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ヒエラルキー型管理組織からの脱却とマネタイズの深い関係。

令和3年4月30日

4月も気付けば今日でおしまい。本格的な春がやってきて気分も明るく新年度を迎えたのも束の間、またもや新型コロナの変異種による感染拡大で緊急事態宣言が発出される波乱含みの月もあっという間に過ぎ去った感が否めません。今日は二世帯住宅に住み替えられるお客様のRC住宅の(ほぼ)フルリノベーション工事の引き渡しがあり、契約以降、若手の現場担当者に任せっきりだったのですが、私も一言ご挨拶をと現場に立ち会いました。新卒で入社して5年目の大工、タクミを担当にして直接お客様の窓口をしながら工事を進めてもらいましたが、お客様とのコミュニケーションも上手くいっていた様で、喜びとお褒めの言葉を頂きほっと一安心。担当として受け持つ過去最大の案件にタクミも自信を深めたようで任せて良かったとほっと胸を撫で下ろしました。

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私たち株式会社四方継では、新卒採用から5年を目処に建築士の資格取得と共にリーダー層へと役割等級を進められるように教育、指導しており、現場全体の施工管理者として工程や収まり、現場収支を自分で考え、運営してもらうようにしています。このレベルになると職務上の上司部下の関係はなくなり、プロの技術者、責任者として現場を任せる様にしていて、スタッフの主体性を最重要する組織体制を取っています。今日は、私たちが現在進行形で取り組んでいる管理型組織から完全に脱却するために必要な事ついて「理想の組織論」の続きとして書き進めたいと思います。

理想の組織の実現は理念と同義

前回のこのマガジンでの投稿では理想の組織となる5つの条件の最終項目としてスタッフの成長と新陳代謝を促す仕組み作り、そこから生まれる主体的なメンバーによるピラミッド型のマネジメント方式からの脱却、そして自立循環型組織への変容のアプローチを書きました。私が組織に対して持っている価値観の最も重要な点は持続可能である事で、それを担保する自立循環型組織へ移行が欠かせません。これは、建築業という長く使われ続ける商品の提供を生業としている私たちがお客様に対する暮らしの安心の約束を守れる状態を保つ使命を果たす義務的な要素と共に、組織に所属するメンバーが居たくなる場であること、若者から一緒に働きたいと思ってもらえる事業を行うこと、地域社会で存在を認められることの三方の良しが揃わなければなりません。決して簡単ではありませんが、これが実現すれば事業所も良しとなり、理念である四方良しが実現すると考えています。私たちが掲げる理念とは状態目標を指しており確固たる形があるわけではなく、時代や環境の変化とともに変態を繰り返しながらメンバーの心の中にあるものなのです。その観点から見ると、理念の実現と理想の組織を形成するというのは私たちにとって同義語と言っても過言ではありません。私が目指している理想の組織の5つの条件は以下の通り。

理想の組織5つの条件
①組織の存在価値が認められ、自社独自の市場(マーケット)を持ち外部環境に左右されずに経営が持続できる。
②組織に在籍しているメンバーがやりがいと満足を感じそこで働くことが自己実現の場になっている。
③組織の存在目的がメンバー間で共有され、その実現のために全員一丸となって事業を行っている。
④管理命令型の属人的なリーダーシップで組織が成り立つのではなく、メンバー間での合意形成で組織が運営されていく。
⑤メンバーの成長と新陳代謝が滞りなく起こり世代を超えて事業が継続されていく。

才能主義(タレンティズム)による自立循環

私が20年来取り組み、目指してきた自立循環型組織への移行は、最近注目されているティール組織や、自然経営と非常に考え方や価値観が近いこともあり、最近、改めて自然経営研究会(JINRNコミュニティ)に参加して学ばせてもらっています。1回目はたまたま東京出張と重なっていたこともありリアル参加、つい先日、2回目のオンラインダイアログがあり、YouTubeでアーカイブを視聴しました。このコミュニティーで研究されている内容を乱暴に一言でいうと、ヒエラルキーで分類される管理型の組織から、やりたいことを自由に行いながらも自然に全体最適も叶える自主管理、運営する個人が集合しての組織への移行です。そこに指示命令系統は存在せず、個人の力、才能主義(タレンティズム)によって自立循環していく集合体であり、それがあちこちに綻びを見せ始めた資本主義にとってかわり、次の世界を形成するものだとの理論です。私が目指している理想の組織はティール型ではなく、ヒエラルキー型の先に才能主義(タレンティズム)が乗っかっている様なハイブリッドに近いのかも知れませんが、最終的に目指している概念は非常に近いものがあると感じています。私は大工と設計士のみが在籍する設計事務所兼施工会社の事業所を経営しておりまして、そこに所属する全員は専門家の技術者であり、最も才能主義(タレンティズム)が真価を発揮する業態の一つだと思っています。建築は単に建物を建てるだけの作業ではなく、工事を終えたその後のクライアントの真の目的を達成するための計画とそれをリアルな現実に転換するモノづくりが合わさった複合的価値創造で、この本質を理解した設計、職人の技術者はクライアントから一生頼りにされるタレント性を発揮します。その集合体は結果的に自立循環性の高い組織になると思っていますし、そのように信じて人材育成を行ってきました。

