。ということですかね。
そして、患者は痛みを増大させることに抵抗があり、また一部の患者には痛みを引き起こす運動を見つけることができなかった。
と述べています。
見つけることができないというのは、やりたくないの裏返しでしょう。

でも、この研究者は前向きで、セルフエクササイズをチェックするために、テレリハビリテーションが有効なのではないかと述べています。

また、肩の痛みと障害度合いを示す指数である、SPADIは数名の症例で大きく改善していることも見られ、そういう症例には効果的であると述べています。
(前向き前向き!)

しかし、最後に一部のみに有効かもしれないと、ちょっと弱気になっています。

どのように活用するか

🤨
難しい。

考えは面白い(患者さんには悪いが)
そうは思っても、研究の形にする人はそうそういないと思う。

ただ、痛みにばかり気を取られていたら、機能改善が難しい症例は確かに一定数いるだろう。

痛みに関しては、特に昨今は敏感になるし、心因性のものや非得意的疼痛など具体化できないものも多い。
それらに対して、脱感作や認知行動療法など、様々な介入が行われている。

この研究は、「そんなの関係ねぇ〜」と振り切っている感がすごくする。

時にはこういう人も必要かもしれない。

結論から言うと、、、
痛みを無理して与えるのはやめましょう😅
ということになる。

これに適応できるのはかなり限られた患者さんになる。
その患者さんを見出すことができれば、適応してもいいかもしれない。
そのためには、相当な信頼関係と、気質的な問題なさの理解、機能的、解剖学的に本当に痛みを出しても問題ないかの理解、といったところがマストになる。

私も以前、Frozen shoulderの可動域制限が強い(屈曲60°くらい)でかなり難渋した症例に対して、3ヶ月くらい経過時から、少し痛みの程度を徐々に増大させ、負荷を上げていった経緯がある。
そこに至るまでは十分に説明し、信頼関係を築き、その上で問題ないと判断した上で、それでも徐々に上げていった。

結果として、6ヶ月程度で、150°の屈曲角度を得て、最終的には痛みも軽減することができ、生活上の問題は無くなったが、少しカケの要素もあった。
もちろん、医師の確認などを繰り返しながら実施することが必要。

だけど、このような症例は一般化はできないと思う。
それにトライした、この研究は素晴らしい!

いい結果ではないかもしれないけど、こういう研究は大好きです。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございます!

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