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ヒエラルキーの先にホラクラシーは無い?

冒頭に書いた、新卒5年目の若者にも現場を任せ、施工品質と共に予算管理もしながら顧客との窓口を務めてもらう様にしているのも才能主義(タレンティズム)に立脚しての組織運営から紡ぎ出されていることです。ただ、現在の株式会社四方継が完全にヒエラルキー型組織から脱却しているかというと、そんなこともなく、まだ、組織全体の取りまとめを私が行っている部分があります。現在、4名のリーダーを集めて私が担っている部分の権限委譲を進めており、等級制度で一定以上のレベルに達した者達による組織運営に移行しているところです。私がずっと引っかかってきたのは、組織の運営をメンバーの主体性に完全に移行(ホラクラシー型※1)する前の段階で等級制度といういわゆるヒエラルキー型の象徴と言っても過言でない制度を採用していることで、新入社員が入る度に等級制度の底辺から目標設定を促し、一歩ずつステップを上がって専門家としてのリーダー職へと成長させる仕組みとの逆接で、この旧態依然(建設業界では未だにスタンダードになっていないが、)の仕組みの延長線上に本当に理想的な組織への変容があるのか?との疑問です。私個人としては組織成長のプロセスの一環であると認識してこれまで制度設計をしてきましたし、一般社団法人職人起業塾では建築実務者向けの人事制度改革のファーストステップとして、等級制度、評価制度、それを元にした賃金制度の導入をワークショップを通して広めると共に、強く勧めてきました。既に数多くの企業にも導入いただいており、今年に入ってからは、導入企業に顧問として入り込んでその運用のサポートまで行っていますが、組織に対する経営者の根本的な考え方の違いの様なものを感じることも少なからずあり、アプローチ自体が間違っていないかと迷いが生じているのが正直なところです。

※1ホラクラシーとは、2007年に米ソフトウエア開発会社の創業者ブライアン・ロバートソン氏が提唱した、階層や上司・部下の関係が一切存在しない組織体制

組織変容にベーシックインカムは必要か?

ティール組織や自然経営に関する書籍を読み直したり、何度も繰り返し組織のあるべき姿とそこにたどり着くプロセスを考えて、このマガジンにもその内容をアウトプットしているのですが、正直なところ、現在私が推し進めているプロセスが正解か否かははっきりと言い切ることはできません。ただ、明確に分かっているのは、現在私たちは資本主義経済の枠組みで事業を行っており、事業を持続するための目先のマネタイズに縛られ、まだ逃げらることはできないということと、価値観が大きく変わった新たな世界に求められる新たな組織、新たな才能主義(タレンティズム)への変容は、これまでの延長線上にはなく、違う視点、これまでにはない価値観からしか生まれないということです。このジレンマとも感じられる難解な問題に対する答えは、まず、時代に即した考え方や価値観を、マネジメントを行っているリーダー格のメンバーから順番に少しずつ学び、取り入れてもらうしかなく、その蓄積がある一定のレベルに達した時に変容が起こるのではないかと考えています。その運用が今年から始めたリーダーズ会議のテーマです。
現時点で私が出している結論は、まずマネタイズと言われる価値を利益に転換する部分を伸ばしながら、組織の在り方、働き方についての価値観をメンバーとともに考え直し、それを組織論として共有、実装していくしか無いと考えています。新自由主義に代表されるこれまでの資本主義社会から次の関係社会資本主義、ステークホルダー資本主義と言われる自立循環型社会への移行にはベーシックインカムやセーフティーネットの制度構築がセットで議論されます。それと同じように、事業所も外部環境の変化に左右されない収益構造を作り上げることをまず片付けるべきとの考え方は(若干のジレンマを感じますが、)プロセスとして必要だと思うのです。この持続可能な自社独自のマーケットを作る仕組みと管理型マネジメントからの脱却の関係性についてはまた後日まとめてみたいと思います。

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